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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
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15-吹雪の山で

黒ドラちゃんは、人間の姿でモコモコのマントに包まれています。

足には極厚のブーツ、手にも分厚い手袋、モッチのリースはぬくぬくのマフラーで隠れています。

完全な寒さ対策です。

雪は止んだものの、まだ寒さは残っています。

山の上に登るとなれば、もっと寒さは厳しくなるでしょう。


初め、モーデさんは黒ドラちゃんが竜の姿で飛んでいくものだとばかり考えていました。

天気さえ良ければ、その方がずっと早く群生地を見つけられるでしょう。

でも、空は不安定な感じで、このまま晴れるような、いや崩れて雪になりそうな、そんな天気でした。

「あたし、このまま人間の姿で山に登るよ!」

黒ドラちゃんがそう言ったので、モーデさんは暖かな防寒着をしっかり着せてくれました。

ゲルードが持たせてくれた籠は、大きいので持ち手を斜めにかけて、背負うようにしました。

籠で出来た甲羅の亀さんのようなスタイルです。

見た感じは大変そうですが、黒ドラちゃんにとってはなんてことありません。


そしてモーデさんと魔法騎士さんは、一緒に登るとも言ってくれました。

でも、ノラウサギ博士のおじいちゃんが言ったのです。

「花嫁の冠にするノラクローバーは、友だちにしか探せないのですよ」と。


それを聞いて、モッチはぶんぶん大張りきりでした。

黒ドラちゃんも「そうだよねえ」と大きな声で答えました。

そうしていないと、すぐにうつむいちゃいそうだったからです。

ぶんぶんと元気なモッチと、どことなく元気のない黒ドラちゃんだけでの山登りは、こうして始まりました。


一度小降りになり少しは晴れ間も見えたのに、黒ドラちゃんが山を登り始めてしばらくすると、また雪が降り始めました。

というか、山にだけ雪が降り始めました。

城下は晴れているのです。

ノーランドでも珍しい天気です。


王宮の森に入り、登り続けていればそのまま山の上の方へ出ることが出来ます。

しばらく歩いていると、モッチが「ぶいん?」とリースから顔をのぞかせました。

マフラーを少し持ち上げて、キョロキョロしています。

「どうしたの?」

黒ドラちゃんが話しかけると「ぶいん、ぶいん!」と羽音で答えます。

ホペニが来る、こっちに向かっている、というのです。

その場で立ち止まってちょっと待っていると、ブイ~ンという優雅な羽音が聞こえてきました。

相変わらず美しい銀色の体に暖かそうなふさふさで、いかにも雪の国の蜜蜂って感じです。


「ぶいん!」

モッチがリースから顔を出してホペニを呼ぶと、そこだったのか!みたいな感じで、ホペニが「ブイン!」と羽音を立ててリースにくっつきました。

いそいそと花の中にもぐっていきます。

「ぶいんぶいん?」

「ブイン!」

暖かいでしょ?うん!なんて、仲の良さそうな羽音をさせています。

仲の良い友だち同士の羽音を聞きながら、黒ドラちゃんはドンちゃんのことを思い出していました。


おばあ様のお話では、ノラウサギの花嫁はお家に迎え入れられて、そこで暮らすようでした。

そうなると、ドンちゃんはノーランドの王宮の森で暮らすということになります。

黒ドラちゃんはドンちゃんと離れ離れは嫌なんです。

でも、食いしん坊さんと結婚したら、ドンちゃんはノーランドへお嫁に行く……


じゃあ、もし――

もし花嫁の冠が作れなくて、お嫁に行くのは止めようか、ってなったら?

そうしたらドンちゃんはずっと古の森に居てくれるかも……


小降りだった雪が激しくなってきました。


モッチと一緒にいるホペニが「ブインブイン?」と黒ドラちゃんに聞いてきます。

「う、うん。大丈夫だよ。まだノラクロノーバーがいっぱい生えているところには着かないよね?」

「ブイーン、ブイン」

ホペニがまだまだ上だよ、と教えてくれます。

「そうだよね……」

黒ドラちゃんはギュッギュッと雪を踏みしめながら、山を登り続けました。


雪はどんどん激しくなります。

黒ドラちゃんの進むスピードもどんどん遅くなります。

辺りはすでに暗くなり始めています。

このままだと山で夜になってしまいそうです。


「ぶいん?」

モッチが、ブランの魔石で暖を取れば?と聞いてきました。

「う、うん。そうだったね」

黒ドラちゃんはベルトの魔石のことを考えました。

体がほのかに温かくなってきます。

けれど黒ドラちゃんのスピードはちっともあがりません。


そうこうするうちに、とうとう黒ドラちゃんは一歩も歩けなくなってしまいました。

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