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突然の嬉しい申し出・前編

 翌日、ブレデローデ公爵城にて。

 リーフェは行儀見習い用に用意してもらった自室にいた。


 ブレデローデ公爵家は行儀見習い一人一人に部屋を与えているのだ。


(ディルク様からいただいたネックレス……)

 リーフェは首に着けたシンプルで上品なジェードのネックレスにそっと触れ、その後服の中に隠した。

 赤茶色の髪にはディルクから贈られた菫とルビーの髪飾り。


 脳裏に浮かぶのはディルクの笑顔。

 ジェードの目は真っ直ぐリーフェを見つめていた。


(やっぱり私、ディルク様のことが好きだわ)

 リーフェは胸に手を当てて、改めて自分の気持ちを実感した。

(ディルク様は子爵令息。私は男爵家の娘。お互い下級貴族だから許される。でも、ディルク様はブレデローデ公爵家に連なるお方。彼と釣り合うよう、私も努力をしないと)

 リーフェはそう決意した。


 それ以降、リーフェは行儀見習いとしての仕事だけでなくマナーレッスンにも更に力を入れ始めた。

 イェニフィルからは、立ち居振る舞いを褒められることが多くなった。その際「恋の力かしら?」と悪戯っぽい表情で言われ、リーフェの頬はポンと赤く染まった。


 そしてアールセン商会とブレデローデ商会の共同事業の件もお互いの親に話を通しておいたので、スムーズに進みつつあった。






♚ ♕ ♛ ♔ ♚ ♕ ♛ ♔






 そんなある日。

 ブレデローデ公爵家から休みをもらったリーフェはアールセン男爵家の両親と会うことになっていた。

 両親はアールセン男爵家の馬車でリーフェをブレデローデ公爵城まで迎えに来てくれたのだ。


 アールセン男爵領とブレデローデ公爵領はそこそこ近いので、馬車があれば半日で行くことが可能である。

 

 リーフェはその馬車に乗る。

「リーフェ、突然済まないね」

 申し訳なさそうに笑うのは、リーフェの父サンデル。

「本当に突然のことで私も驚いてしまったのよ。せっかくだから、リーサンネも連れて行きたかったのだけれど、アールセン男爵家に婿入りするご婚約者の方と用事があってね」

 そうニコニコと笑うのは、リーフェの母ヤコミナ。


 リーサンネはリーフェの姉のことで、ヤコミナは用事のある彼女連れて来られないことを残念がっていた。


「お母様、突然のこととは?」

 リーフェはきょとんと首を傾げる。

「リーフェ、お前にとっても良い話だ」

「良い話……? お父様、何でしょう? というか、どこに向かってるいるのです?」

 ヤコミナ同様明るい表情のサンデルに、ますますリーフェは何の話か検討がつかなくなる。おまけにリーフェは行き先を知らされていないのだ。


 そうしているうちに、馬車はどんどん進んでいつの間にか立派な邸宅に到着していた。

(ここはどこなのかしら? 大きな邸宅だわ)

 馬車から降りたリーフェは、目の前の邸宅を見上げてヘーゼルの目を丸くしていた。


 ブレデローデ公爵城の三分の一程度の大きさだが、リーフェにとってはそれでもかなり大きい。

 アールセン男爵邸の倍以上ある邸宅だ。


 邸宅の使用人がリーフェ達を中の客室に案内してくれた。


 格調高い家具に囲まれた部屋なので、リーフェは思わず身構えしてしまう。

(ブレデローデ公爵城も上質な家具、家財がたくさんあるけれど、このお部屋も負けていないわね)

 最近はブレデローデ公爵城に住み込みで行儀見習いをしているので、上質な空間に少しは慣れたと思っていたリーフェ。しかし、いざそれらを前にするとやはり緊張してしまうのであった。

 その時、扉がノックされた。

「ようこそ、ブレデローデ子爵邸へ」

「お待ちしておりました」

 朗らかな表情を浮かべた男性と女性がリーフェ達のいる客室に入って来た。

 彼らの後ろには何とディルクもいる。

(え……!? ブレデローデ子爵邸!? それに、ディルク様も……!)

 リーフェはヘーゼルの目を零れ落ちそうなくらいに大きく見開いていた。


 リーフェは今自分がどこにいるのかを初めて理解した。

 そして入って来た男性も女性はブレデローデ子爵家当主と子爵夫人、つまりディルクの両親である。


 リーフェは緊張しつつもカーテシーで礼を()る。

「これはご丁寧に。楽にしてください」

 頭上から朗らかな男性の声が降って来たので、リーフェはゆっくりと体勢を戻す。

「お初にお目にかかります。アールセン男爵家次女、リーフェ・ヤコミナ・ファン・アールセンと申します。商会同士の共同事業の件で、両親がお世話になっております。また、ディルク様には良くしていただいております」

 リーフェは緊張しながらも、品良く微笑んだ。

「初めまして。ブレデローデ子爵家当主でディルクの父、ヴェッセルです。こちらは私の妻、ハブリエレ」

「初めまして、リーフェ嬢。ハブリエレです」

 ディルクの父ヴェッセルと母ハブリエレは優しく品の良い笑みを浮かべていた。

 リーフェはヘーゼルの目をディルクと彼の両親に交互に向ける。

 やはり親子ということで、顔立ちは似ていた。

 ディルクは全体的に父親似だが、眉の形は母親そっくりである。


 何も知らされずブレデローデ子爵邸に連れて来られたリーフェ。

 一体何があるのだろうと緊張していた。

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ん? 良い話です……よね? あれ? 大丈夫ですよね?(心配
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