久しぶりの報酬
ピース 平和という意味。
しかし ピースのスペルが違うと 欠片や部品という意味にもなる。
この話の中でのピースは後者の方だ。
欠片 部品 パズルのピースのようなもの。
そのピースがなければ完成しない作品。
少し 少し 徐々に形になっていく。
ひとつ ひとつ ピースに意味があり、ひとつ ひとつに色を持つ。
どれも欠かせない大切なもの。
peace平和 piece欠片
piece よく物で使われる言葉。
【あれ? ひとピース足りないぞ】
【どこいった?】
けれど 人にも当てはまるのではないか。
【あれ? あいついないぞ】
【どこいった】
【よし! 探すか!】
数分後 相手は見つかり、peaceとなる。
欠片 仲間がいなくて、探しだしてみんなが平和になる。
pieceからpeaceへと変わっていく。
今から登場人物達は pieceであり、みんながいるから みんなが集まるからpeaceになっている。
ピース ピース ピース ピース
さて どれがpeaceで、どれがpieceかわかりましたか?
そんなことを考えながら 感じながら 物語はスタートする。
第一章 【犯人は犯人じゃない】
《小さな田舎町》
大きな建物なんて一軒もない田舎町。
寂れかけの小さな田舎町。
若者離れが激しいこの時代 次々と若者は都会へと旅立って行った。
しかし この田舎を愛し、大切にしている男がいた。
『ニャー』
「やったー」
猫を捕まえた男が叫ぶ。
「ミッションクリア!」
捕まえた猫を高々上げて喜ぶ若者がいた。
・・・・訂正 若者ではない 十分の大人。
「よし マスターにマサルを渡しに行くか!」
男は猫連れて依頼者の待つ喫茶店に急いだ。
依頼人は喫茶店のマスター。
マスターの飼い猫がいつも帰って来ない。
マスターがペットショップで一目惚れして飼うこと決めた飼い猫のマサル。
飼い始めてから外を散歩するマサルは、かなり高確率で帰って来ることがない。
マサルを探すのが男の収入源の一つであった。
男はうきうきでマスターが経営している喫茶店に急いだ。
《喫茶店 home》
カランコロン♪
喫茶店ならではの音が鳴り、男が掛け込んで来た。
「マスター見つかった! マサル!」
マサルを高々と上にあげた男は、とても笑顔だ。
『おー 新ちゃん見つかったか ありがとう ありがと~う』
とても軽視した感謝をするマスター。
もうマサルが逃げ過ぎて感謝が薄れているマスターである。
「だからもっと感謝しろよマスター」
「毎日と言っていいほどマサル探している俺って結構すごいぞ」
「どこにいるかもわからないマサル探しているんだぞ」
日に日にマスターの感謝度合いが弱まっていくのには男も不満でいっぱいだった。
『感謝してるよ 新ちゃん』
『はい これ報酬ね』
『今回はちょっと余裕があるから 現金で報酬払わせてもらうよ』
「お! マジかマスター! 助かるわ~」
報酬はもちろん貰うが、ここは寂れた田舎町 なかなか報酬を現金払いで払ってくれる依頼人は少なく、依頼人が経営している商品など 現物支給が報酬となることが多い。
「最近金欠でヤバかったんだよ」
「ありがとう マスター」
「でも いい加減 新ちゃんって呼ぶのやめてくんないかな」
「依頼人に新が付く名前だと勘違いされるから」
「俺は新田であって 新一でも新吾でもないんだからさぁ」
男の名前は新田 雄二
親が日本陸上見ているとき産まれたから雄二 ・・・・嘘。
夕方から陣痛がきて 深夜2時に産まれたから雄二 これ本当。
「マスターのせいだぞ」
「なんで俺を新ちゃんって呼ぶんだよ?」
新田はいつも新ちゃんと呼ぶことをやめろと言うが、いつも同じ返答が返ってくる。
『だって呼びやすいじゃん』
『新ちゃんって響きもいいし』
いつもと同じ簡単な回答。
確認だがマスターはオカまではない。
「・・・・」
「あー もういいや」
「マスター 報酬ありがとう」
「またなんかあった連絡して」
新田は報酬の現金が入った封筒を受け取り、喫茶店をあとにした。
カランコロン♪
新田は喫茶店を出るとスキップ混じりに鼻歌らしき歌を歌いながら自分の事務所に向かった。
自分が設立した探偵事務所に。