左九十度
家に帰るとあたしのベッドで彼女が眠っていた。
首と手首の周辺部分にリボンとフリルの付いた長袖ブラウス。
その上に羽織ったレースで縁取られている薄いケープ
ギンガムチェックの三段ティアードスカート。
縦縞の入ったレースのソックス。
そのすべてがピンク色だ。
ツインテールに強めのカールをかけ、前髪を姫カットにした金髪のウィッグを付けていた。
紳士服の量販店で買わされたリクルートスーツ姿のあたしとは大違いだ。
そんな眠りにくそうな格好で彼女はベッドのうえにいた。
顔は、なんのケアもされておらずスッピンだった。
左向きに丸まるような体勢をとっている。
彼女を突き飛ばし、転がすようにして仰向けにする。
ソックスを脱がせて、ウィッグを取り外した。
ブラウスとスカートはそのままにする。
以前、あたしが怒鳴ってしまったことがあり、服に関してはお互いに不可侵の領域となった。
脱がせたものをかたずけて、ふたたび彼女の元へ戻った。
彼女の耳たぶをつかみ左九十度ほど回転させる。
すると、彼女のクチビルのスキマから小さな黒色があらわれた。
引っ張るとぬるりと舌のような軟体動物があらわれる。
さらに引きつづけるとアゴに届きそうなほどに伸びた。
軟体動物の表面には、筆記体で『Success!』と大きく書かれていた。
手を離すと軟体動物は彼女のクチのなかへ戻り、あたしは左隣ですこし眠った。




