転生したら竹取物語の翁だった。なんか、かぐや姫が可愛くない上にめっちゃ蹴るんだけど!
竹取物語(かぐや姫)ベースの話です。
かぐや姫の話ふわっと知ってれば、多分読める(はず!)です。
気づいたら山の中で、斧を持って突っ立っていた。
え?おれ何してたっけ?飯食って昼寝して……それでなんで凶器持って立ってんの!?
それに体重いし——ってジジイになってる!?
うわしかもなんか竹光ってる!?
情報量多いって!
なにこの竹、中見ろってこと?
……嫌な予感がするなあ。
見ずに帰っていい?
っておうっと!
足を滑らせて、そのまま五歩ほど前につんのめった。
それによって嫌でも竹の中が見える。
バッチリ目が合った。
いやご都合主義がすぎるだろ。
光る竹の中には、10センチくらいの幼い女の子がちょこんと座っていた——が。
「今は平安時代で間違いありませんか?」
「竹に戻れ」
「では西暦何年ですか?」
「全然話聞かねえな!」
コイツ全然可愛くねえ!
「落ち着いてください」
「誰のせいだよ……」
この体、全然体力ねえな。
ちょっと突っ込んだだけで一気に疲れた。
「で、えーっとかぐや姫、で合ってる?」
「いいえ、私はなよ竹のかぐや姫。大事な部分が抜けていますよ」
そこ大事なんかい。
ほとんどの人が覚えてねえよ。
「えーっと、この後どうするの?おれ正直、君を連れて帰りたくないよ?」
「ひどい人ですね。こんな幼気な女の子を放置するのですか?」
自分で幼気とか言うなよ……。
いや、確かに幼気だけどさっ!
おれは根負けして連れて帰ることにした。
しかし重大な事実に気付いた。
「……なあ、かぐや姫」
「なよ竹のかぐや姫ですよ。どうかしましたか?」
「おれ、帰り方わかんないんだけど」
「はあっ!?何を言っているんですか!もうボケてるんですか!?」
しゃーないだろ、気づいたらここにいたんだから。
「仕方ありません、私が案内してあげましょう」
「助かる」
自分より他人の方が自分の家を知っているとは、これいかに……。
まあこのようにして、おれはかぐや姫と出会ったのだった。
◇◇◇◇◇
「まあまあ、可愛らしい子ねぇ」
「ありがとうございます。私、帰るあてがないんです。どうか育ててもらえませんか?」
「全然大丈夫よぉ」
とんとん拍子に話が進んでしまった。
ていうか、ばあさんや、10センチの人がいて、しかも喋ってることに突っ込んでくれ。
おれがおかしいかと思っちゃうだろ!
かぐや姫を、ばあさんはそれはもう可愛がった。
おかげでかぐや姫は、10日で15センチも身長が伸びた!
いやおかしいだろ!!
ばあさん、普通みたいな顔してるけど、異常だからね??
おれがおかしいんじゃないからね??
……あれか、そういやかぐや姫って3ヶ月くらいで大きくなるんだっけ。
子供の成長は早いなあ。
◇◇◇◇◇
なぜか竹から金がバンバン取れるので、貧乏から一転、人生イージーモードになったおれは、家を建て直した。
で、その家には今、男どもが大量に押しかけて来ていた。
借金取りじゃない。
おれのモテ期が来た——ってわけでも無くて、理由はもちろんかぐや姫だ。
しばらくは連日大盛況だったが、かぐや姫の塩対応によって大体の人は諦めた。
——そう、5人を除いて。
「「「「「私と結婚してください!」」」」」
「ならば、私の欲するものを持って来てください。あなたは『仏の御石の鉢』を、あなたは『蓬莱の玉の枝』、あなたは『火鼠の裘』、あなたは『龍の首の珠』、あなたは『燕の産んだ子安貝』……は死んじゃうんだっけ、うーん……まあいっか!無理はしないでくださいね」
全部聞こえてるぞ、かぐや姫よ。
てか原作知識あるんかい。
で、やっぱりこの難題をクリア出来た人はいなかった。
これでかぐや姫の周りは平穏になったかと思いきや——帝が来た。
「なんて美しい。連れて帰ろう」
なんでやねん。
おれが止める間もなく、帝はかぐや姫に近づく。
するとかぐや姫の体は光輝いて——
帝にドロップキックをかました!
なんでやねん!!
流石に帝は帰った。
だが、帝はかぐや姫にちょくちょく手紙を送ってくるようになった。
あれだけ拒否られてもめげないなんて……うん、すごいな。
帝は特殊性癖の持ち主かもしれない。
◇◇◇◇◇
なんやかんやで3年が経った。
最近、かぐや姫は月を見て愁いることが増えた。
これは……そろそろだな。
「母上、お話があります。実は私は月の都の者で、15日後には月に帰らねばならないのです」
「まあっ!」
やはりか……だがちょっと待て。
「かぐや姫、なんでおれにはお話がないんだ?」
「?だって父上は知っているでしょう?それと私はなよ竹のかぐや姫です」
いや知ってるけどさぁ。
やっぱ本人の口から聞きたいじゃん!
「ついにかあ。じゃあ帝を呼んで、準備して…」
「あ、帝は呼ばないでください。ウザいし、意味ないので」
……なんか、帝が可哀想になって来たわ。
そうして迎えた8月の十五夜。
おれはかぐや姫とばあさんと3人で、団子を食べながら月を見上げていた。
きれいだなぁ。
「なんか、締まらないですね……」
そう言うなって。
中秋の名月に月見しないでどうするよ。
「あ、来た」
見ると、月から雲に乗った一団が来ていた。
どうでもいいけどあれ落ちないのかな。
「造麻呂よ、出て参れ。少しお前が善行をしたからといって——」
うんうん、長い。要約プリーズ。
そういえば、かぐや姫ってなんの罪を犯したんだろう?
竹取物語では出てこなかったから、分からんな。
おれに話し終えた王っぽい人は、今度はかぐや姫に話しかける。
「さあかぐや姫。帰ろう」
「はい。でもその前に……」
おれの視界が潤む。
やっぱりいざ別れってなると寂しいなあ。
「私はっ!かぐや姫じゃなくて、なよ竹のかぐや姫ですっ!」
そう言ってかぐや姫は王っぽい人にドロップキックをかました。
は??
王は目を回してふらりと倒れた。
周りの天人たちが途端に騒ぎ始める。
「かぐや姫様!あなた様はまたこんなことを……!刑期は延長ですっ!反省なさい!」
そう言い捨てて天人たちは慌ただしく帰っていった。
は????
「というわけで」
かぐや姫はくるっと回ってこちらを向くと、いたずらっぽく笑った。
「刑期伸びちゃったので、もう少し置いてください」
「あ、ああ。ところで、月で犯した罪ってもしかして……」
「あ、はい。王を蹴っちゃいました。ムカつくと足が出ちゃうんです」
「そうか……」
少し鼻声になってしまった。
かぐや姫が顔を覗き込んでくる。
「あれ?もしかして寂しくて泣いちゃったんですか?あれれ??」
「……あたりめーだろうが」
かぐや姫は驚いたように目を丸くした。
その隙に、かぐや姫の頭をわしゃわしゃと撫でる。
ほんと。
かぐや姫のくせに全然可愛くねえ。
不満そうな顔で撫でられていたかぐや姫だったが、思い出したかのようにニヤッと笑った。
「まあ刑期延長なのでまた来るんですけどね」
おい!
今の終わる流れだっただろうが!
終わらせろよっ!!
お読みいただきありがとうございました!
一応原作と大きく変わったとこだけ言っときます。
ドロップキック→しません。原作はもっとお淑やかです。
刑期延長→ないです。原作かぐやはドロップキックしないので。




