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【完結】地味でも大冒険!『古の森の黒ドラちゃん』  作者: 古森 遊
7章☆離れていたって友だちなんだ!の巻
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2-おかあさま、はじめまして

モッチはもう一度ゲルードの方へはちみつ玉を差し出しました。

見ると、普段着の兵士さんたちもそれぞれ一個づつ、他のクマン魔蜂さんたちからはちみつ玉を受け取っています。

「なんと!はちみつ玉をいただけるのですか!?それもうちの兵士たちにまで!」

ゲルードは驚いていましたが、みんなが受け取っているのを見て、モッチからうやうやしくはちみつ玉を受けとりました。


「お祭りに来てくれた人には、もれなくはちみつ玉をプレゼントしよう、ってことになったんだよ!」

黒ドラちゃんが嬉しそうに話すのを聞きながら、ゲルードは大事そうにはちみつ玉を懐にしまい込みました。


そこへドンちゃんが葉っぱの上に木の実をたくさん載せて運んできました。

「これも食べてね!甘くておいしい実ばかり集めたんだよ」

ゲルードと普段着の兵士さんたちは、湖のほとりに座り込んで、甘い木の実を味わいました。


まもなく、湖の向こう側が騒がしくなってきました。

ドンちゃんがお耳をピンッとさせます。

「食いしん坊さんがきたみたい!」

黒ドラちゃんの背中に登りながら、弾んだ声で言います。

ドンちゃんを乗せて黒ドラちゃんが湖の向こうまで飛んで行くと、ちょうど木々の間を抜けて食いしん坊さんが姿を現しました。

「ふ~、さすが古の森ですな。ここまで来るのが大変でしたぞ、古竜殿」

食いしん坊さんが片眼鏡をキラッとさせながらつぶやくと、すぐに黒ドラちゃんの背中からドンちゃんが飛びおりました。

「食いしん坊さん、いらっしゃい!それにカモミラ王女もドーテさんもようこそ!」

そうなんです、食いしん坊さんにはカモミラ王女とドーテさんの道案内をお願いしておいたんです。


カモミラ王女は初めてみる古の森の湖に声をあげました。

「まあ、なんて美しいの!まるで大きなエメラルドのようね。ねえ、ドーテ素敵ねえ」

「ええ、本当に。こんなに美しい場所があるなんて……」

ドーテさんも言葉にならないほど感動しています。


もともとノーランドは雪の多い国なので、こんな風に緑が濃く花々が咲き乱れている景色は夢の中にいるような気持ちになるのでしょう。

カモミラ王女たちはゆっくりと湖の周りを歩きながら、大きな大きな大きな木のそばへと歩いてきました。

ゲルードや兵士さん達が立ちあがって礼を取ろうとしましたが、カモミラ王女は軽く手で制して座らせました。

王女がニッコリほほ笑むと、何人かの兵士さんがぽーっとなっています。

その横で、王女の笑顔に耐性のあるゲルードが「では遠慮なく」とあっさり湖に向き直っています。


湖にはさわやかな風が吹きわたり、時々お魚さんがはねています。

黒ドラちゃんはブランと一緒に湖のほとりにドデンと座りました。

隣でドンちゃんと食いしん坊さんもトテンと仲良く座っています。


突然、食いしん坊さんが立ち上がりました。

「どうしたの?」

ドンちゃんがクローバーをモグモグしながらたずねます。

「あの、あそこに居られるのはドンちゃんのお母様ではないですかな?」

食いしん坊さんの声が緊張しています。

見れば、少し離れたところでドンちゃんのお母さんが、せっせとおかわりの木の実をゲルードたちに配っていました。

「うん!そうだよ」

ドンちゃんがうなずくと、食いしん坊さんは途端に身づくろいを始めました。

「ちょっと御挨拶に行ってくるから、待っていてくれるかい、マイプチレディ」

そう言うと、食いしん坊さんはぎくしゃくとした動きでドンちゃんのお母さんに近づいて行きました。


いったいどうしたんだろう?と黒ドラちゃん達もドンちゃんと一緒に、食いしん坊さんを目で追います。


食いしん坊さんはドンちゃんのお母さんの前に立つと、丁寧にお辞儀をしました。

「お母様、初めまして。わたくし、ドンちゃんと仲良くさせていただいております、グィン・シーヴォ三世と申します」

ドンちゃんのお母さんは突然目の前に現れた食いしん坊さんに驚きましたが、すぐに自分もお辞儀とご挨拶を返しました。

「グィン・シーヴォ様、ご丁寧にありがとうございます。ノラプチウサギのドンの母です。娘がいつもお世話になっております」


なんだか、周りのくだけた雰囲気から思いっきり浮いている感じです。

でも、食いしん坊さんのご挨拶には、まだ続きがあるようでした。


食いしん坊さんは、一度大きく息を吸ってから、ドンちゃんのお母さんの前で低く頭を下げるとはっきりとした声で言いました。

「お母様、ドンちゃんとの結婚をどうかお許しください!」

黒ドラちゃんはビックリしてブランの尻尾をギューっと握りしめました。

ブランは痛みで「うっ」となりましたが、黒ドラちゃんのすることなので耐えています。

ドンちゃんは食べかけのクローバーを盛大に吹き出しました。

あわててお口の周りを前足で拭いています。

ゲルードも普段着の兵士さん達も動きが止まっています。

カモミラ王女とドーテさんも「まあ!」「きゃあっ!」という小さな声をあげて手を取り合って固まっています。

モッチもゲルードの頭の上で一緒に止まったままでした。

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