三年後
「もう一体作るぞ」
「はい?」
ある日の朝、朝食を食べていたら唐突にマスターが宣言しました。
朝食は、パンと具を別々に置いて自分で自由にサンドイッチが作れるスタイルです。前日の残り物であるコロッケやらチキンも机の上に置いて、卵とベーコンを焼いた物とレタス等の野菜を置いたこれは、手抜きなのに見た目豪華なので、【なんちゃってバイキング式サンドイッチ】と呼んでます。
あっ!マヨネーズや甘辛いソースはちゃんと手作りで、手は抜いておりませんから!最近は成長した事もあり、そんな物も手軽にパパーと作れるようになりました。
そう、私が生まれて三年の月日が経ちました。
あれから私は成長して、【美少年】から【成長した美少年】になりました!
ちっくしょぉぉぉ!美少年なのは変わらねぇぇぇ!
詳しく言うなら、以前は幼児っぽさの残るプニプニボディーだったのが、しなやかに手足が伸びて大人っぽくなり、青い果実系な魅力が出てんじゃねーか!
しかも何だこの色気!?未発達な体が危うい魅力を醸し出しとんぞコラァ!陰険外見やガタイ良い外見で色っぽいのは好きだけど、美少年で色っぽいのはリアルに犯罪だから!
創作で色っぽい背徳的な美少年は好きだけど、現実で色っぽい少年は何か、やらしくて嫌…。リアルの子供は、伸び伸び健康的で元気なのが良いんだよ。
色気いらん!犯罪臭する!
そう言えばステータスってどうなってんだろ?暫くは見て遊んでたけど、別に戦っている訳じゃないから変化殆ど無くて途中から見なくなったんだけど。
「ツール」
ツール画面を展開して、【現在状況】の欄がある画面を開く。すると出てきた、久しぶりのステータス画面。
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【種族】人工生物(家事特化)
【名前】カリダ・アーエル
【称号】生まれし者
【スキル】気難し屋耐性
、賢者の知識、飛行、歌姫[豊饒神の加護][----][----][----]、色気(癒し系)
【体力】58/58
【魔力】120/120
【攻撃力】34
【守備力】40
【魔法攻撃力】50
【魔法守備力】60
【器用】130
【素早さ】90
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お!【器用】と【素早さ】が結構上がってる。多分【器用】は日々の家事で、【素早さ】はセンティーレとの日々の鬼ごっこ(鬼は当然私)で鍛えられたんだな。
あ…スキルも微妙に変わって、歌姫[豊饒神の加護][----][----][----]になってる。
歌姫の後ろにある[]内の内容は、現在ファンになっている神様からの加護だ。今は豊饒神しかファンがいないから、一つしか埋まっていない。
これは契約直後に見たから知っている。
ん?
んん?
ちょっと待とうか。何か嫌な物が見えたような…。もう一度確認すると、色気(癒し系)の文字が…。
なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?色気は確かに選んだけどさぁ!いつの間に花開いとんのじゃわれ!
私は知っている…、これが表す重要な意味を。
この世界では、スキルというものを持っている者は多い。それは才能・能力や技術という物を、神の加護で分かりやすく分類された物だ。
私はツールで自分のスキルを確認出来るが、通常は自分で確認は出来ない。それを知りたければ、教会に行かなければいけない。
皆が自分の才能に合った職についたら最強じゃない?とか思ったが、このスキル検査はベラボウな金額の布施が必要らしく貴族くらいしか利用しないらしい。
平民は一生自分のスキルを知らないのが普通。それに生れつきのスキルを全く持たない者も多い。
スキルには才能である【才能スキル】と努力で身につける【技術スキル】がある。
平民からしたら、自分の手で身につけた技術スキルの方が安心できるから、あまり気にしないのだろう。
さて、此処で一つ。貴族が参考にする位だから、スキルの持つ意味合いは大きい。例えば【走り】のスキル持ちと、只の足の早い人は全く違う。
例えるなら、【走り】スキル持ちの人は国体レベル。足の早い人は町内大会で優勝レベルだ。他にも【陶芸】スキル持ちの人は匠レベル、無しの人は趣味のオバサンレベルだ。
このように、スキル表示されると言う事は、仕事に有効活用出来るプロレベルの才能や実力があるという意味だ。
さて、思い出しましたか皆様?そう!私には色気(癒し系)というスキルがある!何だよそりゃ!?
うおおー!プロレベルの色気を手に入れてしまったぁ。しかも癒し系ってなんだチクショー。癒し系お色気って、お色気の中でも最強のラインナップじゃねーか!
何故だ…何故癒し系が?どっから出た癒し系?
はっ!?もしや【あの時】選んだ【和みオーラ】と【色気】が変な化学反応を?
まじかよ。最初は何もなかったから安心していたから、不意打ちだよ。
スキルって成長して出くるの?それなら、まだ何か出る可能性があるって事だよな?
なにせ、十歳程度の子供に色気(癒し系)のスキルが発生したんだ。もし、大人になったら…。
怖いよ!
管理人、特典の化学反応的な物があるなら言えよ!
もしかしてアイツわざとか!?私の地味な人生に不満があるみたいだし、地味な人生歩ませないつもりだな!
そんなこんなで、己の未来の可能性に恐れ戦いていた頃に、マスターが言い放ったのだ。
「え?」
「二度は言わんぞ」
もう一体作るって、すなわち…。
「兄弟が出来るでございますか!?」
「人工生命体であるお前にそう表すのが正しいかは疑問じゃがそうじゃ。また考えるのは面倒じゃから、お主がデザインを考えろい」
「ブボ!?」
何気なく言われた言葉に、飲んでいた牛乳が逆流した。
「わ…私が考えて良いのでございますか!?」
「そうじゃ、御主を作る時は面倒臭くて仕方なかったからの」
まあ、名前を決めるのであれだけ悩んだマスターなら、一ヶ月くらい悩んだんじゃないかと想像する。
「それに、御主達二人で仕事をする事になるんじゃ。当事者である御主が考えた方が良いじゃろう」
マジか!私が新しい子を考えていいのか!?兄弟が出来る事も嬉しいが、容姿を私の理想どおりにして良いだなんて!
どうしよーかな。ウフフフフフ。男も良いけど女も良いよな。お兄様とか言われちゃったりして。いや、ヤンチャ系弟に兄貴と言われるのも中々…。
小さなスネ〇プ先生みたいなのに兄上とか言われたらデレデレしちゃうなー。
ウヒッ!ウヒヒヒヒ!
「コイツは時々、妙な不具合をおこすのぉ」
「キュー」
マスターとセンティーレがクッチャリクッチャリ、サンドイッチを食べながら半眼で私を見つめてくるが気にしない!
私は手を胸の前で組み、妄想の弟と妹の世界に旅だった。
「ウヒヒヒヒヒヒヒ」




