EP3〜ノーサイバーバイター〜
今更だがこの街「レボット」を紹介しようと思う。
この街は先に大きな戦争が起こった場所で、戦争で生き残った者や不放浪者が集落を作ったのがこの街の始まりとされている。だが長い年月がたった今では住む人も多くなり、大手の企業や公共の機関などもこの街に増えて来ている。更には世界的な技術の発展による人のサイバー化が一般化している。サイバー化は治安の改善や情報の回転率の向上に貢献しているのだ。だがこの街は腐っている、あくまでこの街を仕切っているのはヤクザや半グレで一部の警察までもが協力関係にある。そのせいで今この街には俺たちの様な犯罪者たちがゴロゴロといる。まぁ俺たちにとっては良い隠れ蓑となっている。
「おはよ」
「あぁ、おはよー」
って言っても夜だが。
「今日は仕事あるの?」
「あぁ、この後ネムさんの依頼がある」
「いい加減もっと割りの良い仕事探してきたら?」
「まぁ、そうなんだけど………」
「まぁ良いわ、生活には困ってないし…………………そーいえばさっきテスカ君が給料取りにきたわよ」
「そうか………」
俺はシャワーに向かった。
「……………熱っ」
設定温度が48度になっていた。
「おいおい、なんでこんな温度になってんだよ………」
「ご飯食べてくー?」
台所からクレンが問いかけてきた。
「いや、いらないわー」
「あっそー」
ご飯を食べないのでこのまま歯を磨いてしまおう。
「じゃあ行ってくるわ」
「はーい、なん時くらいに帰る?」
「大体、朝の3時くらいかな」
「わかったわ、いってらっしゃい」
「いってきます」
俺はクレンの頬にキスをした。
この街は基本的に道に人が倒れていて道端にはゴミが溢れ街中に工事の音が響いている。
ネムさんの待ち合わせの時間までは少し時間があるので俺は近くにあったバーに入った。
チリンチリン
このバーは比較的に治安が良さそうだ。店内も綺麗で客層も落ち着いている。
「いらっしゃいませ」
「マスター。コーラ、氷抜きで」
極端に冷たい物は苦手だ、体が冷えてメリットは無いからな。
「はい、かしこまりました」
「それにしてもマスター、すごい体ですね。元は何族なんですか?」
マスターの体は全身機械である。
「ハハ。わたくし、こう見えて元は羊の獣人なのでございますよ」
「へぇー、もう原型ないですね」
マスターの体には毛が一本も生えていなかった。
「まぁここら辺は治安が悪いですから、職業上このようなインプラントだらけの体にしているんです」
マスター程の人間はそう多く無いが、この世界では体を改造していない人の方が圧倒的に少ない。というか、一部では赤子の時点で改造が義務化されている地域も少なく無いのだ。
ちなみに俺とクレンはどこも改造していない。する必要が無いからだ。
「お待たせしました、ごゆっくりどうぞ」
俺の目の前にコーラが置かれた。
「はい」
チリンチリン
また1人客が入って来たようだ。
「マスター。コーヒーのアイスそれと砂糖もつけて。あとこの人にコーラをもう一杯」
その客は俺の隣に座った。
「一昨日ぶりね、キリコさん」
「うぁ?…………」
そこにいたのは警察庁の保管庫の司書をやっているジュゼッペがいた。
「あぁ、なんだお前か……」
「なんだってなによ!」
「うるさいな、こっちは疲れてんだ」
「こっちの方が疲れてるわよ!私あれからすごい怒られたのよ。しかも責任とれって言われて司書クビになっちゃったんだから!」
「そうか、それは気の毒だったな」
「あんなふざけないでよ……今私無職なの。ねぇどうしてくれるのよ!」
「知らねぇって。第一に俺みたいな奴から保管庫を守るのが仕事だったんだろ、仕事が出来ない奴はクビになって当たり前だ」
「はぁー!?ざっけんじゃないわよ!」
ジュゼッペは俺を殴ってきた。
「お客様、それ以上続けるのでしたら出ていって下さいませ」
マスターに注意されジュゼッペはすぐに大人しくなった。
「……………はい、すいません」
ジュゼッペは俺を睨んでいる。
「…………それで。俺になんか用があるのか?」
「えぇ、大アリよ」
「なんだ?」
「仕事をちょうだい」
「……嫌だよ」
「なんでよ!あんたのせいでこっちは無職なのよ!」
「だってお前、元とはいえ警察じゃん。俺の情報が売られたらたまったもんじゃない」
「はぁ…………それができたとしても、もう警察に戻れることなんて出来ないの」
「なんで?」
「一度でも信用を失った人はもう警察は信用しないの。昨日まで警察だった人が明日にはテロリストなんて事はこの街じゃ普通にあることなのよ」
「ふーん、そういうもんなのか」
「そういうものなの………だからあんたが責任もって私に仕事を用意する必要があるの!」
めんどくさい女だ。
「…………って言っても今は何もやることは無い。俺だって普段はアルバイトだぜ」
「………えっ、そうなの?」
「あぁ………ちょうど今からバイトだ。なんなら着いてくるか?」
「…………えぇ、行くわ」
「良し、じゃあ着いて来い」
「え?ちょっと会計は?」
「………………」
チリンチリン
俺は店の外に出た。
俺はネムさんとの待ち合わせ場所に向かった。
「ねぇ、バイトって何するのよ?」
「んー………今回は試合だ」
「試合?」
「あぁ、賭け試合に出るんだ」
「………ちょっと普通に犯罪じゃないですか!」
「そうだな………でも今のお前にはもう関係ないだろ」
「……まぁそうですけど」
「そろそろ待ち合わせ場所だ、礼儀に厳しい人だから失礼な態度とるなよ」
「わ、わかってるわ………」
ジュゼッペは少し緊張していた。
「ここだ」
俺たちはかなり古びたビルの駐車場に来た。すでに駐車場には多くのギャラリーがいた。
「なんなんですかここ?」
「今日の試合場」
「リングとか無いのね………」
「まぁ、いっても賭け試合だからな。警察にバレないよう転々としてんの」
「はぁ………」
すると後ろから俺を呼ぶ声がした。
「よう!ステイ」
振り返るとネムさんがいた。
「ネムさん!久しぶり」
「いい加減「さん」付けは辞めろって」
「ハハッ」
「それにしても毎度毎度悪いな」
「まぁネムさんのとこは他と比べてはぶりがいいからな」
クレンには割に合わないと言われたが。
「今回も勝ってくれよ」
「あぁ、任せろ。……それで相手は?」
「今回の相手はカブトムシの蟲人だ」
「インプラントは?」
「体の表面全体にカーボンのコーティング。背中には小型のモーター、腕と足にはポンプが各2本ずつ、頭の角には電ノコだ」
ネムさんはタブレットを開いて説明してくれた。
「…………ふーん」
まぁまぁだな。
「このインプラント違法なやつじゃないですか」
ジュゼッペが横から首を突っ込んできた。
「ステイ、誰こいつ?」
「………俺も良くわかって無いんだ」
「ふーん、なぁ嬢ちゃんまずは挨拶からだろう」
ネムさんはジュゼッペの髪を掴み鼻が当たるギリギリまで顔を近づけた。
「は、はい………すいません。私、ジュゼッペと言います。キリコさんの紹介で来ました」
「?キリコって誰?」
「え?そこの………」
ジュゼッペは俺を指さした。
「あぁん?………ステイのことか?」
「ステイ?」
「あぁ、こいつはステイだ。なんだお前、偽名使ってたのか」
「…………まぁな」
「ってことはお前はステイに紹介されて来たってことか?」
「はい、そうです」
「なんだよ、それなら早く言えよ」
ネムさんはジュゼッペの髪を離した。
「まぁさっきの話の続きだ、相手は今回の試合が97試合目の古参だ」
「戦歴は?」
「88勝9敗」
「まぁまぁだな………で報酬は?」
「50万だ」
ちょと少ねぇな。
「………………良いだろう」
「じゃ、勝ってこい」
「あぁ」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
「なんだ?」
「いいんですか、このまま戦っても?」
「どういう意味だ?」
「だってキリ……ステイさんインプラントどころか何も持って無いじゃないですか」
「大丈夫だ」
「大丈夫って、死んじゃいますよ!」
「うっさい、ステイが大丈夫って言ったら大丈夫なんだよ!」
「……………」
ジュゼッペはネムさんに怒鳴られ黙ってしまった。
「………まぁ見てろ」
「そ、そうですか」
俺は駐車場の中央へと向かった。




