第87話 豚姫への躾と巨乳メイドの嫉妬
俺の専属メイド、リーリアが、この国の王女であるエレノアに、容赦のない仕置きをした。
リーリアは、ただの平民のメイド。
その彼女が、王家の姫君に手を上げたのだ。本来であれば、打ち首どころでは済まされない、大罪である。
だが、この寝室では、それがまかり通る。
なぜなら、この閉ざされた空間においては――
この俺こそが、法そのものなのだから。
「お、王女であるこの私に……このような、屈辱的な仕打ちを……」
エレノアは、涙目でリーリアを睨みつける。
彼女は、メイドによる仕置きを内心では喜んでいた。
だが、その立場上、この無礼を許すわけにはいかない。
「王女様であろうと、この寝室ではただの女。一切の容赦はいたしません」
しかし、リーリアはその脅しに対して、一歩も引かなかった。
「くっ……」
エレノアは悔しそうにうめいた。
少し慰めてやるか――
俺は、豚をモチーフにしたセクシーな衣装に身を包んだエレノアを、その背後から、優しく抱きしめる。
「この部屋の中では、お前は王女でいる必要はない。ただ、素直に俺に従え」
エレノアは、すでに、俺の『専用奴隷』となっている。
いつの間にか、そうなっていた。
彼女自身に、その明確な自覚はないだろうが、俺の言葉は、まるで甘い毒のように、エレノアの心の奥深くまで、ゆっくりと、しかし、確実にしみこんでいく。
「そ、そんなことを、言われても……」
「可愛いぞ、エレノア」
俺のその言葉に、エレノアの顔が、林檎のように真っ赤に染まった。
「……ぅう」
彼女が、言葉に詰まった、その瞬間。
ばしぃいいいん!!!
「くあっ♡」
無言のエレノアに、再び、リーリアによる、愛の仕置きが入る。
「ご主人様に褒めていただいたのですから、もっと素直に、喜びの言葉を述べなさい」
……もしかして、リーリアは、ただ単に、エレノアに仕置きをしたいだけなのではないだろうか?
まあ、その気持ちは、分からなくもない。
「エレノア。お前、その姿で悲鳴を上げる時は、これからは、豚の鳴き声を出すようにしろ」
「そ、そんな、はしたない声、出せるわけがないだろう!」
「いいから、いってみろ」
「……くっ! ぶ、ぶひぃいい……っ、これで、いいのか?」
俺は、そんな健気なエレノアの頬に、褒美として、キスをしてやる。
「上手だ。やればできるじゃないか」
「ほ、褒められても、嬉しくなど、ない……っ」
ばしぃいいん!!!
その、あまりにも分かりやすいツンデレな返答に――
即座に、リーリアの三度目の仕置きが入った。
「ぶひぃいいい♡!!!!」
感心するほど、物覚えのいい王女様だ。
俺は、その見事な鳴き声に興奮しながらも、一方で、この忠実なる専用メイド・リーリアに対して、少しばかりの懸念を覚えていた。
(……こいつ、ちょっとばかり、お局キャラになってきたな。このまま放置するのは、少しマズいかもしれん)
リーリアが、こうしてキツく当たるのは、今のところ、エレノアに対してだけだ。だが、この傾向が、今後、セシリアやリゼルにまで拡大するかもしれん。それは、リーリア本人にとっても、決して良いことではないように思えた。
(……よし。少し、バランスを取るか)
「リーリア。少しやりすぎだ。そこの壁に手をついて、尻を突き出せ」
「はい、ご主人様」
リーリアは、俺の命令に、一切の疑問を挟まず、素直に従う。
「エレノア。次は、お前の番だ。この出過ぎた真似をしたメイドを、王女として厳しく叱ってやれ。威厳を持って――躾けてみせろ」
俺は、エレノアに、リーリアへの、お仕置きを命じる。
照明が絞られた寝室に、乾いた平手打ちの音と、リーリアの甘い悲鳴が、交互に響き渡った。
やがて、リーリアが、エレノアに向かって、深々と頭を下げて、謝罪した。
「……調子に乗っておりました。大変、申し訳ございません、エレノア様」
俺は、そんな、素直に謝ることができたリーリアを、優しく抱きしめる。
「素直に謝れて、偉いぞ。褒美だ」
彼女と、濃厚なキスをする。
「……私は別に、叩かれるのも、悪くはないのだが……」
エレノアは、少し残念そうに、そんな倒錯したことを呟いていた。
***
俺が、エレノアとリーリアの二人に、有意義な『しつけ』を終えた――
ちょうどそのタイミングで、部屋のドアが、コンコン、と控えめにノックされた。
「ご主人様。お客様が、いらっしゃっております」
俺のもう一人の専属メイド、ミナが来客を告げた。
その声は、いつも通り、明るく元気で朗らかだった。
「客か。リーリア、すぐに身だしなみを整えろ。エレノア、お前は、そのエロい格好から着替えて、俺についてこい」
俺は、二人にテキパキと指示を出す。
リーリアは急いで部屋の鏡を覗き込み、わずかに乱れていた衣服を完璧に整え始めた。俺は、ミナと共にエレノアの着替えを手伝ってやる。
男に着替えを手伝われ、エレノアは羞恥で顔を赤らめ、視線を泳がせている。
そしてその様子に、リーリアがまたしても、底冷えするような嫉妬のまなざしを向けていた。
着替えと身づくろいが完全に済んでから、俺たちは四人で応接間へと向かった。
王女であるエレノアがいた方が、何かと箔が付くだろう。
せっかく見舞いに来てくれたのだ。
――存分に、利用させてもらおう。
本来であれば、彼女が俺と共に来客に会う必要など、まったくなかった。
だが、寝室でのあの秘め事(王女とメイドの躾け)の後で――
エレノアも少しばかり、思考が混乱していたのかもしれない。
「……貴様の交友関係を、この目で把握しておきたいしな。そう、監視するために、だ」
途中で、自分が来る必要のないことに気づいたのだろう。
エレノアは、言い訳のように、そんなことを呟いていた。
「それで、ミナ。客というのは、どこのどなただ?」
俺の問いかけに、ミナが元気よく――
しかし、メイドとして控えめな声量で答える。
「はい。リリアーナ姫様の護衛騎士、セレナ・クリスタルライト様です」
――ふむ、彼女か。
今日の訪問予定は、エレノアだけのはずだった。
俺を爆殺しようとした、あのお姫様の護衛騎士が――
一体、何の用だろうか?
俺は、わずかに眉をひそめた。




