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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
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11-王宮の森へ

広間の中に入ると、たくさんの人たちが黒ドラちゃんを迎えてくれました。

腰に巻いたベルトについた大きな籠は、取り外して黒ドラちゃんのお泊りするお部屋に持って行ってくれました。

首にかけた花のリースも取り外そうとしたので、モッチがいるから、と止めました。

花の中をのぞいて見ると、モッチは疲れて眠っています。

リースはそのままにしておいてもらいます。

広間では、あらためて王様や王妃様とご挨拶をしました。

バルデーシュで覚えたお辞儀をすると、広間に集まった人たちから「可愛いらしい!」とか「さすが古竜様ですね」なんて声が聞こえてきました。

がんばってマナーを覚えておいて良かったあ、と黒ドラちゃんはますますうれしくなりました。


黒ドラちゃんは、どうしてノーランドまで飛んでくることになったのか、王様にお話しました。

黒ドラちゃんのお話は、古の森祭りから始まって、ゲルード達が来るところに、食いしん坊さんとカモミラ王女が来るところ、ドンちゃんがクローバーを吹き出したところやマグノラさんはガラガラ声だけど優しいの、なんてところまで加わって、とにかくお話が進むのに時間がかかりました。

それでも、誰も急かすことをせずに静かに聞いてくれました。

王様もじっくり聞いてくれています。

そして、黒ドラちゃんのお話が終わると「明日、王宮の森へ案内させよう」と言ってくれました。


それから、黒ドラちゃんのことを囲んでささやかな夕食会が開かれました。

黒ドラちゃんはまだお子様だし、疲れているだろうということで、本当にわずかな人たちだけの参加でした。

ノーランドにしかない果物や野菜がたっぷりと使われた料理で、どれも美味しくて、黒ドラちゃんは満腹になるまで食べちゃいました。

お腹がいっぱいになると、とたんに眠くなってきます。

コクンコクンとし始めた黒ドラちゃんに、モーデさんが優しく付き添いながらお部屋に連れて行ってくれました。

本当は召使さんが抱っこしてくれようとしたのですが、見た目よりもずっと重くて、誰も持ち上げられなかったのです。


モーデさんが用意してくれた寝巻に着替え、フカフカのベッドに入ると、黒ドラちゃんはすぐに夢の中に入っていました。

首にかけていたリースはそっと外されて、黒ドラちゃんの枕元に置かれています。

初めてのノーランドの夜は、マグノラの花の香りに包まれて、穏やかで優しく更けていきました。



翌朝、黒ドラちゃんはモッチのブンブン攻撃で目が覚めました。

モーデさんは少し離れたところで、おろおろしながら様子をうかがっています。

「おはよう、モッチ」

黒ドラちゃんがモッチに挨拶すると、ようやくモッチは少し落ち着きました。

「ぶぶいん?ぶいん?」

昨日、モッチが寝ているうちに王宮についてしまったので、びっくりしているようです。

「あのね、ここはノーランドの王宮だよ。昨日の夜に着いたの」

「ぶ~んぶぶん?」

「うん、今日はホペニのところへ行けると思うよ」

「ぶい~んぶいんぶいん!!」

モッチは嬉しそうにくるくると回って見せました。


黒ドラちゃんがベッドから出ると、モーデさんがおそるおそる話しかけてきました。

「あの、古竜様、その大きな蜂は刺したりしませんか?」

「大丈夫だよ!モッチはとてもはちみつ玉作りが上手なミツバチさんなんだよ。カモミラ王女とも仲良しなの!」

「まあ、そうなのですか。では、安心して朝食を運ばせましょう」

そう言って微笑むと、そばにあったワゴンの上の呼び鈴を鳴らします。

すぐにドアが開いて、ワゴンに乗せて美味しそうな果物がたくさん運ばれてきました。


「わあー!すごい!朝からご馳走だね!」

黒ドラちゃんは目を輝かせました。

見たこともないような甘い香りをさせている果物もあります。

「これ、なあに?」

「これは雪蜜リンゴというノーランドだけでしか取れない小型のリンゴです」

「へえー!」

一つ手に取って鼻に近づけます。

小さいけれど、本当に甘い良い香りです。

これ、みんなへのお土産に、帰りにもらえないかな?なんて考えながら、黒ドラちゃんは美味しく朝食をいただきました。



さて、今日は王宮の森へ連れて行ってもらえます。

王宮の森にはホペニ達ノーランドスノーブルー蜜蜂もいるし、食いしん坊さんのおばあ様のノラウサギもいるはずです。

黒ドラちゃんは「よしっ!」と気合を入れてリースを首にかけました。

モッチも「ぶいん!」と元気に羽音を立てています。

見ると、いつの間に作ったのか、はちみつ玉を持っています。

“王宮蜜蜂”なんて、すごい名前の蜜蜂一家に会うので、張り切っているみたいです。


ノーランドの王宮の森は、山の方へ登って行くように大きく広がっていました。

雪の積もる森の中を、黒ドラちゃんはモーデさん、ノーランドの魔法騎士さん、ノラウサギに詳しいおじいちゃん博士と一緒に登って行きました。

吐く息が真っ白になって、森の中へ消えていきます。

昨日も感じましたが、建物から一歩出るとすごく寒いんです。

でも、モーデさんも騎士さん達も、おじいちゃん博士でさえ、あまり気にしていないようです。

今はまだ、この国の本格的な冬では無いそうです。

もっともっと寒くなると聞いて、今のうちに来て良かった、と黒ドラちゃんはホッとしました。


やがて、水色の綺麗な花がたくさん咲いている場所に出ました。

まるで、マグノラさんの花畑の水色版です。

澄んだ優しい花の香りが辺り一面に漂っています。


花畑の真ん中には、一本の古い大きな木が立っています。

その木は大きく枝を広げていました。

そのおかげで、木の下のお花畑には雪が積もらずにいるようです。

モッチは、その木に近づいていきました。

すると、どこからともなくたくさんの水色っぽいミツバチが現れて、モッチを取り囲みます。

「ぶい~ん!ぶん、ぶん、ぶん!」

取り囲まれてもモッチはへっちゃらでした。

はちみつ玉を頭の上に持ち上げて、羽音でご挨拶です。

モッチを取り囲んでいた蜜蜂たちがサーッと左右に分かれると、木の幹からノーランドスノーブルー蜜蜂が一匹出てきました。

他の水色ミツバチよりも一回り大きくて、飛び方も優雅です。

「ぶいん!ぶいん!」

モッチがすごい勢いでその蜜蜂に向かって飛んでいきます。

「あ、モッチ!」

黒ドラちゃんが止める間もなく、モッチはノーランドスノーブルー蜜蜂の前で急停止して、はちみつ玉を差し出しています。

「あれは、ホペニと言って、王宮蜜蜂の末っ子です」

あわてる黒ドラちゃんに、モーデさんが教えてくれました。

「ああ、あの子がホペニなんだあ。びっくりしちゃった」


ホペニは嬉しそうに「ブンブンブン!」と羽音で答えてから、モッチを木の幹の穴の中へ連れて行きました。


「ノーランドスノーブルー蜜蜂のことは、モッチさんに任せておきましょう」

「え、良いの?モッチ大丈夫かなぁ?」

「ここの蜜蜂たちはとても優雅で落ち着いていますので、モッチさんを攻撃したりはしないと思いますよ」

そう言われてみると、確かに周りを飛んでいる水色の蜜蜂も、スイ~ッスイ~ッとした感じの飛び方です。

黒ドラちゃんは安心しました。

そして、モッチにはここでがんばってもらうことにして、モーデさんたちとノラウサギの棲家まで進んでいくことにしました。


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