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『ピース』~一つ一つの力~  作者: 葵
【犯人は犯人じゃない】
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アレルギー

《新田とサブローは酒屋に着いた》


〔おっちゃん! 今犯人探してやるからな!〕

〔はぁ! おっちゃん!!〕

サブローの目の前に 白く燃え尽きた酒屋の主人の姿があった。

『おぅ・・・ サブロー・・・ 弁償しろ・・・』

酒屋の主人は弱々しい声でバースデーワインの弁償を要求した。

「こんばんはおっちゃん」

新田は酒屋の中の様子を伺いながらあいさつをした。

『あ・・・ 新田・・・』

『お前んとこのサブローが俺のワインを割ったんだ・・・』

悲しそう説明する酒屋の主人。

〔だからおっちゃん! 俺じゃないって!〕

〔俺が酒飲めないのおっちゃんも知ってるだろ?〕

サブローはかなりのゲコであった。

ゲコというか アルコールアレルギーなのである。

顔や全身が真っ赤になり湿疹からの痒み、手のむくみという症状がサブローを襲う。


「そうだな」

「サブローがワインボトルを割る動機がない」

『いや ある・・・』

『サブローお前 盗もうとしたんじゃないのか?』

酒屋の主人はまだサブローを疑っていた。

サブローが酒を飲めないことは知っていたが、自分の大切なワインを失って正常な判断も失っていた。


〔おっちゃん! それ本気で言っているのか!?〕

聞き捨てならない言葉にサブローは声を荒らげた。

「落ち着けサブロー!」

「深呼吸 深呼吸」

新田はサブローを落ち着かせるために深呼吸を促した。

〔お おう・・・〕

〔すぅ~  ふぅ~〕

サブローは新田に言われたように大きく深呼吸をした。

〔ヘックシュン!〕

大きく深呼吸したサブローは、大きなくしゃみをした。

「大丈夫か? サブロー」

〔ズル 大丈夫だ〕

〔ちょっとアレルギー反応がでただけだ〕

サブローは鼻を啜りながら答えた。

『酒の臭いだろう・・・』

『アルコールアレルギーなんだろ・・・』

酒屋の主人はまた落ち込みながらサブローのくしゃみの原因を指摘した。


〔そうかもな ズル〕

「いや それちょっとおかしくないか?」

「アルコールアレルギーって 飲んで起こる症状じゃないのか?」

〔・・・そうだ〕

サブローのアルコールアレルギーは、アルコールを飲んだときに起こる症状だった。

〔ん? じゃあこのアレルギー反応なんだ?〕

「自分でわからないのかよ 何のアレルギーなのか」

〔う~ん・・・・わからない!〕

「・・・ダメじゃん!」

〔ズル ごめん〕

サブローの体にアレルギー反応が起きた。

しかし残念ながらアレルギー反応がワインボトルを割った犯人のヒントは得られなかった。


『ほれみろ! 真犯人なんていないんだ』

『サブロー! いいから早く弁償しろ!』

酒屋の主人は再度 ワインの弁償を要求した。

〔だ! だから俺じゃないって〕

〔真犯人はいる! だって俺すれ違ったもん〕

サブローは根拠のない否定を繰り返していた。

「う~ん あれ?」

新田はサブローの根拠のない否定を 根拠があるものに変えようとしていた。

「おっちゃん このワインボトルどこに置いてあったんだ?」

新田は割れてしまったバースデーワインボトルが置かれていた場所を聞いた。

『ん? 置いていた場所?』

『置いたのはそこだけど』

酒屋の主人はバースデーワインボトルが置かれていた場所を指さした。

指さした場所は、お酒が置かれている棚の一番上。 

棚の中ではなく、棚の上に置いていたらしい。

「え? なんでそこに?」


新田の質問に簡単に答える酒屋の主人。

『売り物じゃないからな』

『私の目の届く場所に置きたんだ』

「じゃあ 自分の家に置けばいいのに・・・」

酒屋は二階が主人の自宅である。 

売り物ではないのなら店に置かなければいいものを。


『自慢したいだろ』

『バースデーワインだぞ!』

「それって自慢になるの?」

『なるだろ 私と同じ誕生日だぞ』

「ふ~ん でもそんなに大事ならワインセラーに保管しないの?」

「棚の一番上で日光にさらされていたら良くないでしょ?」

ワインを保存する際、適正温度での保存が好ましい。

ましてやここは酒屋 酒屋の主人が適正温度を知らない訳がない。

それに酒屋にはワインセラーがあった。(小さいが)  

『いいの いいの 売り物じゃないし、どうせ飲まないんだから』

「飲まないのか!?」

『当たり前だろ もったいない!』

「飲まない方がもったいなくないか?」

『飲んだら無くなるだろ』

「いや ワイン飲んでから空瓶飾ればいいんじゃね?」

『中身が入ってなかったら意味ないだろ』

意味のわからない理屈を言い張る酒屋の主人。


「・・・そうか」

新田が酒屋の主人の理屈をのみ込んだ。

「でもちょっとおかしくないか?」

「バースデーワインは棚の一番上に置いてたんだろ?」

「この高さじゃジャンプしないと届かないんじゃないか?」

バースデーワインは棚の一番上に置かれていた。

サブローの身長は平均よりもちょっと高い。

しかし、そんな身長の高いサブローでも手を伸ばしても届かない高さにバースデーワインが置かれていた。

『ん? だからジャンプして取ろうとしたんじゃないか』

『それで手が滑って、ワインを割ったんだろ』

まだサブローを疑っている酒屋の主人。

「もしサブローが犯人なら、ワインを割った後なぜ逃げなかったと思う?」

『そんなもん知るか』

『逃げるようとした所に俺が来たから逃げられなかったんじゃないか』

「どうなんだ? サブロー」

〔犯人じゃないから逃げなかったに決まってんじゃん!〕

「それにもうひとつ気になっていることがあるんだよね」

「もし俺があの高さにある物を取るとしたら、すぐ側に脚立使うと思うんだよな・・・」

棚の近くにはいつも酒屋の主人が使っている脚立があった。



『・・・・・』

盲点を突かれて黙り込んでしまった酒屋の主人。

〔か・・・ 痒い~~~〕

静寂の中にサブローの悲痛の叫びが響いた。

「な! なんだよサブロー!」

「いきなり叫ぶなよ」

サブローの悲痛な叫びは残念ながら新田には届かず、うるさいと注意されてしまった。

〔ひでぇ! もっと心配しろよ・・・・〕

〔こっちは目が痒くてヤバいんだって!!〕

サブローは目が痒くなってきた。

なにかのアレルギー反応だった。

「どうせアレルギー反応だろ」

「・・・ん? アレルギー反応?」 

「なんのアレルギー反応かわかるか?」

サブローのアレルギーはもう新田は日常になっており、アレルギー症状が出たことではなく、アレルギー反応でわかるアレルギーの種類に疑問をもった。

〔え? なんのアレルギーかって?〕

〔まず目が痒いし、なんか喉も痛いな・・・・〕

〔あ 多分この症状は動物系のアレルギーだ〕


「動物系?」

「おっちゃん なにか動物飼っているか?」

サブローのアレルギー反応は、動物からのアレルギー症状だった。

『いや、飼ってない』

『動物系のアレルギーって犬かと猫か?』

『俺はペットなど飼ったことないぞ』

酒屋の主人はペットを飼ったことがなかった。

どっちかというと動物は苦手な方だった。

『動物アレルギーは動物がいないとアレルギーは発症しないだろ』

『本当にサブローは犯人じゃないのか? 新田』

アレルギーはアレルギーを引き起こす原因がなければ発症しない。

酒屋の主人は動物を飼ったことがない。

しかし、発症してしまったサブローのアレルギー。

アレルギー反応から動物系のアレルギーであることは間違いない。

多くのアレルギー所持者であるサブローが間違う訳がない。


新田は考えた。

なぜ動物を飼ったことのない酒屋の主人の酒屋で、動物系のアレルギー症状が出たのか。


謎だらけのこの現象に、新田の推理が始まった。




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