外伝(其のニ)慟哭
俺が出所して2年、親父が死んだ。
俺は親父の遺言どうり『フーディーニ』の組長と成るはずだった。
だが。
「おい!ネルソン!てめぇが組の頭になったって本当なのか!?」
俺が遠方の仕事に行っている最中にネルソンが組長になっていた。
「あぁ」
「ふざけんなっ!!!」
ドゴォッ
俺はネルソンの顔面をぶん殴った。
「……………お前は不安定だ」
「あぁ!?何言ってんだてめぇ!?今からでもいいから盃返せや!!」
「無理だ」
「てめぇこの…」
俺はもう一発顔面を殴ろうとしたが、
「ネム!お前いい加減にしろ!」
ドシャ!
逆に殴られてしまった。
「さっきも言っただろう!確かにお前は優秀だ!だがお前は昔っから大事な場面でミスして組にどんだけ迷惑かけたと思ってる!!!?」
「………っ」
確かにそういうネルソンの指は全部揃っている。
「………まぁ、親父の意思を完全に無視するわけじゃねぇ…………お前は俺の下で働いてもらう」
「ざっけんな、誰がお前の下つくって?だったら死んだ方がましだ!ボケェ!!」
「……………そうか、残念だ。…だったら今後お前は勝手に動いて構わない。だが失敗しても誰もケツは拭いたからねぇからな」
「ハッ。元々お前なんかに拭いてもらうケツなんてねぇんだよ」
ネルソンとは同期で長年この組に勤めてきた親友でありアイバルでもあった。だからこそ俺はこいつに上を行かれたく無かったし同じ立場で接していたかった。
「クソがっ」
「…………………私だよ」
俺がこの時素直にネルソンの下についていればあんなことにはならなかったのだろう。
その日の夜、俺はグラミーとラビットと一緒にバッセンに来ていた。
「ネムの親父、今回の事は残念でしたね」
カキィン
「……………親父じゃねぇ」
カキィン
「俺の中ではあんたは親父でさぁ」
カキィン
「…………そうか」
カキィン
「そうですよ!ネルソンぐらいネムの兄貴ならすぐ越せますって」
ゴテッ
「ネムの親父、ドレー先輩は今日どうしたんすか?」
カキィン
「あいつは今仕事だ」
ゴスッ
「へー。ドレー先輩って単独での仕事あるんですね!」
ゴテッ
「仕事っつても港のコンテナにチャカ運ぶだけだけどな」
カキィン
「それにしては少し遅くないですか?」
ゴテッ
「………そうだな」
カキィンー!
「電話してみたらどうです?」
カキィン
「……………いや、大丈夫だろ」
ゴテッ
「そうすか…………ネムの親父はこの後どうするですか?」
カキィン
「………帰って寝る」
ゴテッ
「ネムの兄貴!だったら俺ん家来ませんか!?」
カキィン
「………潰れるまでは飲まんからな」
ゴロ
「…わかりました!」
カキィンー!
「おぉ!」
グラミーの打球がホームランの板を弾いた。
「おっえー!、オロロロロロロロロロ」
グラミーが便器にゲロった。
「結局こうなるのか……」
「たてますか?グラミー先輩」
「………………むりー」
「はぁ……………ネムの親父、どうしますかこいつ」
「……放置しておけ」
「はい」
「ブクブクブク……」
「おいおい!便器で溺れたら流石に可哀想だ」
「ブハッ!」
「あっ起きた」
「ラビット、やっぱ寝かしておいてやってくれ」
「わかりやした」
ゴロンっ
それにしても、一向にドレーから連絡が来ない。ドレーはこんな時間まで何やってんだ?
俺は結局、心配になったので電話をかけてみた。
プルルルル、プルルルル、プルルルル………
「でねぇ」
仕方ない、家の方にかけてみるか。
プルルルル、プルルルル、プルルッ
『もしもしー』
聞こえて来たのは女の声だった。
『………お久しぶりです、グレイさん』
この人は「ルイ・グレイ」ドレーの嫁さんだ。
『あらー、もしかしてネムちゃん?』
『はいそうです』
『どうしたの?こんな時間に?』
『それがですね、ドレーに連絡がつかなくてですね。もう家に帰ってたりしてますか?』
『ええ、夫ならもう帰って来て子供と一緒に寝てますよ』
なんだ、ドレーの奴もう帰っていたのか。
『そうなんですか、すいません夜遅くに』
『いいのよー、それよりまたラビットちゃんと子供に会いに来てもらえるかしら?あの子たち「会いたい」って毎日言ってるのよ』
『えぇ、時間が空いた時にまたお伺いします』
『ありがと、よろしくね』
『じゃあ………』
『はーい』
プツッ
結局ドレーは家に帰っていただけであった。
「なぁ、ラビット」
「なんです?」
「来週末って休みだよな?」
「……はい」
「またドレーん家行かないか?」
「いいっすよ、来週の週末っすね」
「おう」
…………………次の日の夕方、ドレーの家で「ルイ・グレイ」とその子供2人の遺体が見つかり、夫の「ドレー・グレイ」は道端に死体となっているのを発見された。
いずれの死体も複数の箇所に銃で撃たれた痕跡がありで即死だったという。さらに母子の体には暴行された痕跡があり、犯人は男ということしかわかっていない。




