未来人の落とし物 その7
「ふぅ〜あっつ、いい加減この暑さにも耐えられんわ。ジュースでも飲んで涼むか」
友人に頼まれて荷物を届けに来たのだが、随分と入り組んでおり道に迷い、奥に隠れるようにあった自販機を見つけたので向かう。ジュースを買おうと自販機の品揃いを見ていると目が点になった。
「なんだこれ?一つも知らんぞ!」
自販機に並んでいる飲み物は見たことのないラベルの物ばかりで、もしかしたら一つのメーカーが出した自製品のみの自販機なのかもしれない。飲もうと思っていた飲み物がないのは残念だが、新しい発見が出来そうで、これはこれでワクワクして良い。
「う〜んとどれにしようか……あれ?」
商品を見ているとあることに気がつく。
並んでいる飲み物のラベルが全部赤い。
メーカーなりの何か狙いでもあるのか?
赤いと刺激的なイメージを感じる。
今はお茶かスポーツドリンク系が良いのだが。
「ふ〜ん…仕方ないこれにするか」
『リフレッシュレッド』
なんとなくだが、今の俺にはこれが良い気がする。
お金を入れて…あれ?
五百円玉を入れたら返却口から返ってきた。
あれ?もしかしたら新しい五百円玉に対応しないかと思ったら、自販機に書かれているお金表示が見慣れない物だった。丸じゃなくて三角、何か意味があるのか?
「お~いあんちゃん、そこの自販機は使わん方がええよ」
後ろから四十代くらいのおじさんを声をかけられた。
「え?どうしてですか?小銭も使えないんですよ。変わってますね。この自販機」
「んー…ここは特別な人用の自販機なんや、だからお金も特殊でな。一般に出回ってるお金は使えんよ」
「はぁ〜…そうなんですか」
スゲェーなんだよそれ、面白い。
なんとかして飲めないかな〜。
「あの〜すいません。今のどカラカラで、なんとかして飲みたいんですけど、おじさんなら買えますよね」
おじさんは少し嫌な顔をして、しぶしぶと言った感じで口を開いた。
「やめておけ、確かに俺は買えるが、あんちゃんには合わない。きっとかなり不味いぞ」
不味い?そんな物を売っているのか?
でも気になる。どんな味がするのだろう。
「そこをなんとか!お願いします。気になって気になって仕方ないんですよ」
私は頭を下げてお願いする。
「はぁ〜まぁ〜いいか、言っとくがあんちゃん、これは高くつくでぇ、ええな」
「あーもちろんだ!」
おじさんはポケットから数枚のメダルを取り出しすと自販機の投入口に入れボタンを押した。「ガタン」ジュースが買えた。おじさんはさっき私が買おうとした『リフレッシュレッド』を買ってくれた。
「あんちゃんここは暑いから家に来な、すぐそこやから、そこで飲ましてやるわい」
「あざぁス!」
私はウキウキでおじさんについて行く。
おじさんの家に着くと居間に通された。
「ほれ、飲んでみな。きっと不味いぞ〜」
テーブルの上に置かれたペットボトル、ラベルだけではなく中身も赤い。自分で飲みたいと言っておいて、いざ飲もうとすると勇気がいるな。蓋を開けて、口をつけた瞬間「マズっ」、思わず叫んでしまう。
「おいおい、この鉄臭い匂いに塩っぱさ……『血』…まさか血液が入っているのかよ!
「いや違うぞ、それは人工血液だ。少々塩っぱ過ぎてワシは好かん」
「ちょ!?おじさん何するんだよ!」
突然後ろからおじさんに羽交い締めにされた。
しかも凄い力だ。全然振りほどけない。
「ハァハァ…辛抱堪らん」
「え!?」首筋に痛みが走った。
「ジュル…ジュル…」
(…俺は一体何をされている?)
恐る恐る横を見るとおじさんが俺の首筋に
噛みついていた。
「ギャーー」
俺は大声で叫びながら暴れるがビクともしない。
おじさんは何の反応もせずひたすら俺の血を吸う。
私は徐々に意識が朦朧となり意識を失った。
「プッハー、やっぱり本物の血はうめぇーな〜。血が滾るって感じだ〜。悪いなあんちゃん我慢出来なくってな。あんちゃんは知らないだろうが、未来では人間は吸血鬼のような存在になってるんだよ。だが直接血を吸うことを禁止されている。まぁ〜過去なら監視はそこまでじゃないからな、美味しく頂かせて貰った。さて、このあんちゃんをどう処理するかな〜」
この地域には未来人が多く住んでいる。
理由は未来人による悪意にある過去改変を防ぐため。日夜おじさんは未来を守るために戦うが、こういったやらかしをしょっちゅうしている。
……………▽
「はぁ……うっ…からだダリ〜、なんでこんなところにいるんだ?」
男は見知らぬ公園のベンチで寝ていた。
異様に重い体を起こし、今日のことを思い出そうとするが、何も思い出せない。ただ一つ気がついたのは口の中が鉄臭い味がする。




