EP5〜僕の師匠はヴァンパイヤ〜
トトロ町を出発し、一ヶ月がたった。ブロウ町まであと一週間以内には到着すると、リリスさんは言っていた。
「それにしても、本当に速いですね。リリスさん」
「まぁな、だが俺様なんかまだまだだ。世界には俺様より強い奴がゴロゴロいる」
リッキーもその1人だろうか?
「リリスさん、もしリッキー・グランド・ケーキと戦ったら勝てますか?」
「…無理だな」
「そうですか…」
リリスさんでも勝てない相手か、正直どんなに頑張っても勝てる気がしない。
「なんだ、ステイはリッキーに勝ちたいのか?」
「は、はい」
「ハハハハッ!」
「無理だと思いますか?」
「いや、無理とは言わない。だが勝てるようなるためには正攻法では絶対無理だな。おっ、そろそろだぞ」
「何がですか?」
「ステイ、クレン着いたぞ。ここがブロウ町だ」
「え?あと一週間位かかるんじゃないんですか?」
「一週間は大体だ、まぁ早めに着いたんだからいいだろ」
「は、はい。ありがとうございました」
これだから長命種は。
「ちなみにお前らはなんでこの町に来たんだ?」
「それはですね、ジケイ会館のステゴロ部に用事があるんです」
「まじか、俺様もそこに用があるんだ」
「本当ですか!ちなみに場所わかります?」
「もちろん、あそこだ」
リリスさんが指を指した場所は、空だった。
「どうゆうこと?」
「あのでかい山の頂上ってことだ」
気が遠くなってきた。
僕は今、クレンと一緒に山を登っている。リリスさんは依頼が終わったので、「先に行ってる」と言い残し飛んで行ってしまった。
「クレン、大丈夫か?」
「もう、無理。そろそろ休憩」
「そうだな」
山を登り初めて2時間、頂上はまだまだだ。2人とも体力が無さすぎる、クレンはもう限界に近い。
山を登り初めて、4日がたった。今日は1日休みをとることにした。
「ステイ、お腹減ったー。あったかい物が食べたい」
「おう、ちょっとまってろ」
「それにしてもここは寒いわね」
「そうだな、上に行くほど寒くなってるな」
「ブエックション!」
「大丈夫かクレン、寝ててもいいぞ」
「大丈夫よ」
次の日。
「クレン、起きてるか?」
「ええ、おはよう」
「1時間後に出発する。いけるか?」
「わかったわ」
「朝飯何がいい?」
「アヒージョがいい」
「ごめん油はもう火の燃料用にしかないんだ」
「じゃあ、ピクルスでいいわ」
「そこのバックに入ってるよ」
「やっぱ、朝はピクルスにかぎるわよね」
「丸々食うやつ初めて見たわ」
今更だが、クレンは味覚がバグっているのだろか?
1時間後。
この山は幸いなことに魔物が少ない。
「ステイ、あれ頂上かしら?」
「ああ頂上だ、クレン」
「やったわね」
「あぁ、それにしてもなんでこんなとこにステゴロ部があるんだ?」
「知らないわよ。どうせ体を鍛えるとかでしょ」
「じゃあまたこの山登るのかな?」
「そうじゃない?頑張ってね」
「クレンはやらないのか?」
「私はサポート役として頑張るわ」
クレンがサポートか、不安だ。
僕たちはようやく頂上に着いた、着いた時にはもう日がくれていた。
「やっと…ついたわ」
「あぁ、やっとだな」
すると、近くの宿からリリスさんが出てきた。
「よう、ステイ、クレンようやくきたな師匠も会いたがってたぜ」
「師匠?」
「そうだ、ここのステゴロ部の館長は俺様の師匠だ」
「リリスさんの師匠ですか、とても強いんでしょうね」
「そりゃそうだ、お前たちじゃ死ぬまで勝てねぇよ」
「修行させて貰うのは僕だけです」
「そうか、じゃあ早速案内するぜ」
「お願いします」
リリスさんは二時間歩いた所にある小さな道場に案内してくれた。
「ここだ」
「案外小さいんですね」
「まぁな、基本的に修行は外でやるからな」
「なるほど」
「ちょっと待ってろ、師匠を起こして来る」
「はい、わかりました」
起こしてくるとはどうゆうことだろう?
5分後。
「お待たせしたかな、二人とも」
道場の奥から着物を着た妙にヒョロ長い男の人が出てきた。
「初めまして、ステゴロ部に入部する為にきました。ステイ・セントと申します。よろしくお願いします」
「私はステイのサポートとしてきました。クレンと言います、よろしくお願いしますわ」
「よろしくね、ステイくん。クレンくん。早速だがステイくん、中に入って1度手合わせしてみよう」
「わ、わかりました」
いきなり手合わせか、でもまぁわかりやすいか。
それにしてもこの人は大丈夫なのだろか、肌は青白く、肋骨が浮き出ている。一見ただの病人にしか見えない。正直8歳の僕でも勝てそうだ。
「私が弱そうに見えるかい?」
「…は、はい正直」
「大丈夫だ、思いっきりおいで」
「わかりました、思いっきりいかせてもらいます」
「リリス掛け声を頼む」
「おう、それじゃあいくぜ…………『始め!』」
『始め』の合図とともに僕は殴り掛かるため走り出した、その時だった。
メリッモリモリという音があの人の体から鳴り始めたのだ。
「な、なんだあれ」
今にも倒れそうな体は湯気を出し始め、筋肉は膨張し、太い血管が全身に浮かび上がってきた。
「来ないなら、私からいくぞ」
先程の様な優しい声は聞こえず、鼓膜が受け取った声は全身に渡り動けなくなっていた。
「あ、」
僕の記憶はそこで途絶えた。
「リリスさん、ステイが起きたわよ」
「おお、顎は大丈夫かステイ」
顎?本当だ顎が痛む。見えなかったが、あの時殴られたのだろうか。
「ステイくん立てるかね?」
「は、はい」
「自己紹介がまだだったね、私は最後のヴァンパイヤ族のキリコ・ブロード・ケーキだ、これからよろしく」
「ケーキ…もしかしてリッキーの……リッキー・グランド・ケーキの親戚ですか?」
「ああそうだよ、リッキーについてなにか聞きたいことでも?」
「いや、なんでもないです」
「そうですか、では今日はもう休んでいい。明日から本格的に修行を始めます」
「あ、あの僕とリリスさん以外に弟子とかは?」
「いませんよ」
「え?」
「今どき素手で戦う人は極小数ですからね、リリスのような変わり者と、私の様な呪われた者ぐらいじゃないですかな」
「呪われた物?」
「ええ、私は昔に『武器を持てなくなる呪い』をかけられたんですよ」
「そうゆうことなんですね」
この世界には呪いがあるのか。
「はい、他に質問は?」
「とくには」
「そうですか、ではまた明日」
「はい、また明日」
出会ったキリコさんはリッキーの親戚だった。だが今は関係ない、強くなるだけだ。
「よし、死ぬ気で頑張ろう」
この時は本気でそう思っていた。