桃太郎20xxⅠ
今、今たくさんのマンションや店が立ち並ぶ都会の一角に、おばあさんとおじいさんが住んでいました。
少し古びたアパートのくせして、駅が近いからという理由で物価が非常に高いです。
土地代も含めると、田舎の一軒家を2件くらい買ってこい!と言いたくなるほど高い値段です。
「じいさん。最近の米騒動や、物価高はもう見てらんないなー。」
「そうだなばあさん。子供はほしかったが、もう出産費や子育て費用も高いし、保育園も近くに少ないからあきらめたんだっけなぁ。米は20の頃からずっと同じ値段で買うって契約してたところからもらってるんだよな。あの時思い切って契約しておいてよかったのぉばあさん。」
「あの時は少し高かったけど今見てみるとわしら絶対得してるよのー。そうだ爺さん。今日は近くのスーパーでももの特売デーがあるんじゃ。ちょっと言って来てもいいかい?」
「あぁももか。昔の値段と特売の値段はあまりかわらんのー。昔に戻りたい。だけど最近フルーツ系が高すぎて食べてなかったからちょうどいいなぁ。わしは運動代わりにつーばーうーつで稼いでくるぞ。」
「ありゃこれはまた巨大なももだのぉ。しかも規格外で訳ありだから売れ残っとるのか…。よぉし爺さんをびっくりさせましょうか。」
「はーはぁーこの年で自転車運搬は流石にきつかったかのぉ。次で3件目じゃ。5件やったら家に帰って桃をおいしくいただこう…。」
「爺さん!この巨大な桃をおいしくいただこう…」
「ばあさん!すごいなぁ…絶対おいしいぞ…」
「でもアパートだからドアが狭すぎてはいらないのよ、爺さん…」
「じゃぁもう廊下で切るしかないのぉ。」
「お待ち爺さん!廊下はもうわしらの場所じゃない!ゆえに銃刀法違反に反映される可能性があるのじゃ!」
「ではわしの昔習っていた空手の板わりの技術をばあさんに初披露じゃ。」
パか
「爺さん…見えなかったが確かに割れたぞ…桃…」
「本当じゃ…そして赤ん坊が入っているぞ…死体放棄罪じゃな。わしらまで疑われてしまう…。」
「違うんじゃ、爺さん。この赤ん坊はまだ生きておる。多分わしらに神様が赤ん坊をくれたんじゃ。」
「防犯カメラは近くにあるのかばあさん…。」
「このアパートは高い上にセキュリティーも甘い。防犯カメラは…なしじゃ。」
「周りの偽桃を廃棄してから面倒を見るとするか…ばあさんは赤ん坊世話を頼んだぞ。」
「待ってくれ爺さん。その前に名前を付けてあげたらどうじゃ。」
「ふむ…名前か…」
『桃から生まれたから…高野原(爺さんたちの苗字)桃太郎。』
「同時じゃったな。じゃぁもう決定でいいかばあさん。」
「決定でいいと思うぞ爺さん。どうしたものか…出産届は必要なのか…。」
「全部なしでいいんじゃ。全部なしで。学校も。わしらですべて育ててみよう。」
「…違法爺さん…じゃがそうじゃな。わしもそうすることにする。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー7年後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「助けてくれ爺さんばあさん!!」
「何事じゃ甥っ子の末吉太郎。」
「俺の働く『超ウルトラキング株式会社』がブラック企業すぎるんだ!人事部に訴えてもろくに返事が来ない…かといって警察に話したくない。どうか頼む。法に詳しいばあさんじいさん!俺の会社を生まれ変わらせるか崩壊させてくれ!」
「桃太郎、お前はできるかのぉ?」
「じいさんも81歳だからだいぶおいてきたのぉ…ま、わしもたいして変わらないがの。」
「ボク、できるよ!お給料はいくら?ちゃんと働きに合った報酬を出してね!あと夜間は外出してはいけないから行かないよ。でもそれ以外の法は忘れちゃった…」
「はいはい。これからそこら辺にいる動物を手なずける黍団子を作ってあげましょう。少し待っててくださいね。」
とんとんカチャカチャズンズンバシバシ
「これは栄養価の完璧な黍団子なのよ。カロリーも抑えながら、炭水化物・たんぱく質・脂質の他、それらの吸収や代謝をサポートするビタミン・ミネラルと言った五大栄養素をバランス良く摂ることができる優れモノなの…。動物でも食べられるようにはしてあるから安心するんじゃ。」
「僕も食べるー!」
「あぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「そっそれを食べてしまったら…動物の声が聞こえるようになってしまうんじゃぞ…。」
手遅れ
「ボク明日になったら行くね。リュックと水筒と、帽子と虫よけスプレーとアイスリングと…動きやすい服と…gpsとポケットWi-Fiとスマートフォンを用意しておいてね。」
「わかったぞ桃太郎。」
「たっ助かります桃太郎君、じいさんとばあさんもありがとうございます!」