EP23話〜次鋒戦〜
先鋒戦が終わり僕たちは広大な草原に来ていた。
「大司教様、なんで次鋒戦はこんな場所でやるんです?」
太陽を遮る物がローブしかないから立ってるだけでもキツい。
「なにせ相手の選手がここでしか死合いできないと言っておっての」
「どういうことですか?」
「さぁ?」
さぁって。
「おいおいおい俺は何処でやろうと負けねぇぞ」
カインさんが巨大な斧を持ってやって来た。
「カインさん………」
「まっ俺の筋肉は最強だからな」
「そ、そうですね」
「……それとステイ、お前クレンを本当にこの殺し合いに出させるつもりなのか?」
「……ま、まぁ本人もやる気なので」
ヴァンパイヤだから死なないから問題無い何て言えないし。
「………だったらステイ、中堅戦で必ずこの戦争を終わらすんだぞ。わかったな!」
「は、はい」
どうしたんだこの人は急に。
「良し、じゃあ行ってくるわ」
死合いに向かうカインさんの背中はいつもより大きくそして暗く見えた。
「ステイくん、お主勘違いをしておるようじゃな」
大司教が僕に話しかけてきた。
「へっ?なにがですか?」
「カインのことじゃよ、まぁ初対面で自分の女を馬鹿にされたんじゃ、無理もないがな。でもなステイくんあいつは誰よりも女という存在を愛しているんじゃ」
「………なるほど」
つまりカインさんは女であるクレンに殺し合いをして欲しく無いから嫌な態度をとっていたのか。
「でも……それにしては不器用すぎませんか」
「ほっほっほ、そうじゃな。あいつは昔からそうじゃった」
カインさんの話をする大司教はいつもより笑っていた。
「それではこれより次鋒戦、ナタス教陣営サラート・カイン対アイワナ教陣営タン・タンの死合いを始めます」
するとアイワナ陣営から地鳴りがしてきた。
「ほう、俺の相手は巨人族かよ」
そう相手は10m程の巨人であった。
「巨人族……初めて見たわね」
「あぁ、カインさんが赤ちゃんみたいだ」
「にしてもパンイチなのは勘弁してほしいわ」
「ほっほっ、それはなクレンちゃん、巨人族は己の肉体を神聖視しておっての、服を着る者は臆病者として迫害されるんじゃ」
「ふーんバッカみたい」
「ほっほっほ」
「武器を持ってないのもそういうことですか?」
「そうじゃ」
この勝負は圧倒的に武が悪いわけではないが、カインさんがいくら巨大な斧を持っていてもこのフィジカルの差は埋めようがない。
「ステイくん、カインに心配なぞ不要じゃ」
「……そ、そうですか」
「まぁ見とればわかる」
「………はい」
まぁ僕もあの人が簡単にやられるとは思わないけど。
「では………………始め」
なんてだべっていたら始まってしまった。
巨人のタン・タンは始めの合図とともにジャンプした。
「おいおいおい、初っ端からキツイねぇ」
「これくらいでは死んでくれるなよ人間」
タン・タンのただの着々されど着地、轟音とともに地盤にひびが入った。
「カインさん!」
「落ち着くんじゃステイ、カインはこのくらいじゃ死なんわ」
すると、タン・タンの足元から血が噴き出てきた。
「ブハッ、おいおい血まみれじゃねぇか」
タン・タンが思わずカインと距離をとる。
「フッ生きていたか、ならば正攻法でいかせてもらう」
「端からそれでくればいいだよ」
タン・タンは猫のように地面に手をつき、手を軸とした地面スレスレの右超ローキックをかました。
「ぐっっっ………」
カインさんは10m程吹っ飛ばされたが、受け身が間に合いなんとか立ち上がった。
「ほう…しぶといな」
「ゲハッガハッ………はー、歳は取りたくねぇもんだな」
「フッ痩せ我慢か?」
「へっカッコぐらいつけさせろってんだ」
カインの口からは血が出ていた。
「大丈夫ですかねカインさん」
普通の人間なら最初の一発でペシャンコである。
「まぁ無事とは言えんな」
「カインさんは筋肉以外に何かあるんですか?」
「お主、それはただの悪口じゃ………もちろんあるとも」
「なんなんですかそれは?」
「まぁみてなさいって」
「はい」
「ペッェ」
カインさんは口の血を吐き出した。
「おい巨人!しっかりガードしておけよ」
「ただの人間のお前に何ができる?」
「スゥーーーーーーーーーーーーーーー」
カインさんは斧を振りかぶり大きく息を吸い込んだ、空気を吸い終わったカインさんの上半身は2倍近く膨らんでいた。
「いくぞ!巨人!神の一振り!!!」
驚くべきは技名がある事ではなかった。カインさんが放った一撃は巨大な空気の刃となりタン・タンの左腕を吹き飛ばしたのだ。
「なっ!腕がッッ……ここまで…………と…」
「やっぱ歳は取りたくねぇな、首を狙ったはずなんだがな」
「ッ………ソ」
タン・タンの左腕からは血が大量に噴き出て辺り一体血の海になっていた。
「ほっほっほ、やりおったやりおった。これじゃこれカインの真髄はこの一撃にこそある」
大司教が今日一の笑顔である。
「…でも本当にすごいですね、ただ筋力で振っただけであんな威力になるなんて」
「ほっほ、あれはカインが生涯を筋トレに捧げたからこその技じゃ、あの技が完成したのだってたったの5年前じゃしの」
だがカインさんの努力の結晶はノーリスクで放てるものでは無かった。
「うっ……ゴポッ、グバァァァッッッ」
カインさんの口からは先程の比では無いくらい大量の血が溢れてきた。
「クックク、なんだ人間お前も満身創痍じゃねぇか」
「この技はちと肺にな負荷が……ゴエッッ」
カインさんはたまらず斧を手放し四つん這いになってしまった。
「フッ攻撃した方が倒れてるんじゃあ訳ねぇな」
「ゲホッ、黙れまだやれるわ」
カインさんはなんとか立ち上がったが先程の様な迫力が皆無である。
「あと一撃耐えてくれるよな、俺!」
カインさんは斧を拾い上げさっきより息を大きく吸いこんだ。
「ハッ一流は2度も同じ技にはかからねぇよ」
「神の一振り《ナタススウィング》!!!!!」
カインさんの一撃はタン・タンでは無く、割れた地面に向けた攻撃だった。
地面は巨大な地割れを起こしタン・タンは穴に落ちていった。
「ッッッックッソガァァァァァァア」
タン・タンは瀕死状態であるカインに手を伸ばした。
「巨人族がただの人間なんかに負けるはずがないのだぁぁぁ!!!」
タン・タンの手はカインをとらえ一緒に地割れの中に転落して行った。
「カインさん!大司教!カインさんが……」
大司教は何も言わずただ割れた地面を見ていた。
ガシッ
地割れを掴む大きな右手が出てきた。
「はぁ死ぬかと思ったぞ人間…………………」
そこにはカインさんの影は無く、斧だけがタン・タンの右胸に刺さっていた。
ナタス・アイワナ戦争次鋒戦、勝者アイワナ教陣営タン・タン
「………そうかカインが……」
ナタス・アイワナ戦争ナタス勝利まであと2勝。
カインさんには長年連れ添った奥さんと娘が3人と10人の孫がいます。




