カリダ君の冒険【遭遇!神様達!】2
「キャー可愛い」
パフパフ
「いやーんちっちゃーい」
パフパフ
「フゴーでございますー」
皆様またまたコンニチハ!私はただ今、巨乳の谷間に顔を突っ込んで挟まれております。
あー柔らかー。
多分、男性なら羨ましい桃源郷のような状況でしょうが、私は元女なので興奮はしません。柔らかい感触に挟まれて気持ちいいです。
だがしかし!苦しい!息が出来ない!あと女臭い!!
「いい加減破廉恥な行いを止めないか」
ステッキを両手で握った冥王様が肩を怒らせて唸っている。再び暗黒オーラが湧き出ているけど、女性から発散されるピンクオーラが暗黒オーラを弾いている。
今から数分前、新たに現れた人影は三人だった。
よく見てみると、個性的な方々だ。
こちらを見てニコニコ笑っているのは、一見すると穏やかそうな豊満な美女。緩やかな巻き毛の黒髪に、柔らかそうな体。
当然巨乳いや……爆乳で、少しポッチャリな体つきだがバランスがとれていて、まさに母性を体言したかのような女性だ。
雰囲気もユルフワしていて、何をしても許してくれそうな雰囲気を漂わせている。
だがしかし、元女の本能が告げる。一番敵に回しちゃいけないタイプだ。
尽くすと目茶苦茶尽くして何でも許してくれるが、裏切られた回数はしっかり覚えていて、キレた瞬間に凄まじい執念で復讐するタイプに見える。
まるでローマ女性のような、純白の布を巻き付けただけのような服に、神秘的な七色の光を湛える白金の髪。蓮のような淡いピンク色の大きな瞳には、長い睫毛がバッサバッサ。
そんな美貌を持つ彼女は、何故か蛙帽子を被っていた。
そう、蛙さんを可愛いらしくデフォルメされた毛糸製の帽子である。その顔に似つかわしくない帽子は、多大な違和感を演出していた。
「……一応聞くが呪神。その奇妙奇天烈な被り物はなんだ?」
「アラアラ〜。だって、わたくしの歌姫は小さな子だって言うじゃないですのぉ?だから、怖がらせないように被ってきましたのぉ。可愛いでしょ?」
「可愛い?ふん相変わらずゲテモノ趣味で私には理解ふ「可愛いでしょ?」
「いや、理解ふの「可愛いでしょ?」
「だから理か「可愛いでしょ?」
「……」
「……」
「可愛いな……」
「ウフフ〜。ありがとうございますわ冥王様ぁ」
す……すげー怖ぇー。有無を言わせぬ笑顔で、意地が悪そうな冥王様に認めさせた……。
よくニッコリ笑って脅す腹黒ネタはあるが、私はそんなの眉唾物だと考えていた。だけど、マジで怖いんだねっ!目が笑っていない笑顔を初めて見たよ。また股間のジュニアがキュンとなったよ。
「とりあえず冥王様、わたくし達も歌姫ちゃんと契約しておりますの。いくら冥王様といえども、勝手に連れ去られて黙っている、わたくしではありませんわよ。神族最高裁判に訴えますわ。冥界にて太陽神様を招いてパーティーしますわよ」
「最大の嫌がらせですな」
「……」
後ろの二人もシミジミと頷いて同意している。
「なにぃ!?」
「ふごふ!」
女性の言葉を聞いた冥王様は、眉を吊り上げて私を睨み私の顎をガシイとわし掴みした。
「契約したそうそう浮気か!?我が歌姫よ!」
「えええ!?」
け…けろべろすさん?何だか顎に力が篭っておりませんか?牙がチョッピリ食い込んでますけど?
「グルグル」
あっ怒ってる。御主人様思いなんですねケロベロスさん。
センティーレは「キューキュー」鳴いてジタバタしていたけど、ケロベロスに首を強めに噛まれてクタリと気絶している。
「まー冥王様ったら怖い顔」
ガタガタ震えていたら、目の前に女性が浮かんでいた。ケロベロスさんに「手をお離しになってぇ」と全く笑っていない瞳で微笑みながら告げる。甘ったるい優しい声なのに、何故か鳥肌が止まらない。
女性がケロベロスさんの顎をギリギリ掴むと、ケロベロスさんは尻尾を巻いて口を開けた。
「ヒーンヒーン」
情けなく鳴いたケロベロスさんは私を離すと、床にドスンと転がり腹を見せた。
全面降伏だ。
「ギャー」
「きゃっちー」
ボヨン
「ふぎゃ?」
一方、高所から落とされた私は柔らかい物に受け止められた。顔面がポヨポヨした物に挟まれる。
「我が歌姫に破廉恥な事をするな恥知らずが!」
「ふふーん」
どうやら私は女性に正面から抱きしめられ、彼女の巨乳に顔を突っ込んでいるようだ。冥王様が怒っているが、全く気にしない女性は、ヌイグルミにするよう私に頬擦りした。
「いやーん可愛いいーん。頬っぺたモチモチー」
「むにー」
「キャハハハ伸びるぅー」
「むにょー」
白魚のような女性の繊細な手が頬を摘み、ムニョンムニョンと引っ張られる。
「呪神殿、某もやらせて頂けぬか?」
「良いわよぉー」
「……」
「あら、死神ちゃんもー?はいどーぞぉ」
手袋を嵌めた骨張った手と、ゴツゴツ逞しい手が頬や瞼や鼻を引っ張る。止めろ!顔が変形するー。
「……私を…私を無視するなぁぁぁ!」
ボキイ!
無視されていた冥王様がとうとうキレた。ステッキを豪快に折った瞬間、そこら中に雷光が駆け巡り雹が降る。
室内なのに!
「また冥王殿下がキレなされた」
「……」
「やん、歌姫ちゃん。一緒ににげましょぅ」
雷光や雹もしくは黒い炎を避けて空を飛ぶ三人の男女。
「逃げるなぁぁぁ!死神!お前ぇぇ、我が配下でありながら良い度胸だなぁぁぁ!!」
「……!?」
死神と呼ばれた男性がブンブン首を振る。
彼は痩身長躯の男性で、頭から足元までスッポリ覆うカーキ色のコートを着ている。しかもフードを目深に被り、尚且つそのフードの端には深い茶色のファーがあるから、顔が隠れていて全く見る事は出来ない。
純白の手袋も嵌めている為、口元だけが唯一素肌が見える場所であった。暗い色彩の中、青白い口元がボンヤリと浮かび上がり不気味な印象だ。
だがしかし、そんな男性は、冥王様に叱られると必死に首を振って否定している。
「……(焦)」
「ふむ…、なら歌姫を手に入れるのを手伝いたまえよ」
「……(驚愕)!?」
「私の下僕のくせに何だ?その態度は!」
冥王様の言葉にガーンと衝撃を受けた死神様は、肩をガックリ落とした。猫背になりながら、ツンツンと自分の人差し指同士をつっつき、無言で不満をアピールしている。
それに苛立った冥王様に怒鳴られた死神様は、握った拳を口元に当ててプルプル震えていた。
可愛い!?プルプルする長身痩躯男子萌!
「まあまあ冥王殿下、あまり死神君を虐めずに」
「お前も私に逆らうか」
「某は中立でございますから。なにせ、天界冥界どちらでもありませぬゆえ」
タハハと笑っているのはイケメソ男子。イケメンではなくイケメソといった感じの男子だ。
逞しい体には絢爛豪華な赤い鎧を纏い、褐色の肌に整った顔立ち。背中にゴテゴテに飾り付けられた大剣をベルトで吊り下げている。
波打つ赤銅色の髪をオールバックにして、人懐こい灰色の瞳の美形だ。だがしかし、纏う雰囲気が緩いというかだらし無かった。
手甲のベルトはユルユルでずり下がり、鎧の下に穿いている黒色の余裕のあるズボンも腰の辺りまで下がっている、いわゆる腰穿きである。
目は眠たげで凛々しさはカケラもなく、口はにこやかと言うかヘラヘラしている。唇と鼻にゴツイ宝石の嵌まったピアスをしている。
そんな不良じみた外見の割には、武士のような物々しい口調である。
プヒーと呆れた溜息を吐きながらの戦神様の言葉に、ギリギリと歯軋りを響かせながら怒り狂う冥王様。
「そもそも。戦神、呪神は既に沢山歌姫を持っているだろう。これ以上持ってどうするのだ?神が強欲に捕われるのは薦められぬぞ。だから、私に譲れ。死神は私の部下だから、お前の所有権は私にある
」
「……(驚愕)!?」
「しかしながら、今回の戦は大変でしたからな。自分のご褒美的な物で歌姫を所望します」
「わたくしもぉー。もう可哀相な娘達の呪いが大盤振る舞いでぇ大忙しよぉ。だから新しい歌姫ちゃんで癒されようかなってー。それに、この子って稀な才能の持ち主よぅ。欲しいわ」
「……(同意)!!」
「お前は黙ってろ死神」
二柱の後ろで「そうだーそうだー」と頷いていた死神様に、冥王様の冷徹な一言が突き刺さる。
あ……死神様が打ちひしがれ、ケロベロスの影でいじけた。クスンクスン鼻を啜りながら、懐からドデカイ鎌と研ぎ石を出して研ぎはじめた。
「ねぇ歌姫ちゃん。わたくしの島におこしなさいよぉ。こんな野蛮でむさ苦しい男はいないわぁ。綺麗で可愛くて柔らかい女の子ばかり。本当は男子禁制だけど、歌姫ちゃんは特別よぉ」
おおっとぉ!?ブロークンハートな死神様を無視した呪神様が勧誘を始めましたよ!?
「それでは、某のコロシアムにて戦勝歌を歌うのは如何か?勇壮な神達の戦士達の武に歌を乗せるのは、なかなか心踊るぞ!弾ける汗と熱気が満ち、高揚する熱い戦勝歌が響く中の戦士達の戦い!胸が熱くなる!何よりカッコイイ!」
対抗するように戦神様が、拳を天井に突き上げながら勧誘を始めた。コロシアム戦士達のぶつかり合い、溢れる筋肉の素晴らしさをトツトツと語っている姿はバカっぽい。
戦神様って、意外と熱血ですね。
「……!……!」
「死神。誰もお前の墓場に行きたくない」
「……!?」(ガーン!)
何かを訴えるように両手を振っていた死神様に、冥王様の鋭いツッコミが叩きつけられた。
「コイツらは大量の歌姫を所有している。どうせ飽きたら、その他大勢として放置されるだろう。私の宮殿にて囀れば、一点物として永く懇ろにしてやろう。しかも、私の玉座の横でだ!」
「!?」
「冥王様ぁ、そこまでするだなんて。必死ですのね」
「今まで、冥王殿下に契約しようとする物好きな歌姫はいなかったですからな」
「このっ」
お二方が、可哀相な物を見るような目線で冥王様を見る。再び激高する冥王様。
駆け抜ける雷だが、今度は戦神様も呪神様も避けなかった。
「まあ…某達の最終的な欲しい物の獲得方法は決まっておりますからな」
「力強くよねぇ。野蛮だわぁ」
ぽーいと呪神様に放り投げられると、死神様に受け止められた。ふと横を見ると、センティーレがガタガタ震えて頭をキュッと抱えていた。
「ひょぉ〜」
頭上では怪獣大決戦…いや、神様大決戦が繰り広げられていた。
冥王様が両手を左右に伸ばすと、それに従い、広い通路が更に広く広大に拡張した。まるで早送りで成長する生き物を見ているような光景だ。
広くなった空間を戦神様が縦横無尽に駆け巡り、雄叫びをあげると凄まじい高熱の炎が体を覆った。
呪神様が金切り声で絶叫すると、爛れた赤ん坊や老婆に似た黒いタールのような物体にまみれた存在が湧き出てきた。
殴り切り打ちのめし、閃光やら炎やらマガマガしい物が、轟音をあげてぶつかり合う。恐らく、私達が大丈夫なのは、死神様が守って下さっているからだろう。
それがなければ死んでいる。そんな光景を見て思った。
ヤベェ……世界終わるかも。
凄まじ過ぎて妙に冷静な心で考えていたが、救世主は突然やって来た。
「このお馬鹿ぁぁぁ!」
ガン!ガン!ガン!
「ぐわ」
「きゃん」
「のぎゃ」
何処からともなく現れた人物の踵がお三方に突き刺さる。
今まで大人げなく…いや、神げなく戦っていた三柱は、人物の踵にぶっ飛ばされ床にベショッと落ちる。
「君達なにやってんのさ!」
「く……鵺王…」
「いたぁーい」
「フフフ…良い蹴り。さすが鵺王様だ…」
三柱様達を吹き飛ばしたのは、従者を従えた少年だった。まだ六歳程度の外見で、淡い水色のセーラー服を着た少年は私をビシッと指差すと三人を叱った。
「たく!馬鹿じゃないの!この世界の神はどうしてこうも脳筋かな!?先ずは体を弄られたその子を治療するのが大切でしょ!君達の所有権なんてくだらない物は後にしなさい!」
幼い少年に叱られた御三方は正座すると、素直に「はい」と応えた。




