表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒旋律の歌姫  作者: 梔子
一章【監禁編】
25/64

カリダ君の冒険【遭遇!神様達!】

カオス続行

「フオォォォォ!」

ガツン

「キュ」

「何だこの光景は」


ハロー皆様。相変わらず体が勝手に動く、カオスな現場でございますよー。


何で私が再び荒ぶってるか教えてさしあげよう。


なんと男性がコートを脱いだのだ!


気品漂う男性が、優雅に長い腕を折り畳んで袖を引き抜く。その、大人の男性が醸し出す無防備な雰囲気。

大好きです!!


私は男性が服を脱ぐ姿にグッと来る性癖です!もうね、この動作で御飯五杯食べれますよ!誰か銀シャリ持って来いぃぃぃ!


興奮のあまり絶叫しちゃうよ。前世の時は、今みたいに興奮しても我慢してたけど、今の私は美少年だから我慢しない。前世の平凡顔だと周りに通報されちゃうけど、美少年は何をしても似合うって言うしね!


本能のまま叫んでも、きっと通報されない!


ピポパ


「あーケロベロスか?不審者を拘束しろ」

「通報された!?」


何処から出したか分からない、手の平大の銀色の箱に話し掛ける男性。箱の向こうから【ワン】と、まるで地鳴りのような重低音の鳴き声がしたと思ったらぎゃぁぁああああ!?


何か巨大な黒い塊に吹き飛ばされて、床に俯せに押さえ付けられた!


体は勝手に起き上がろうとするが、逞しくも黒い毛に覆われた何かに全身を圧迫されているから無理!無理無理無理!だから諦めろや体ぁゴラァ!無理に動こうとすると痛いから!折れるから!首がゴキッてなるから!


てゆーか何これ?なにこのモフモフ?


疑問に思っていると、それに応えるように首が勝手に動いて上を向き、ソレが目に入った。


「な…何じゃこりゃああああ」

「キュギャアアアアア!」


センティーレも絶叫するソレは、まさかまさかの巨大なワンコ。横目で見ているから大きさは詳しくは分からないけど、通路にミッチミチになる位の巨大さはあるように見える。


おい!!チラリと頭が三つ見えたぞ。マトモなワンコじゃない!


もしかして!?今、私の頬に当たってるのって肉球?なんかポップコーンの匂いがするし、私の頭を踏んでるのワンコの手だ!


関係ないですが、ワンコの肉球はポップコーンの匂いがすると、個人的に思います!


「GOOD BOYケロベロス」


ギャーギャー絶叫する私を押し倒し拘束する巨大な犬を見て、男性は満足そうに微笑んでいた。


■■■■■■■■■■■■


「さて、落ち着いたかね?我が歌姫と畜生一匹よ」

「はい」

「キュウ」


冷静になった頭で男性に答える。


現在の状況は、頭部が三つある犬の真ん中の頭部に、胴体をくわえられてブラーンとぶら下げられている。


私の身長より大きな顔の犬に、甘噛みといえども噛み付かれているのだ。ブフォーブフォーと、生臭くて鉄臭い息が奥から吹き付けてくる。正直、生きた心地が致しません!


DEATHられる!噛み噛みされる!


ちなみに体は相変わらず勝手に動く為に、縄のような実体化した影のような物で拘束されている。


触れられている感覚がないけど、ギッチギチです。


横では、センティーレが子猫のように首筋をくわえられて、ブランとぶら下がっている。牛程度の大きさがあるセンティーレが子猫のように扱われるなんて、一体どれだけでかいんだ。


二人そろってカチンコチンになっていたら、男性が懐から白いレースのハンカチを出して、唐突に空中に投げ捨てた。


すると、床の上の影がニョッキリと実体化してハンカチを受け取り、私の顔をフキフキと優しく拭いてくれた。


この影は、私を拘束している物と同じだ。先程、これも影が実体化して私の体に巻き付いたのだ。


ソレはマスターが使っていた魔術のどれとも違う力だ。とゆーか魔術が行使される感覚がしない。魔力とは違う強い力を感じる。それは驚くべきことだが、何だかワンコの衝撃が強すぎて驚けない。


「とりあえず顔を清めろ」

「あ……ありがとうございます」

「見苦しいからだ。礼を言う必要はない」


フッと嘲るように笑った男性がパチンと指を鳴らすと、ベルベットの布が張られた坐り心地が良さそうな四脚の椅子が現れた。


そこに悠々と座る男性。


脱いだコートは、誰かが受け取ったようにフワリと浮き上がり、まるでコート掛けのような体勢になった影に引っ掛かる。


床の上に設置されていた椅子は、男性が座るのを確認するとフワリと空中に浮かび上がり、ワンコの目の前で則ち私の目の前で停止した。



「さて…、お前は私が誰か知りたいのだろう?」


男性は私の顔を覗き込み、片眉を吊り上げて口の端を歪ませたなんとも意地の悪い顔で尋ねた。


「はい」


私が頷くと、ニヤリと笑った男性は片手に持っていた杖を膝の上で構え、長い足を組んで偉そうに胸を張り高らかに告げた。


「私は冥神であり、【冥王】とも【鉄の血潮】とも呼ばれる者だ。冥王が気に入っているから、冥王様と呼べ。お前が契約した私は、この世界を創造せし母神と父神より生まれし一柱であり、冥界を統べ、冥界に連なる者全ての王である。お前のような者が、おいそれと謁見できる存在ではないが、特別に私自ら会いに来てやったぞ。泣いて喜べ」

「は……はい?」

「この度は私の歌姫になるとの申し出受け取った。今後、私の為に私の宮殿にて囀る事を許そう。これは、お前のような存在では万が一にも訪れない栄誉である。私を讃え敬い歌え。ああ、あと一つ言っておくが、その歌声は私以外に聞かせるでないぞ」

「………はい?」


私が首を傾げてマヌケに聞き返すと、冥王様は不機嫌な顔をして私を睨み、杖の先で私の顎を押して上を向かせた。


「まさか…?私と契約しながら、気に食わない等と戯言を囀るか?」


冥界様の翡翠色の瞳がスウと赤く染まり、ザワザワと囁くような黒い気体が体から湧き上がる。


こ……怖いっ!?股間がキュウとなる!


「い……いえいえ!ただ私は豊饒神様とのみ契約をしたと……」

「ふん。奴は私が追い出した。奴は兄である太陽神の配下で気に食わんからな」

「え!?」

「何も知らぬようだな。どういう事だ?」


知らなさ過ぎる私を見て、冥王様は首を傾げる。


一方、私は慌ててツールを開き、自分のステータスを見ようとしていた。


マジで豊饒神様の加護がなくなっているか確かめたかったが、一切何も見えなくて【脳に重要なエラーが検出されました】とだけ表示されている。ステータスは表示されない。


私は【エラー修正用】と書かれた画面を開いたが、そこは意味不明な数字と記号がひたすら流れてくるだけだった。画面の上の方には、【非正規の書き換えを検知致しました】と書いてある。


これプログラムって奴?……いや、マスターが言っていた代理脳を構築する極限まで簡略化された魔法陣だ。ヤベ、マジ分からねぇ。多分何処か書き換えられているから、修正しないといけないんだろうが、ツールの検索機能も使えないから、手も足も出ない。


思い切ってやろうにも、素人がやったら大変な事になるよね?多分、下手に弄ったらアンポンタンになる。


ダラダラと汗を流していると、冥王様がズイと顔を近付けて、フムフム頷きながら私の画面を見ていた。


小さく頷いてる姿が妙に幼い感じがして可愛い!!


じゃない!正気に戻れ私!まだ他人が見えるようにしてないんすけど、何で見えるんですか!?


「神だからな」

「そうですね!?」


てゆーか、この数字って私の脳みそみたいな物だから見ないで!メッチャ恥ずかしいんです。私が硬直していると、画面に一通り目をとおした冥王様は、納得したように画面に指を突き付けた。


「ふむ……良く分からないが、お前の頭が幾つか書き換えられているようだな」

「まじでございますか!?」

「うむ。たかが人間が作った物、見れば大体分かる。規則性のある美しい数列の幾つかが、ずさんな物に変えられているな。見えているだけでも此処と此処だ。いやはや、元が美しいだけ目立つ。嘆かわしい物だ」


すみません。私にはその規則性すら分かりません。だがしかし!さすがマスター!神様に認められるなんて、マジ私のマスター天才!


そして、我光明見出だせり!


このまま冥王様に分析してもらえれば、修正してもらうこともきっとおぉぉぇ!?


「ひょえええ!?」


悲鳴を上げた理由は、いきなりワンコたんが動いたのだ。


重力が体にかかり、へその裏の辺りがヒュウてなる。ジェットコースターに乗った時みたいな、あの感覚。


高かった目線が更に高くなったので、恐らくワンコが立ち上がったのだろう。


「まあ良い。さっさと行くぞ。早く宮殿に帰り、私の庭園で歌声を響かせろ。ああ、その前に体が弄られているようだからアイツに治させるか……。いやはや歌姫とはメンテナンスが掛かる物だ。私を手間取らせるとは、お前は幸せ者だな」

「ちょ……タンマ!タンマでございます」

「どうした?まだ何か文句があるのか?」


「いえ、文句と言うか何と言うか」

「いい加減にしろ。自覚がないようだが、この私がお前の歌声を気に入ったのだ。それはこれ以上ない誉れなんだぞ」


私が大声で騒ぐと、冥王様は呆れたように私に言い聞かせた。だがしかし、納得する訳にはいかん。このままだと神様の世界に直行じゃ。


冥王様の宮殿に行く=同棲とは、かなり心惹かれる話だ。出来ることなら、冥王様を影ながらハアハアして見守りたい!


此処の神話ってかなり腐心をくすぐるんだよね。神話の出来事が本当か確かめたい!それで冥王様を見る目線がかなり変わる!


けど、私には簡単に神様の世界に行く訳にはいかないのだ。だって……。私の首に掛かった首飾りがシャラリと鳴って、私が唇を噛み締めた時。


「アラアラ〜。冥王様勝手な事を言わないで下さらない?」

「……」

「冥王殿下。抜け駆けは許しませぬ」


第三の声がした。冥王様が舌打ちする方向を見てみると、そこには新たな三人の人影がいた。


一体何なんだよぅ(泣)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ