オープニング:静かなる討論のはじまり
(スタジオ内、シックで落ち着いた照明の中、コの字型のテーブルが中央に。背景には金色に輝くタイトル《歴史バトルロワイヤル》。中央には、知的な雰囲気をたたえた20代の女性司会者、あすかが立っている。黒のパンツスーツに、さりげない赤いスカーフがポイント)
あすか(にこやかに)
「ようこそ、時代を越えた知の格闘技《歴史バトルロワイヤル》へ!
本日のテーマは、ずばり――『アベノミクスを考える』!」
(観客席から軽く拍手。テーブルを囲む4人の対談者にスポットライトが順にあたる)
あすか
「“異次元”の三本の矢。大胆な金融緩和、機動的な財政出動、そして成長戦略――。その矢が的を射たのか、外れたのか。ここに集う4人の賢人が、真剣に語り合ってくださいます!」
あすか(少し身を乗り出して)
「ではさっそく、時空を超えた対談者たちをご紹介します。
まずはこの方!現代日本で経済政策に風穴を開けた、21世紀の大将軍――安倍晋三さん!」
安倍晋三(微笑みながら軽く会釈)
「ありがとうございます。自分の政策について、ここまで豪華な面々と語り合えるとは、光栄です。」
あすか(ウィンクして)
「お手柔らかにお願いしたいところですけど……この番組、“手加減”って言葉を辞書から削除したらしいですよ?」
安倍(苦笑しつつ)
「それは心して臨まねばなりませんね。」
あすか
「続きまして、世界恐慌に立ち向かった経済の魔術師。理論と現実をつなぐ男、ジョン・メイナード・ケインズ!」
ケインズ(椅子に片肘を乗せつつ、少し皮肉っぽく)
「“魔術師”というのは褒め言葉ですね?ああ、安心しました。ニュートンを魔術師と呼んで炎上していた時期がありましてね。」
あすか(すかさずツッコミ)
「それ、自ら言います? でも今日の魔法は、どうか数字と論理の範囲でお願いします!」
ケインズ(楽しげに)
「任せてください。お札は出せませんが、言葉の錬金術ならいくらでも。」
あすか
「お次は、その魔術に最も厳しくツッコミを入れていたお方。市場の自律こそ至高、秩序の哲人――フリードリヒ・ハイエク!」
ハイエク(眉をひそめつつも、冷静な口調)
「“哲人”という呼び名は過大評価でしょう。ただし、今日も一切の妥協はいたしません。」
ケインズ(にやりと笑って)
「君が柔らかくなる日が来たら、きっと雪が逆に空へ降るだろうね。」
ハイエク(冷静に)
「そのような天候変化は、中央銀行が起こす可能性もあるので注意が必要ですね。」
あすか(小声で)
「お二人、すでにラウンド1が始まってます……!」
(場が和み、観客席から笑いが漏れる)
あすか
「さて最後にご登場いただくのは、日本近代経済の礎を築いた“論語と算盤”の達人。道徳と資本の両立を説いた男――渋沢栄一さん!」
渋沢(穏やかに一礼)
「このような場で、近代と現代の架け橋になれれば光栄です。」
あすか
「今日も“お金の話なのに、心が温かくなる”という奇跡を見せてくださいね!」
渋沢(微笑む)
「それが叶うならば、まさに本望です。」
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(カメラがコの字型のテーブルを上から映す。安倍晋三とケインズが向かい合い、渋沢とハイエクがそれぞれ隣に座る)
あすか
「では、ここで皆さまにお聞きします。アベノミクス――あなたはどう評価されますか?」
(対談者が順番に応じる)
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安倍晋三
「三本の矢は、長いデフレから抜け出すための“突破口”でした。景気は回復し、雇用も改善しました。もちろん、道半ばの課題もありましたが、“挑戦した”という事実こそが、最も重要だったと私は思っています。」
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ケインズ
「私は、評価は“まずまず”といったところでしょうか。
財政出動を恐れなかった点は賞賛に値します。しかし、金融緩和に過剰に頼ったのは、やや片手落ちだったかもしれませんね。
“期待”というものは、中央銀行のマジックだけでは持続しません。」
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ハイエク
「市場のメカニズムを無視すれば、いかなる矢も、やがて自らを貫きます。
私は、金融緩和が経済を歪め、中長期的な調整を困難にしたと考えています。“異次元”という言葉に、私は戦慄しました。」
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渋沢栄一
「私は、政策そのものよりも、その“思想”と“実行の姿勢”を重んじます。
アベノミクスが掲げた“挑戦”という言葉――それ自体は、停滞の時代に光をもたらしたでしょう。ただ、経済が人を置き去りにしてはなりません。倫理と共に進む成長でなければ。」
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あすか(ゆっくりと一息ついて)
「ありがとうございます。それぞれの時代、それぞれの信念から発せられる言葉の重み――早くも熱気が漂っております。
ではいよいよ、《第一ラウンド》へと参りましょう。
本日の火ぶたが、今、切って落とされます――!」
(スタジオが一瞬暗転し、赤く光るタイトル《Round 1:金融緩和は“魔法の杖”か“毒薬”か?》が表示される)