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黒旋律の歌姫  作者: 梔子
プロローグ
8/64

名前

「まだでございますかー?」

「キュー?」


竜を頭に乗せた私が背伸びして眺めているのはマスターの机です。


マスターの書斎にある、きったない(掃除は断固反対された)机は大きくて、私は背が小さいので顎がギリギリ机の上にのる程の大きさだ。


何をしているかと聞かれたら、マスターが私達の名前を考えてくれるのを待ってんだぜ!楽しみで羽がパタパタしちゃウグ!ゲホッ!ゴホッ!


やめとこ…埃が半端ねぇ。


あれからマスターは沢山の本を開いて熟考なさっている。頭に鉢巻きを巻いて気合い十分ですねマスター!知ってますか?あれから既に一週間たっているのですよ?


目の下に隈を作る位、熟考してくれるのは良いですが、そろそろ決めてもらいたい。


「早くして下さいましー」

「ええい!今考えておるじゃろうが!静かにせぬと下ネタな名前をつけるぞ!」


脅すような台詞に首を傾げる。


「例えば?」

「金玉三郎とか?」

「ププー!」


そのベタな名前に、思わず噴き出してしまい、ごまかすように超絶可愛い(個人的に不満)笑顔をマスターに見せてやったのに、部屋から蹴飛ばされた。だって、ありきたり過ぎる位ありきたりだったんだもん!笑われて怒るのは逆切れだと思う。


追い出された書斎の扉を睨みながら、蹴飛ばされた勢いのまま廊下をコロコロ転がる。


小さな羽を絶妙なタイミングで動かして勢いを増すぜキャッホーウ!


廊下は私が毎日丹念に掃除しているから滑る滑る!しかも、廊下を埋め尽くしていた書籍は私が作った、埋め込み式本棚の中に全て収納してるから、私を阻む者は誰もいないぜフハハハハハハハハ!うふぅおえ!?


「キュー」(馬鹿)


あ…居た…。阻む者と言うか弾く物居た。壁…正確には曲がり角の壁に頭がガッ!てなった。


「痛いぜコンチクショウ」


凄まじいな痛み…、はっ!?もしや多少は骨格が歪んで私のプリチーフェイスが残念になっているのでは!?


慌てて鏡を出して顔を確認する。


そこに居るのは、ユルフワなブロンドの髪でアイスブルーの瞳を潤ませた目茶苦茶可愛い少年…。


どうしよう…。


「やっぱり可愛いじゃねーか!でございます!」


本当は叩きつけたいが、割れると掃除するのは私なので、鏡を床に荒々しく置いてガックリ肩を落とす。


なんだよー。多少は骨格が歪んで、某貴族魔術師みたいに陰険な感じに近付くかなーとか思ったのに、全然駄目だし。


逆に涙目になって、庇護欲をくすぐる美少年ぷりが増してるし!


キラキラしてんじゃねーよ!羽生えてんなんて何処の厨二病だよ私!腹立つ!


床をダンダン叩いていたら、竜に馬鹿にしたような瞳で見られた。腹立つから、大根片手に追い掛けたら盛大に悲鳴を上げて逃げられた。


逃げ惑うがよい!駄竜が逃げ切れると思っているのだったらな!


【当然捕まえました】


「ほーらほらでございますよー」

「キュアーキュアー」(イヤーイヤー)


台所の天井から吊した竜を皮を剥いた大根で全身撫で撫でする。


皆さん知ってますか?大根汁まみれになると、体が目茶苦茶冷えるのです。一度やってみて下さい。剥いた大根の皮を手首に巻いて暫くすると、体が冷えて下痢になります。


そんな大根汁を新鮮なお肉に塗ると、身がプリッと締まり、なおかつ大根の風味が染み込んで…ジュルリ。


実は、大根が大好きなの。




ヌリヌリ

「キュアー」(イヤー)

「うへへへへ」

ヌリヌリ

「キュアー」(イヤー)

「うへへへへ」


そんなこんなで、麗しい美少年が竜に大根汁を丹念にぬりたくる異様な光景を繰り広げていたら。


「なーにやっとるが馬鹿者!」


ガス!


「ぐはぁ!?」


頭に衝撃を受けて床に沈む。マ…マスター、魂が篭った良い踵落としだぜ。


私が頭部への二度目の刺激に堪えていると、マスターは鼻高々な様子で二枚の紙を懐からとりだした。


「やっと決まったぞ!」


偉そうに言い放つマスターに何かイラッとした。だって、私の名付けを忘れてたのはマスターだもん。

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