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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
118/297

19-ただいま、モーデさん

山の上のノラクローバーの群生地は、雪に埋もれることなく黒ドラちゃん達を迎えてくれました。

黒ドラちゃんは人間の姿になると、プチンプチンとクローバーを摘んでは籠に入れます。


ドンちゃんが幸せな花嫁になれますように。

ドンちゃんが笑顔で食いしん坊さんと過ごせますように。


一本一本丁寧に籠に入れながら、黒ドラちゃんは摘んでいきます。


モッチとホペニが楽しそうにノラクローバーの花に頭をつっこんでいます。


空は晴れて、風が優しく吹いていました。


籠いっぱいにノラクローバーを摘んだ黒ドラちゃんは竜の姿に戻ると、帰りは飛んで山を下りました。


王宮の森に着くと、女王蜂を初め、王宮蜜蜂のみなさんがホペニを心配して勢揃いして待っていました。

ホペニのきょうだいは、全部お姉ちゃんです。

未来の女王候補のお姉ちゃんたちは、ホペニを小突きまわしながら、それでも無事をとても喜んでいました。

黒ドラちゃんが、ホペニにお礼として魔力を込めたノラクローバーの小さな花束を渡します。

ホペニは最初「ブブンブン!」と遠慮して受け取ろうとしませんでした。

でも女王が「ブンッ!」と大きく羽を鳴らすと、ちょっと照れくさそうに受け取ってくれました。

どうやら、つまらない遠慮はお止し、と言われたようです。


それから、女王蜂はモッチのところへ飛んできて、優雅な飛び方で「ブブイ~~~ン、ブブイ~~~ン」と二回羽音を鳴らしました。


今回もホペニを鍛えてくれたお礼と、またぜひお越しください、というごあいさつでした。

モッチが「ぶぶいん!ぶん!」と嬉しそうに羽音で答えています。

また来てくれると聞いて、ホペニが嬉しそうに飛び回りました。



王宮蜜蜂のみなさんとお別れして、王宮への道を進んでいると、森の入り口でモーデさんが騎士さんたちと一緒に待ってくれていました。

黒ドラちゃんとモッチが心配で、ここまで迎えに出てくれていたようです。

「古竜様!おかえりなさいませ!」

モーデさんが嬉しそうに駆け寄ってきます。

黒ドラちゃんも「モーデさん!」と駈け寄りました。

思わず抱き合いそうになりましたが、行きは人間の姿でしたが、今は竜です。

キュッと止まってモーデさんに籠を見せました。

「見て見て!こんなにたくさん摘んだんだよ!きっと花嫁の冠すごいの作れるよね?」

「まあ、すごいですね、古竜様。そういえば、ノラウサギのおばあ様が会いたがっておられるそうです」

「えっ!?そ、そうなの?」

「ええ、花嫁の冠のことをお話したいとのことでした」

「うん!わかった。じゃあこのまま行っちゃおうか?」

黒ドラちゃんは出発前とは違い、明るくきっぱり言いました。


「あ、いえ、おばあ様は寝ていることが多いそうなので、前の日にご連絡を下さいと二世殿から言われています」

「あ、そっか、そうだよね」

「ですから、明日の午後のお茶の時間などいかがでしょう?その時間は比較的起きていることが多いそうなので」

「うん!わかった。じゃあ、明日の午後にしよう!」


黒ドラちゃんはモーデさんと一緒に、王宮へと戻っていきました。

王宮では黒ドラちゃん達が無事にノラクローバーを摘んできたことで、盛大な晩さん会が開かれました。


行く前に食べた、雪蜜りんごが甘く煮られてクリームの上に山盛りされているデザートを見て、黒ドラちゃんは歓声をあげました。

モッチはマグノラさんの花で作ったはちみつ玉を、王様や王妃様にプレゼントしています。

モッチのはちみつ玉の周りに、淡い光が集まって、ゆらゆら揺れて見えました。

黒ドラちゃんがじっと見つめていると、後ろに控えたモーデさんがそっと教えてくれます。

「あれは妖精です。よほどはちみつ玉の甘い匂いと魔力が魅力的なのでしょう」

そういえば、ノーランドもノルドと同じで、竜はいないけど妖精が沢山いる国だと聞きました。

けれど、モーデさんの話によると、これほど大勢の人が居る場所に現れることは珍しいということでした。

「やっぱりモッチのはちみつ玉ってすごいんだね!」

黒ドラちゃんが褒めると、モッチが「ぶぶいん!」と嬉しそうに羽音を鳴らしました。



楽しい時間を過ごして晩さん会が終わりをつげ、黒ドラちゃんはふかふかのベッドの中にいました。

枕元にはマグノラさんのリース、足ともにはノラクローバーがたくさん入った籠が置いてあります。

バルデーシュに帰ったら、みんなにお話ししたいことがたくさん出来ました。

明日の午前中は、王都でお土産も買えるそうです。

バルデーシュに帰るのが楽しみで、ドンちゃんの喜ぶ顔が早く見たくて。

その日の夜の黒ドラちゃんの夢は、バルデーシュを出る前に見たような、みんなが笑顔で出てくる楽しいものでした。



翌朝、目を覚まして美味しい朝食を頂き、さて着替えをという段になって、モーデさんが申し訳なさそうに黒ドラちゃんに言いました。


「あの、古竜様、もしよろしければ王都に買い物に出る時に、一度竜のお姿を皆に見せていただいてもよろしいでしょうか?」

「良いの?ビックリする人がいないかなあ?」

黒ドラちゃんはちょっと心配でしたが、モーデさんが続けて説明します。

なんでも、空前のバルデーシュブームが起きているノーランドでは、黒ドラちゃんの姿を一目見ようと、王都にたくさんの人が集まってきているそうなのです。


「古竜様が竜のお姿で皆の前に現れ、その後人間のお姿になれば、民も大喜びだと王はお考えで」

「そっか。じゃあそうしよう!」

「よろしいでしょうか?ありがとうございます」

「じゃあさ、王都をぐるっと飛んで見せようか?」

「そこまでしていただけるとは、まさか王も考えておられなかったと思います、ありがとうございます!」

モーデさんはキラキラした目で黒ドラちゃんにお礼を言ってから、すぐに部屋を出て行きました。

竜になるとなれば、またそれなりに色々と準備があるようです。

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