戦神と悪魔
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とある洞窟中にて……。
「うぉおおお!!」
「ブモォォォォ」
一人の男と巨大な牛が正面から戦っていた。男は何時も纏っている制服とコートを脱いで上半身裸となり、鍛えられた筋肉を剥き出しにしている。背中に羽ばたくは、猛禽類のような漆黒の翼。額に輝くは、羊のような黒い角。
彼が跳ね、走り、避ける度に黒髪が尻尾のようにたなびく。
男が手甲を着けたままの拳を振るう相手は牛。牛といえども、人間のように二足歩行をしている知性ある牛だ。手も蹄ではなく指があるが、体つきは完璧な人間てはなく獣っぽさがある。
牛は魔物であり、ミノタウルスという怪力を誇る。また、高い魔力を体の中に宿す為、生半可な魔術は効かない。また、鍛え上げられた筋肉により、下手な剣で切り付ければ、ナマクラになってしまう厄介な存在である。
普段は天然窟に住んでいるのだが、時折里に降りることがある。牛ではあるが肉食で、好戦的で肉を好み若い人間を好物にすることも多く速やかな討伐が望まれる。
今回のフォルテス達の任務は、ミノタウルスの討伐だ。 なんと、人里近くの洞窟にミノタウルスが住み着き繁殖していた事が判明したのだ。
どうやら何かの拍子で地下道を隔てる壁が崩れ、そこから湧いたようだった。しかも群れとして存在し、近くの村に出没している。
このまま放置すれば、下手をすれば近隣の村が全滅するだろう。だがしかし、現在の各地の軍や騎士団は兵器警戒の為に、あまり動き回れない。だといって冒険者達では荷が重すぎる。そこで、フォルテス達が呼ばれたのだ。
そして現在、何故か部隊とミノタウルス達は相撲大会を繰り広げていた。
「いよっしゃああ!隊長四人抜きだぜぇぇ!」
「今の隊長は洒落にならねーぜ牛共が!」
「ブモォォォォ」
「モオオオオ」
ここはとある洞窟の中。野球が出来そうな広い空間の中には、誰かが魔術で出した光球が浮かび、中を煌々と照らしていた。
その中央にはチョークで丸を描いただけの土俵があり、そこでフォルテスとミノタウルスが組み合っていたのだが、フォルテスの拳が顎にめり込み、ミノタウルスは地に伏せていた。
茣蓙を敷いただけの観客席で、ヤンヤヤンヤと歓声をあげる隊員達。そのそばには、ミノタウルス達も興奮気味に鳴き怒声を上げている。人間も魔物も交ざり、中には日頃は農作業をしているであろう農民達も、歓声を上げている。
中には賭け事をしていたり、屋台モドキをだしていたりしていた。
「勝って下さい隊長ー」
「ブモォォォォ」
フォルテスの前に新たなミノタウルスが現れた。フォルテスよりも大きく、三メートル程もある体は、岩を削ったような筋肉が盛り上がっている。緑色の体毛に覆われた体には、服は身につけず粗末な褌しか身につけていない。
そして、何故かモヒカン頭であった。
モヒカンミノタウルスとフォルテスが睨み合う。
「第五試合開始!」
審判を務めるサナエルが宣言した瞬間、フォルテスがミノタウルスに肉薄する。
「ふん!」
「ブモ!?」
小手先のごまかし無しの、正々堂々としたぶつかり合い。一人と一匹が組み合った瞬間、ドスンと岩がぶつかり合うような音がした。
ミノタウルスは驚愕に目を見開いた。彼は群れの中でも、よりすぐりの怪力であったのだ。それがまさか、小さな人間に受け止められるとは!
ニヤリと笑ったフォルテスが手に力を込めると、モヒカンミノタウルスの体が浮く。
「いいぞー!やれやれ!」
「ブモォォォォ!?」
盛り上がる歓声に、気を良くしたフォルテスが体を捻りミノタウルスの体勢を崩した瞬間。
詳細な場所は言わないが、ミノタウルスの褌が食い込んだ。
「ブモヤン!」
「うわ!?キモッ」
なまめかしい声をあげたモヒカンミノタウルスに鳥肌を立てたフォルテスが、土俵からミノタウルスの巨体を放り出した。
ガコーンと岩に頭から突撃し、岩を粉砕して停止する。
「はい、負け」
「ぶ…ぶもぶも」
冷静に負け判定を告げるサナエル。何故かモヒカンミノタウルスは、女の子座りをして、さめざめと泣いていた。
「ぶもーい」
「ぶもーい」
「なんだよ!牛共が!」
牛達がヒソヒソと囁きながら、非難の鳴き声を上げて冷たい目線を向けていた。フォルテスがヤンキーのように睨むと、ミノタウルス達はサササと逃げた。
ドシーン
ドシーン
一息ついたフォルテスが汗を拭っていると、奥から何かが歩いてくる音がした。待ち兼ねたように笑うフォルテスは、タオルを投げ捨てる。
【後ろでは、隊員達が「隊長の汗が染み込んだタオル!?」「高値で売れるわ!」と大騒ぎして、サナエルにエルボーをくらっていた】
「やっと大将のおでましだな」
洞窟の奥から出てきたのは、どのミノタウルスよりも大きく立派な筋肉を纏うミノタウルス。肩には隊員の少年と少女が座っていた。
「隊長ー、リーダーさんが受けてたつってー」
「おう!」
リーダーと呼ばれたミノタウルスは少年達をそっと降ろすと、土俵の中に入り悠然と佇んだ。彼を見たフォルテスは、拳を構えながら地を駆けて襲い掛かった。
彼等が何をしているか説明しよう。
部隊がミノタウルスを発見した時、スキル【動物言語:草食】を持つ隊員がとある報告をした。
彼等はミノタウルスはミノタウルスでも、ただのミノタウルスではなく、リーフミノタウルスという新種らしかった。異常な魔術抵抗力や怪力は通常のミノタウルスと同じだが、一点だけ違う。彼等は【誇り高きベジタリアン】なのである。
だから、人間を襲わない。誇り高いから、むやみやたらに喧嘩等しない。己の道を求めて鍛練を繰り返す。洞窟内で体を鍛える、菜食主義者の筋肉マニア。それがリーフミノタウルスだった。
そんな彼等が現れたのは、とある村が栽培する農作物が原因だった。とあるツテでソレを食べたミノタウルスは、「美味ぇぇぇ」となり、元々の住家からわざわざ穴を掘って来たらしい。
そして夜な夜な畑を漁っていたらしい。ミノタウルスの誇りは何処行った。
とんだ迷惑な奴らだ。
当初は元の場所に帰れと説得したのだが、そこは獣である。「嫌だ。もっと食べる」の一点張りだ。
そこで提案したのが魔物との共生だ。意外だが、魔物と共生する者は多い。軍事関係者なら騎馬として、特に有名なのはドラグーン達だ。
別名、竜騎士と呼ばれる彼等は五千にも満たない少人数だが、どの国にも属さない独自の組織を作っている。
彼等が操るのは、正確には竜ではなくワイバーン。ワイバーンと一心同体になる彼等が竜を倒した事もあるぐらい、強力な戦闘力を持つ。
他にも、羊の魔物である雷羊の家畜化は昔から続いている。同じようにミノタウルスと共生したらどうだと聞いた。
ミノタウルスは狩りをした獲物を村人に渡し方、村人は報酬に野菜を渡す。これなら、村人はミノタウルスが倒した希少価値の高い獣が手に入るし、有事には用心棒にもなる。村人達は了承したのだが、ミノタウルスがごねた。私達に言うことを聞かせたかったら、私達を倒すが良い!!と訳の分からないテンションで言ってきた。
お前達の為にやってんだぞゴラァと思ったが、早く帰りたかったフォルテスは頷き、相撲大会を開催したのだった。
数分後、ミノタウルスリーダーを寝技で倒したフォルテスは、イソイソと身支度をしていた。
「あれ?隊長は宴会に参加しないの?」
洞窟内に【祝ミノタウルス同盟】の垂れ幕を設置していた隊員がフォルテスに尋ねる。「いつもなら先陣をきって参加をするのに」と呟く隊員に、他の隊員が「馬鹿だなー」と応える。
「隊長が一日でも、お兄さんを待たせるわけないだろ?だって隊長だぜ?」
「隊長だしね」
「そう言えばいつ会わせてくれるんだろーね?」
「いろいろと用意しているんだが」
ヒソヒソと話す隊員達を無視して、洞窟の外に移動したフォルテス。彼は森の中にある川で体を清める為に、歩を進める。早く翼を羽ばたかせて彼のもとに舞い降りたいが、汗くさい姿で会う訳はいかない。
フォルテスが訪れたのは、片側が断崖絶壁で白い砂利が敷き詰められた河原だ。木を立てて布を張っただけのような小屋が建っていたり、番号がふられた木桶が野晒しの棚に置かれていて誰かが使用していると分かる。此処は村人達が利用している共同水場だ。
ここでは、村の女達が洗濯をしたり飲み水をくんだりする。魔法陣を利用した魔道具の恩恵にあやかるようになって十年たち、個人宅に水道が完備されていることも珍しくない。だが、僻地ではまだまだ此処のように共同水場を利用する事も多い。
村人も水浴びに使うソコには、今は誰もいない。フォルテスは全裸になり川の中に入っていく。体を洗う場所と炊事洗濯をする場所は別けられているから、汗臭い体の彼が入っても大丈夫である。
フォルテスは水を頭から被り体を洗う。一度水中に潜って汗で湿った髪を水で注ぎ、流水で翼の埃を洗い流す。
「ふぅ」
勢いよく上半身を起こし、長髪をかきあげる。長い黒髪は水滴を飛ばしながら弧を描き、フォルテスの逞しい背中に当たる。顔を両手で擦りながら洗っていたフォルテス。水を滴らせながら、彼はふと自分の両手を握って見た。
その瞬間、空気が変わる。
「ああ、兄さん」
翼を閉じて己を包みながら、フォルテスは体を抱き締める。逞しい二の腕を掴み浅黒い肌に爪を立てるフォルテスは、カタカタと小刻みに体を震わせていた。それはまるで、彼の中の激情を必死に押さえ付けているようだった。その激情は叫ぶ、早く帰れと。
ああ、早く早く会いたい。彼の暖かな体に触れ、彼の体臭を嗅ぎたい。この手の中に彼を留めて、彼を確認したい。そう、激情達は叫んでいた。
「今、帰るからね」
ブツブツと呟く彼の眼差し。常ならば鋭い光を宿す瞳は、複数の色が混ざって黒くなったような、鈍く黒い色をしていた。興奮を抑えきれないように翼がパサリと動き、水面を叩いて派手な水飛沫が上がる。
「キャァ冷たーい」
唐突に、気の抜けた野太い声が上がった。その声を聞いた瞬間、スウと熱が醒めて冷静になるフォルテス。目の色も、元の澄んだ黒に戻っている。
舌打ちした彼は、陰鬱な表情で振り向いた。
「テメーか」
「テメーとは、相変わらず御主は失敬だな」
岩の上で胡座をかきながら、ずぶ濡れなのを気にもせずにアッハハハと笑うのは、豪奢な赤い鎧を纏う男。せっかく立派な鎧なのに、着方がだらし無い為に台なしになっている。何故か、頭に氷嚢をのせて痛そうにしていた。
男を睨むフォルテスは、ビシッと親指を下に向けると「死ね」と言った。それを見た男は、呆れたようにプヒーと溜息を吐く。
「やれやれ、最近の若者はた易くそのような言葉を言っていかんな。ダメだぞ気安く酷い言葉を言っては」
「大丈夫だ、万感の思いを込めて言った。使い方は合っているぞ戦神」
そう、男は戦神である。天界にも冥界にも属さない中立の神であり、戦いを司る偉大な神。そんな神は、フォルテスの言葉にどこ吹く風な雰囲気で懐からパンフレットを出す。
「いやー、今回も素晴らしい手際でござった。そんな御主はやはり、某のコロッセウムの戦士に相応しい!ささ、是非とも契約してくれ」
いそいそとパンフレットを岩の上に並べる戦神。
そこには【戦うだけの簡単な仕事です】【笑顔が絶えない仕事場です】【経験者優遇】【各保障充実】【衣食住及び女酒完備!】という文字が、やけにキラキラした筋肉戦士達の写真と一緒に乗っていた。
他にも
【戦士さん40才】
「ろくでなし戦士と呼ばれていた私だが、やっと楽園を見つけた!常に猛者と戦える此処は素晴らしい」
【バーサーカ年齢不詳】
「殺す此処殺す嬉しい殺す。ヒャハ!ヒャハハハ」
【亡国の騎士26才】
「奴は何処だ……。主の仇め……。ん?ああ、仇討ちの場を作ってくれた神に感謝している」
など、怪しい体験談が踊っていた。
「しかも!近々開催される冥界天界合同武術大会。これでは、各神が自分の配下を出して戦わせるのだが、優勝者とその所有者は、神の所有物を一つ手に入れる事ができるのだ!どうだ?御主ならトップを狙えるぞ!」
「誰がお前の物になるか、帰れ」
「ぬう困る。某は太陽神の戦馬車が欲しいのだ!」
「知るか!」
ヤダーヤダーと岩の上に寝転がって駄々をこねる戦神に、青筋を立てたフォルテスが川底から拾った石を投げる。石といえども赤ん坊くらいの大きさである。当たれば大怪我を負うだろう。
容赦ない投擲。石は戦神目掛けて落ちたが、そこは流石の戦神。パンフレットを素早く回収すると、彼岸の岩へヒラリと飛び移ってしまった。
「うーん。また断られてしまった。何故だ?」
「今までの行動を考えて、何でイケると思う」
腕を組んで不満げに呟く戦神に、眉間を押さえながら応えるフォルテス。フォルテスが戦神を苦手に思うのは理由がある。戦神は戦馬鹿なのだ。
才能のある者を見かけると、それを伸ばそうとする。それは良いのだが、基準が神様基準なのだ。
フォルテスは今まで修業の名の下に、雪山に放置されたり、戦闘途中にいきなり全スキルを封じられたり、と散々な目にあっている。なんだかんだいって、その結果は良い方向に転んだが、一つ間違えば死んだ。
「兄さんと離れ離れになることなんて誰がするか」
「ハハハハ!そこは大丈夫だ!彼も勧誘中だ」
その言葉にフォルテスが振り向くと、戦神は自慢げに笑っていた。
「兄弟揃って私の物になれフォルテス」
ヘラヘラと笑う戦神だが、何かうすら寒い物を感じる雰囲気を纏っていた。その姿を見た瞬間、体の中が一気にざわめき戦神に敵意を向ける。
「お前」
「ハハハハ!」
睨み付けるフォルテスに構わず、高らかに朗らかに笑う戦神。そんな神に、苦々しげに顔を歪めるフォルテス。笑う戦神は、フォルテスに手を伸ばす。
先程のふざけた様子とは違い、太陽を背にして静かに笑う彼の瞳には深い英知が宿っていた。それは、長きにわたり生きる神の老長けた姿。
「美しい歌声を持つ白翼の兄に、類い稀な戦力を持つ黒翼の弟。素晴らしい御主達は、二人一緒である方が美しいと某は知っておる。某は知っておる。某は御主達の本質を理解しておる。某の手をとれ、さすれば御主達は永遠に一緒になれる。幸福になるだろう」
歴戦の戦士のように悠々と佇み、神々しき神気を纏いながら傲慢に告げる戦神。凡人ならば、その圧倒的な存在感に、思わず頷きそうになるだろう。だがしかし、その差し伸ばされた手を、フォルテスは弾いた。
「俺と兄さん以外はいらない。俺達は誰の物にならないし、神の玩具になんてならない。手を出したら殺すぞ」
翼を左右に広げて羽毛を逆立てて、神に敵意を向けるフォルテス。鋭く睨んでくる彼を見て、プヒーと笑う戦神は肩を竦める。神にとっては英雄だろうが人種最強だろうが、赤子のようなものだ。
「神を殺すって!笑笑笑」
「ぬかせ。俺は本気だ」
「はっはっはっは!」
怒気を溢れさすフォルテスを笑っていなし、戦神はパンフレットを懐に仕舞うと立ち上がった。
「まあ、気が向いたら言ってくれ。すぐにでも某は御主をコロシアムに導くぞ」
「行かねーよ」
「ナハハハハ!」
明るく笑った戦神は、空に溶けて消えていった。憮然とした表情のフォルテスは戦神が先程までいた場所を睨み、舌打ちをしながら身支度の続きを始めた。
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「やはり、大分進行しておるな」
その様子を空の向こう側にて眺めていた戦神は、笑いながらも真剣な声で呟く。
「言われなくとも邪魔せぬよ。某達よりも長い間、一つの魂を愛し続ける狂気。魂の理さえも壊そうとする魂を持つ男の邪魔なぞ、とてもとても……。あの幼子が対だと気付いた時は驚いて肝が冷えたぞ。しかし、冥王様はそこを理解しておられるのか微妙だな。呪神殿は理解しておるが、冥王様は頑固であるからなぁ。それで五百年前に痛い目にあったというのに」
頭を撫で、たん瘤に触れながら「おー、痛い痛い」と呟きながら溜息をついた戦神。神は虚空に横たわりながら下界を見る。そこには、矮小な命達の無数の営みが繰り広げられていた。
「さーて、やっと求める物を手に入れた奴はどうなるか。世間の荒波を共に歩くか、傷つかないように小鳥を閉じ込めるのか、お主の前には選択肢がある。また失うか、ようやく幸せになるかはお前達次第だ。だが、今の状態は良とは言えぬな」
戦神は眉をひそめながら腕を組んで顎を撫でる。
戦いの神とは身分問わずに、様々な人物が加護の対象となる。だからこそ、彼は最初に気付いたのだ。時折、この世界にもあらわれる不思議な魂達。
狂気とも言える執念を持つ王の魂。
それを知っている戦神が、少しだけ同情するのも仕方ない。戦神とは神の中でも、特に深く人間と関わる存在で、無慈悲な勝敗を与えながらも情も厚い神なのだ。
「あー、頭いったいわん」
その戦神の横で呪神が唸っていた。蛙形クッションを抱き締めながら横たわる彼女は、相変わらず薄布を巻き付けただけのような扇情的な格好をしている。そんな彼女の頭にも漫画みたいなたん瘤が鎮座していた。
「鵺王様ったら、あんなに怒らなくても良いのに」
「少々悪趣味が過ぎたからな。仕方ない」
どうやらあの丘の事件の彼等の対応で、鵺王に鉄拳制裁を受けたようだ。
「そうねぇ、カリダちゃんに嫌われたくないし、ご機嫌とりをしようかしらぁ。今のカリダちゃんには私の力が役立つしぃ。で、アンタはどうするの?」
「某は暫く、フォルテスを見ていようと思っておる」
その言葉を聞いて、ズリズリと移動して眼下を見下ろす呪神は「あら!?」と驚いた。片手を口に当てた彼女は、ニヤニヤしながらフォルテスを見る。
「あらあら、ずいぶんと出てきて、混ざっちゃってるじゃなぁい。面白ぉい、魂が派手に濁っているわ」
呪神は「良い気味」とケラケラと嘲笑う。カリダと深い魂の繋がりを持つフォルテスを、結構彼女は嫌っていた。いわゆる嫉妬の一種だ。
「ねぇん、放置しなさいよ。カリダちゃんは私が守るから、烏がどこまで壊れるか見たいわぁ。ウフフフフ」
「んな、恐ろしい事はせぬ。手は出すでないぞ」
えぇーと不満げな呪神を無視して、戦神はその場を後にした。
誤字脱字修正致しました




