EP27〜大将戦〜
ついに来た、大将戦。
「クレン……ご……………がんばって」
「…うん、勝ってくるね」
「ありがとう」
「これより、ナタス・アイワナ戦争、大将戦、ナタス教陣営、クレン対アイワナ教陣営、ビーニー・スターの死合いを始めます」
は?ビーニー・スター?彼は師匠に殺されたはずだ。同姓同名?
でもそこに現れたのは僕の知ってるビーニー・スターでは無く、細身で長身の男だった。
「病的なまでに白い肌、魔物のような大きい犬歯、不老不死の肉体………はじめましてクレン・キング・サイファー様」
「…………っだ、誰よそれ」
「あなたです」
「………なんなのよあんた」
「わたくしビーニー・スターと申します。かんたんに言うとヴァンパイヤハンターです」
「………………なるほど、そういうことね」
「御理解早くて助かります」
僕はこの時クレンの考えてることがわからなかった。
「クレン!戻ってこい」
僕はいてもたってもいられなくなり叫んだ。
「………大丈夫よ、ステイこれが終わったら結婚するんでしょ。逃げてられないわよ」
「でも…………」
「それに、こいつが生きているままだったら私達、いつまでたっても安心して生きていけないわ」
「そうだけど……」
「じゃ、スターさん。死んでもらうわ」
「ええ、「苦しみ」をトッピングしてお返しします」
「では…………………始め」
始まってしまった。
「なんだ、お前らヴァンパイヤだったんだな」
「キシャさん……」
「ねービックリだよステイ君♪」
「ホーキンさんはわかってたじゃないですか」
「君達ヴァンパイヤなんでしょ、今何歳?」
「えー、30歳くらいですね」
「え!?ごめん普通に年下だと思ってタメ語使ってた」
「別に気にしてませんよ、僕はキシャさんのこと尊敬してますから」
「そ、そう。ステイ、お前リア充の癖に優しいな」
「リア充は関係ないですよ」
「それにしてもクレンちゃんの相手はよりにもよってヴァンパイヤハンターか」
「そうなんですよ、何かおかしいと思いませんか?」
「そうだね。……ねーキシャ。風俗の待合室で言ったこと覚えてる?」
なんのことだ?
「あぁ、この死合いは何か裏があるってことだろ」
「そうそう」
「ちょっとなんですかそれ?」
「この死合いね実はほんのちょっと前に決まったことなんだ、普通戦争というものはそのカインさんやヴィーラみたいな争っている者どうしでやるのが普通だ、でも大事な戦争の勝敗を決めるのに俺らみたいななんも関係ない人がいるのはおかしいだろ。だからこの死合いはなにか裏があるんじゃないかってこと」
「言われてみればそうですね」
「まっ、さっきのヴァンパイヤハンターが言ってたことを考えるとなんとなく想像できたけどね♪」
「は?」
「まっ終わったらわかるよ」
教えてくれよ。
ビーニー・スターが背中から十字架の形をした剣を取り出した。
「ふっヴァンパイヤハンターっぽいわね」
「ヴァンパイヤハンターですから、ところであなたは素手で戦うのですか?」
「まぁそれでも良いんだけど、素手じゃさすがに武が悪いから普通に戦うわよ」
そうゆうとクレンは自分の中指と薬指を口に突っ込んだ。
「オッオエッ………ゲホッ」 ボトッ
クレンの口からはドスが出てきた。
「王女様のゲロシーンは中々お目にかかれませんね」
「あー気持ち悪」
「なぜ胃にそんな物を?」
「奇襲に使おうと思ってたのよ」
「はぁ…………」
僕も驚いたがビーニー・スターもちょっとひいている。
「じぁ行くわよ」
「……はい」
「……シッ」
クレンの喉元への斬撃。
ガキィン
ビーニー・スターは攻撃を防いだ。
「単調すぎます」
「わかってるわよ」
流れるようにクレンがビーニーの足を払った。
「おっ」
ビーニーのバランスが崩れ、頭が蹴りやすい位置にきた。
「シャッ」
ドッ
よしっ綺麗に入った。
「イッツゥゥゥ」
「ふっ、こんなもんかしら」
「いやいや、予想よりやり手だったので少し戸惑ってしまいまして……」
ビーニー・スターはそう言うと不気味に笑った。
「ん?」
「お気になさらず」
「あっそ…………………………シッ」
うまい、剣ごと蹴ることで反撃をやりにくくしている。
「シャッア」
ザクっ
ビーニー・スターの胸からへそにかけて大きな傷がついた。
「ぐっ」
「良い感じじゃあないか、クレンちゃん」
「そうですね、最初ヴァンパイヤハンターって聞いたときは驚きましたが、この調子なら勝てそうですね」
「この調子でいけばね♪」
そうだ、このままあのビーニー・スターが敗れるとは思えない、まだ何かあるだろう。
それからもクレンが優勢で死合いが続いた。だがビーニーも肝心のところは上手くかわしている。
「はぁはぁ、いい加減倒れてくれないかしら」
「…………嫌です」
「フー………シッ」
またも喉元への攻撃。
「待ってましたよ、この時を」
ドスっ
ビーニーの剣がクレンの首に刺さった。クロスカウンターの原理だ。
「ギャァァァァァァア」
クレンの叫び声が会場中に響き渡る。
「この剣は十字架であるのと同時に銀でもあります。さらには表面に聖水をコーティングしてあるんですよ。普通のヴァンパイヤなら今ので消滅していたんですが、よく耐えてますね」
「うぅうァあ」
クレンの傷は治ること無く、首からは血が溢れている。
「じゃ、死んで下さい」
ビーニーはそう言うと剣をクレンの心臓の真上に持ってきた。
僕は気づいたら飛び出していた。後悔していた、クレンを死合いに出させたこと、僕が中堅戦で勝っていればこんなことにはならなかったこと、カインさんとの約束を破ってしまったこと。
「ま、待って……」
僕はまた大切な人を失ってしまうのか。
「そこにいろ!ステイ」
え…………リリスさん!?
リリスさんの蹴りがビーニー・スターの横腹にはいる。
「グハッ……………なんだお前!?」
「ステイ、逃げるぞ!」
「は、はい!」
リリスさんがクレンを担いで来てくれた。
「チッ、クソどもがっ。逃すかよっ」
「ホーキンさん!キシャさん!どいて下さい」
「はーい、でも結婚式にはちゃんと呼んでね」
「またな」
「はい、ありがとうございました」
幸い今は夜だここを出てしまえば、逃げ切れる。
「ステイ!最短ルートで行くぞ!ぶっ壊せ!」
僕は壁をぶち破り、進んで行った。
あと一枚で外に出れるという時に横から声が聞こえた。
「お待ち下さい、ステイ、クレン様」
そこにいたのはロンリさんだった。
「ロンリさん…………」
僕はようやく理解した。
「お前だったのかよ」
「ええ」
「なんで、んなこと」
「出世するためです」
「……………」
「おい!ステイいいから早く行くぞ」
「は、はい」
「あなたたちは必ず捕まってもらいます」
僕は最後の壁を突き破り外に出た。
僕達は出来るだけ遠く離れ、魔法で地下に部屋を作った。
「クレンはどうですか?」
「あぁ、傷の部分は削ったら再生したけど、コーティングされた聖水のせいで目覚め無い。最悪何か障害が残るかもな」
「そんな」
「まぁ死ぬことは無い、それに障害っつてもヴァンパイヤならいずれ直る」
「そうですか……」
「なぁステイ、最後に居たあいつはなんなんだ?」
「あの人は僕たちを雇った貴族です」
「…………あーつまりあいつはこの戦争を利用してクレンを捕まえて人間族の王のキング・サイファー家との関係を強くして出世しようとしていたのか……」
「はい、そうだと思います。でもそれにしては不自然なんです」
「何がだ?」
「第一、クレンは5歳くらいの時にはもう家を出ています、なのになんで成長して顔つきも変わったクレンがバレたかってことです」
「あの貴族、前にクレンかクレンの親に会ったことがあるんじゃないか」
「…………たしかにそれなら」
あり得るかもな。
「それと都合よくヴァンパイヤハンターがいた事です」
「それはあの貴族とヴァンパイヤハンターが繋がってたんだろ」
「そっか」
「おいおい、ステイお前もう寝ろ。クレンは俺様が見ておくからよ」
考えればすぐわかるようなこともわからないほど僕の頭は混乱していた。
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて」
「おう、しっかり寝てろ」
次の日。
地上に出てみるとお祭りのように賑わっていた。
僕は気になったので近くの人に理由を聞いてみた。
「すいません、なんで皆んな騒いでるんですか?」
「おう、兄ちゃん。知らねぇのかい、これ見ろよ」
「『重罪人ステイ・セント。リリス・アクリア。捕まえた者には賞金、金貨1000枚。罪状はキング・サイファー家令嬢の誘拐、監禁』!?」
そこには僕たちの似顔絵も載っていた。
「おう、それで今皆んなで探してるんだ。兄ちゃんも見つけたら教えてくれや、じゃあな」
「は、はい………」
おいおいおい、指名手配犯になっちまったよ。




