控室トーク:歴史の味、未来の一杯
(舞台裏の控室。木目調の温かい照明が灯るリラックス空間。
中央には、4人の対談者それぞれが用意した料理や飲み物が並ぶ長テーブル。香りが立ちのぼり、目にも鮮やか)
(ケインズはワインを注ぎ、ハイエクは紅茶を丁寧に淹れ、渋沢は湯呑みを手に、安倍はにこやかに割り箸を割っている)
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◆ 安倍晋三のお勧め:山口県の「瓦そば」と「獺祭スパークリング」
安倍晋三
「皆さん、よろしければ、私の故郷・山口の“瓦そば”、ぜひご賞味ください。
そしてこちらは、近年海外でも人気の“獺祭スパークリング”――冷やしてありますよ。」
ケインズ(瓦そばの香ばしい香りに顔をほころばせ)
「瓦で焼いた蕎麦……これは初体験だ。君の経済政策と同じく、なかなか“異次元”の調理法じゃないか。」
ハイエク(慎重に一口)
「……意外と……香ばしさと甘辛いタレが、心地よく調和している。介入の妙、というべきか。」
渋沢(満足げに頷きながら)
「食の地域性は、まさに経済そのものですな。これは“ふるさとの誇り”の味がいたします。」
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◆ ケインズのお勧め:イギリスの「ローストビーフ&ヨークシャープディング」と赤ワイン
ケインズ(手を広げて)
「さあ、英国紳士としての面目躍如といこう。
こちらはローストビーフに、伝統のヨークシャープディング。赤ワインはオックスフォード時代の贔屓のセレクションから。」
安倍(フォークを手に取りながら)
「見た目より遥かにジューシーですね、これは……おいしい。赤ワインともよく合います。」
ハイエク(目を細めて)
「英国料理というと、あまり期待されないが……これは上品な重みを持っている。
まるで君の“財政政策”のようだな――重厚にして、意外と繊細だ。」
ケインズ(満足げに)
「それは褒め言葉として、ありがたくいただいておこう。」
渋沢
「ヨークシャープディング……名前から想像できない味わい。これは、予想を裏切る幸福ですな。」
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◆ ハイエクのお勧め:オーストリア風「アプフェルシュトゥルーデル」とウィーン風紅茶
ハイエク(丁寧にナイフで切り分けながら)
「私からは、オーストリア伝統の“アプフェルシュトゥルーデル”を。
サクサクのパイにリンゴとナッツ、ラム酒が香ります。飲み物は、ほんのりレモンを効かせたウィーン風の紅茶です。」
ケインズ(口にしてすぐ)
「これは……予想外の甘さと酸味のバランス!いや、君にこんなセンスがあるとは。」
ハイエク(小さく笑って)
「私は“構造”を重んじるが、甘さの構成には多少、柔軟性が必要だ。」
安倍
「繊細な味ですね。表面はパリッとしてるのに、中身は優しい。これはクセになりますよ。」
渋沢(紅茶を一口)
「……ふむ。レモンがほんの少し効いていて、余韻が広がる。これは……“慎ましやかな自由”の味ですな。」
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◆ 渋沢栄一のお勧め:「粕漬け銀鱈」と「静岡の煎茶」
渋沢(お盆の上に丁寧に並べて)
「私は、日本橋の老舗から取り寄せた“銀鱈の粕漬け”を。味の濃淡、そして酒粕の香りをお楽しみください。
合わせるのは、静岡産の煎茶です。」
安倍(感激したように)
「……これは……まさに“日本の心”ですね。じんわり染みます。」
ケインズ(驚いた表情)
「これは、“素材”そのものの説得力……私の理論とは真逆だが、素晴らしい。むしろ、口の中で説得されるようだ。」
ハイエク(頷きながら)
「この控えめな美しさ。“余計な装飾をせず、信に委ねる”――まさに経済の理想だ。」
渋沢(微笑んで)
「恐れ入ります。ただ、魚が語るのは、私ではなく“職人の誠”です。私はそれを選んだだけにすぎません。」
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(4人がそれぞれの皿を取り、自由に食べながらくつろいだ空気が広がる)
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◆ 和やかな会話
安倍
「こうしてみると……経済も料理も、やっぱり“誰のためにあるか”が問われますね。」
ケインズ
「そのとおり。そして、“誰がどう分けるか”もね。」
ハイエク
「公平に分けるのではなく、“自ら選べること”が自由を育てる。料理も政策も。」
渋沢
「……でも、選ぶ前に、“まずそこに席があること”が大切なのです。」
(全員、しばし黙ってうなずく)
あすか(控室のドアから顔を出して)
「みなさん、そろそろお時間ですよー!
でも……うわ、おいしそう!私、残り食べていいですか?」
安倍(笑って)
「ぜひ、瓦そばは締めにも最高ですよ。」
ケインズ
「デザートは譲らんぞ。」
ハイエク(淡々と)
「茶は、まだ淹れたてです。」
渋沢
「お若い方こそ、しっかり召し上がっていただきたい。」
(あすか、満面の笑みでうなずきながら控室へ。静かで温かな笑いが広がる)
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──知を戦わせた者たちが、食を囲んで心を通わせる。
アベノミクスをめぐる論戦の余韻の中で、語られるのは“人と人のぬくもり”だった。──