EP8〜げ〜
後に聞いたのだがキル・ベイビーが脳天を狙撃されても死ななかったのは彼に脳がなかったからである。キル・ベイビーは昔事故にあい植物状態になったのだが近年の技術の発達により脳の代わりとなる小型インプラントを心臓の近くに移植していたのだ。
そして今更だがインプラントは魔力で動いている。インプラントは誰でも手軽に装着でき、強くなれるためインプラントの普及が増えるのと反比例して魔法を使う人が年々少なくなっている。
今の時代魔法は死語になっており魔法を使うのは1000年以上生きているエルフと俺らくらいだ。ちなみにジュースが魔法を使えるのは俺が教えたからだ。
俺たちは「ヘルドックズ」の事務所の一室にいた。
「ここにも居ないな…………」
「……………そうだな」
「地下に行こう」
「なんでだ?」
「こういう時は大体地下に居るもんだ」
父がそうであったように。
「わかった。ドレー、ラビット、俺とステイは引き続きこのフロアを調べるからお前たちは下に行って地下を探してきてくれ」
「了解でさぁ」
「何かあったらすぐ連絡します」
「あぁ」
2人が部屋から出て行った。
するとネムさんが部屋の角に俺を詰めてきた。
「おいステイ、俺たち友達だよな」
「…………あ…あぁ」
「じゃあ誤魔化さず言って欲しい。お前はさっきベイビーに確実に撃たれたよな?」
「おう」
「じゃあ何故死なない?お前はインプラントを付けていないだろ!」
俺はネムさんに自分がヴァンパイヤだということは伝えていない。
何故ならヴァンパイヤは超貴重だからだ。ヴァンパイヤは特性上永遠の命と永遠の若さが手に入る。その特性は誰もが手に入れたいものだ。今の時代ヴァンパイヤは絶滅したものだと扱われている。それもそうだ、なぜなら俺がこの世界に来た時ですら存在があやふやだったのだから。なのでヴァンパイヤを捕まえた者には無限の資金と末代まで国からの援助を受けられるのだ。そのせいで一時期「ヴァンパイヤ狩り」と言ってヴァンパイヤを探すのがブームになったぐらいだ。
「………………………」
「………………………俺にも言えない事なのか?」
「…………ネムさん……………………………………俺実はヴァ」
言ってしまおう、ネムさんはお金より人情を取る人だ。
「ヴァ?」
「ヴァn
するとネムさんは俺の口を抑えた。
「言わなくていい、俺も何も聞かなかったことにする」
それだけ言うと手を離した。
「プハッ。…………?」
「お前が言おうとしてくれたから、それで良い」
「………そうか…………………」
やはりネムさんはネムさんだった。
「ネムの親父ー、地下の階段がありましたぜぇー」
ラビットが部屋に入ってきた。
「そうか、今行く。行くぞステイ」
「あぁ」
俺たちは地下へと続く階段の入り口に集まった。
「ドレー、灯を頼む」
「はい」
地下は真っ暗でヴァンパイヤの俺でも1m先が見えない程であった。
深く沈んでいくと悪臭が漂い先に進む程臭いは強烈になってくる。
「生ゴミが腐ったみたいな臭いですぜ」
「……………………」
皆んなは気づいて無いがこの臭いの中に微かだが血と排泄物の臭いも混じっている。この先に人がいるという証拠だ。
「!」
俺はこの3人より鼻が良い、だからこそ俺は驚いて足を止めてしまった。
「どうしたステイ?」
「早く行けよステイ………さん」
「待ってくれ、ネムさん…………ここからは俺だけにしてくれ」
「はぁ?何言ってんだおめぇ」
「ドレー、黙ってろ」
「は、はい」
「ステイ、何かあるのか?」
「えぇ」
「わかった。…………おいドレー、ラビット戻るぞ」
「いいんすか、野郎1人で行かせて」
「あぁ」
「…………………はぁ」
俺は3人を後にして地下深くに足を降ろした。
1人になって2分位たっただろうか俺はようやく最深部にたどり着いた。
「………っ」
いつになっても鼻が臭いに慣れない、それ程強烈なのだ。
俺はドレーから借りたライトで周辺を見回して見た。
「ん?」
1番奥に不自然極まりない鉄で出来たら扉があった。この臭いもあの部屋からのものであった。
パスワード式の鍵が掛かっていたがそこは腕力でねじ伏せた。
ギギギギッ
床との摩擦と蝶番が錆びていたのか扉が開き憎くなっている。
「クソッ」
ギギギギギ
「……ステイ?」
すると扉の向こうから俺の名前を呼ぶ声がした。
「…………ジュゼッペなのか?」
「う、ゔん、ぞうだよ!」
ジュゼッペってこんな声だったか?いつもより声が濁っている。
「大丈夫か?」
「…………………」
返事が無い。
「どうした?…………ジュゼッペ?」
「……………ねぇスデイ。人は外見がどれくらい大事だと思う?」
「?どうしたんだ急に?」
「ねぇどれだけ心が綺麗でも人ってある程度外見が良くなきゃダメでしょ」
「……………そ、そんなこと無いと思うぞ……」
「優しいんだねズテイは……………でもステイはどうぜ大多数の1人だよ」
「な、なんの話をさっきからしてるんだ?……ジュゼッペ早く帰ろうぜ」
「………………」
「おい!ジュゼッペ!?」
俺はジュゼッペの声がする方にライトを向けた。
「…………ッッッッ」
「ねぇステイ、お願い……………殺して」
そこにいたのは家畜に使用するインプラントを強引に結合され骨格が犬の様に変形し、手足の先端が切り取られ顔面の前半分が削ぎ落とされ拘束具を付けた女だった。
「…ジュ、ジュゼッペなのか?」
「……………わからなかった?」
「………………」
返す言葉が見つからない。
「ねぇ…………殺しで、ころじて。お願いステイ゛殺して…………」
「…………まだ助かるかも……しれないだろ………」
「無理よ、私の体はもう捨てられちゃったから。今生きてるのだってこのインプラントがあるから、魔力がつきたら私は自動的に死ぬの」
ジュゼッペの体には首と腰が無かった。
「…………このまま死にたく無い、だからせめて誰かの腕の中で死にたいの。ステイお願い、一生のお願い」
「……………ッ……………………………………………わかった」
「ありがとう」
それから俺は残り少ないジュゼッペとたわいもない話をした。笑顔で死んでいった彼女は最後にこう言った。
「お前のせいで私の人生めちゃくちゃよ」




