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黒旋律の歌姫  作者: 梔子
閑話
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【閑話】ゆめのそと2

綺麗だ…。

誰かが呟いた。

「久しぶり。ご帰還おめでとう。おや?大分削れてるね、苦しいかい?」

「う……」

「早く回復した方がいいよ。明日はうんとキツイ奴がくるから」

「くそ……」

「ああ!そう言えば明日は君の誕生日だね。君にプレゼントをあげるよ。もし君が明日、合格点を出したら彼に会わせてあげる」

「彼って……誰だよ」

「知らないか。彼はね、出来損ないの君とは違って、完璧で美しく清らかな眠り姫様だよ」

「は?そいつ男だろ……眠り姫なんてキモ」

「クククク……。君と彼は同じ魔術師によって設計された、いわば兄弟だよ。まあ、君は大分改造させてもらったけどね。知ってる?君は彼の護衛として作られたんだ。彼がいるから君は生まれたんだ。君は彼の付属物とも言えるね」

「……誰が付属物だ。俺は物じゃねぇ。何時かお前達全員殺してやる」

「うん!楽しみにしてるよ。君の怒り憎しみ全てが未来の糧になる!だから、もっと怒って苦しんで憎んで!」

「気違い……笑っていられるのも今のうちだ…」

「良いねその顔。デザイン通りの悪魔みたいだよ。彼が作り出した顔と外見でもっともっと感じて喘いでくれ!」


■■■■■■■■■■■■

「痛ぇ……」


少年は無機質な室内で呟いた。


「何が彼だ……」


伝えられた同朋の存在に、彼は顔に出していなかったが動揺していた。


同時に見ない同朋に、泣きそうなどす黒い思いが胸の中に浮かぶ。


生まれた時から繰り返される極限状態。傷だらけの少年にとって、同朋の存在は喜ばしい物ではなかった。


八つ当たりじみた怒りが沸き上がる。


「ふざけるな…。俺は俺だけの物だ…。俺は誰かに利用される為に生まれたんじゃない。俺を使う奴なんて、ぶっ殺してやる。何が兄弟だ何が護衛だ。俺は付属品じゃない俺の為に生きるんだ!」


痛む体を丸めて少年は見ぬ同朋への殺意を積もらせた。


■■■■■■■■■■■■


「綺麗だ……」


見つめる瞳は誰だろう。

潤んだ澄んだ深い黒い瞳。


眠気に沈んだ頭の中でカチリと何かが作動した。


【同型生命体を確認。リンクを開始、ツールを同型生命体にインストール致します。5…4…3…2…1。インストール完了致しました。警告…同型生命体が生命維持に危険な特異状態と判断。本体とのリンクを再開。現在未習得のスキル、肉体強化スキル・回復力上昇スキル等を同型生命体に譲渡致します。宜しいですか?譲渡スキルは下記にて確認してください】


小さな傷だらけの少年

綺麗な黒い髪

硝子の向こうの少年

目を開けなくても分かる



【YES:NO→YES】



【了解。同型生命体に本体スキルを譲渡致しました】



■■■■■■■■■■■■


「ふーんふんふん」

「一号です。どうされたんですか室長?デビル君のデータを見て頷いて」

「ん?あのね、彼に会わせてみたんだ」

「二号です。悪趣味ですね流石です」

「彼と会わせた時の反応を観測してみたかったんだ。僕はてっきり憎むと思ったんだ。だって、あの子って反抗的でプライドが高いし嫌世的な所があるだろ?だから、悲惨な場所にいる自分と、ただ安穏と眠っている彼を比べて憎むと思ったんだ」

「三号です。確かに恨み言を呟いている姿を確認しております」

「けどね、あの子どうやら一目惚れしちゃったみたいなんだ。彼に会わせろ話させろ解放しろと煩いんだ」

「二号です。ご不満で?愛情も心の測定に必要不可欠ですので、ありがたいのですが」

「いや…ねぇ。どうせなら、グチャグチャに憎しみ合って殺し合ってくれた方が面白いと思うんだ。想像してごらんよ。天使君が目を覚ました時にデビル君に憎まれる姿。こんな物を描いて楽しみにしていた存在に憎まれて傷付けられる美しい天使…ゾクゾクするよ」

「一号です。ああ…回収した資料の中にあった紙ですね。天使君、絵を描くのが上手ですね」

「二号です。勝手に持ち出さないで下さい。担当者が困ってます」

「ク…ククク…。まあ、愛憎にまみれて執着されて殺し合うのも素敵だよね。やっぱり天使を傷付けるのは悪魔じゃなきゃ。その時までに、デビル君をきちんと管理して準備万端にしなきゃね。嗚呼、楽しみだよ。彼が目覚めてデビル君に食いちぎられる、その時が!」

「三号です。最低な変態です。さすが室長」


彼の頭の中では、目の前の美しい金髪の少年が、黒い翼を持つ少年に食われ尽くす様子が鮮明に浮かんでいた。


美しい少年達。


二人とも、あのジジイが設計した。ジジイが作り出した美しい生き物を殺し合わせる計画は、なんと甘美な物か…。


君が泣き叫ぶ様子を想像すると達してしまいそうだよ。


「望んだ命に犯されろ」


舌なめずりしながら呟き、研究所に狂った笑いが響き渡る。


狂った空気が満ちる中、一人の少年が何もない空中を夢中で見ていた。


職員には彼が呆けているように見えた。だがしかし、少年の目の前には半透明の画面が大量に広がっていた。


少年は画面に触ると、現れた文字を夢中で読みあさった。


■■■■■■■■■■■■


【種族】

人工生命体(戦闘特化)

【名前】

なし

【状態】

異常・衰弱・損傷

【称号】

曲がらぬ魂・実験台・授かりし者・揺るがぬ恋心

【スキル】

飛行・不屈の精神・ツール(継承)・回復力上昇(継承)・運動能力強化(継承)・腕力(継承)・守備力増大(継承)・成長率倍増(継承)・理解力増強(継承)・記憶力増強(継承)・精神汚染耐性(継承)・薬物耐性(継承)・隠匿(継承)・鑑定眼(継承)


■■■■■■■■■■■■

【体力】50/150

【魔力】5/70

【攻撃力】260

【守備力】140

【魔法攻撃力】30

【魔法守備力】50

【器用】40

【素早さ】160


■■■■■■■■■■■■


【スキル隠匿発動。全てのスキルは他者に見抜かれることはございません】

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