EP2〜肩組める仲〜
私は5歳になった。あれから3年、魔法の基礎を母親に教わり毎日練習を続け水魔法だけでなく火、土、風、光系魔法まで使えるようになった。最近になってようやく母親に魔法の教科書を買って貰ったので魔法についてわかってきたことがある。魔法にはそれぞれ、初級から始まり中級、上級、天級、神級、禁忌とある。ほとんどの魔法使いは天級魔法を使えて一人前と認めて貰えるが、神級以上を取得すれば、公共施設や回復ポーション等の無償化、税金の支払い、交通費の免除など様々な恩恵が国から認められる。禁忌魔法は、自分の命と存在を代償にすることで発動させることができる。なので禁忌魔法という存在はあっても、使われたという情報は誰も聞いたことがないのだ。ちなみに私は水と土魔法は上級を使えて他の火、風、光系魔法は初級まで使える。
今まで魔法の訓練は街を出て2、30分した人気のない草原で練習をしていたが、飽きてきたので近くにある森にやってきた。しばらく森の中を散策していると森の中から甲高い泣き声が聞こえてきた。
「だれかーだれかいませんかー」
声のする方に向かってみるとそこには森に来るには不自然なフリフリなドレスを着た泣きじゃくっている金髪の幼女がいた。
「だ、大丈夫か?」
よく見ると見覚えがある、どこかで会ったかな?
「あんただれよ!近寄らないで!」
助けを求めてたんじゃないのか?急に高圧的になったぞ。
こんなときはまず自己紹介だよな。
「僕の名前はステイ・セント。シーラン薬局の一人息子だ。大丈夫?立てるか?」
「近寄らないでっていってるでしょびんぼーにん」
私は心が広いのでこんなことでは何も感じない。
「君はなんでこんなところに?」
「かんけいないでしょ、話しかけないで」
本当になんだこの娘は?助けを呼んでたんじゃないのか?
「ガキが、親切にしてやってるのに」
ガキは自分もである。
「なによあんたしにたいの?お父様にいえばあんたなんかすぐころせるんだからね」
「…………思い出した!」
この傲慢な口調、森に似合わないフリフリなドレス、そうゆうことか。こいつは私の街と国を仕切っている王様、オースティン・キング・サイファーの御息女のクレン・キング・サイファーだ。
「なぁお前なんでこんなところに居るんだよ?」
「おまえっていうなわたしの名前はクレン様」
「様は名前じゃねぇだろ」
「ちいさいおとこね、いいじゃない2文字くらい」
「僕にお前を敬う気持ちはない」
「またおまえっていったー、なんでそんないじわるするのよー」
泣いてしまった。
「ご、ごめんねークレンさまー泣くのやめよ、ね」
魔物が襲って来るかもしれないからなるべく音は立てないで欲しい。
「ぅうぅーぐすっ」
「クレンさまはなんでこんな森の中に居るんですか?」
「ぐすっずず…お父様がわ、わたしの将来のおむこさんだってつれてきたおとこの人がいたの。その人ねさいしょはやさしかったの、でもねわたしが寝てるときにねきゅうにだきついてきたの。その人ねだんだんわたしにひどいことするの、いたいことするのだから逃げてきたの」
「……………ハ?」
返す言葉が無かった、さっきまで高飛車に話していた彼女が急に考えもしないことを話したからではない、私も前世で同じように実の父に性被害にあっていたからだ、あの時の感覚今でもたまに思い出す。クレンの体には痣があった、それは森の中で転んで出来た物だと思っていたが私はその痣の形には見覚えがあった自分より大きな人間に力強く握られたときに出来る痣、彼女は必死で逃げて来たのだろう。知らない森の中で彷徨い続けいつ魔物に襲われてもおかしくないこの森で、自分と同じくらいの歳の子と会って安心して緊張の糸が解けたのだろう。今では近づいても悪態をついてこない。
「なぁクレン…………その男の名前を教えてくれないかい?」
「………」
「クレンの気持ちは痛いほどわかる、だから名前だけでいい…おしえてくれ」
「…リ…リッキー・グランド・ケーキ」
「……………立てるか?」
「えぇ」
「帰ろうぜ」
「いやよ!あんなとこ!」
「わかってる僕の家にだよ」
僕は彼女に肩を貸し、帰路についた。
「ただいまー」
「おかえりーって、だーれ?その娘?」
「この娘は街から少し離れた森の中で1人でいたんだ、だからお母さん少しの間僕の家で休ませてあげたいんだ」
「わかったわ、よろしくね。ところでお名前は?」
「…クレン」
「よろしくねクレンちゃん」
「よ、よろしく…おねがい………します…」
クレンが家に来て三年がたった、クレンはリッキーのことなど忘れたように元気になった。
「ステイ!早く来て!」
「クレンが速すぎるんだよ」
クレンと一緒に初めて市場に買い物に来た、街は以前と比べて警備兵が多くなった。王様の御息女であるクレンが失踪したからである。クレンは世間では誘拐されたということになっている。もちろんクレンにはできる限りの変装をしてもらっている。
「ねぇステイ、買い物のメモみして」
「へい」
「カトトコ草、ヘアルビの根、カナキリ蛇、ソイバイソンの角…なにこれ?」
「僕のお母さんは薬師だろ、これは薬の材料だよ」
「えーじゃあお菓子は買わないの?」
「安心しなさいお姫様、僕は今からこの材料を出来るだけ安くしてもらえるよう交渉してみせる。材料分のお金しか貰ってないが、まかしとけ」
1時間後
「すごいわステイ!本当におつりがでたわ」
手元にあるのは銅貨15枚、日本円でだいたい800円くらいだ。
「さっそくお菓子屋にいきましょ!」
私はこの世界に来てから甘味を味わっていない、内心ウッキウキだった。
「着いた、ここであってるよな…………ごめんくださーい」
開けた瞬間甘い匂いが鼻に殴りかかってきた。
「ねぇステイ、あれが食べたいわ」
「どれどれ……銀貨3枚」
たけー、銀貨1枚日本円で一万円位だろ。とても手が出せない。
「ごめんクレン他のやつで頼むよ」
「わかったわ、これなんてどう?」
「ナノクッキー、一枚につき大銅貨一枚」
大銅貨は日本円で大体1000円、なるほどこんな小さなクッキーでも一枚1000円もするのか、どうりで異世界にきてからお菓子を食べたことがないわけだ。
「ごめんなクレン、やっぱ僕の持ってるお金だけじゃここにある商品なんも買えないわ」
クレンの表情があからさまに落ち込んでいる。
「またお母さんに頼んで買いにきましょう」
「おーあんたショーンさん家の息子だよな」
突然後ろから馬鹿でかい声で話しかけられた。
「は、はいステイと申します」
「どうした?菓子でも買いに来たのか?」
「そうなのですがお金がたらないので、もう帰ろうと…」
「なんだそんなことか、ほらこれ持ってけ」
渡された袋の中には大量のお菓子が入っていた。
「どうしてこんな…」
「俺はよここで菓子作ってんだ。前にあんたのお袋に俺の息子の病気直してもらったんでな、礼だよ礼」
「よかったわねステイ」
「ええ、ありがとうございます」
「おお、またこいよ」
なんて幸せな気分なんだ、今日はクレンと一緒にお菓子パーティだ。
「…………ねぇステイ、ちょっと来て」
「なにかあったの?」
「いいから来なさい!」
クレンが私の服を強引に引っ張りながら細道の連れ込んだ。
「どうしたんだよクレン」
クレンの顔は真っ青になっていた。
「あいつ」
「は?」
「あいつよ」
クレンの指を刺した方向には馬にまたがり警備兵を引き連れた20代位の男がいた。
「あいつがなんなんだ?」
「あいつがリッキー・グランド・ケーキ」