EP13〜離会〜
あれ?僕はどうなったんだ。
「……………うっ」
「聞こえますか、ステイくん」
「あ、はい。師匠」
「残念でしたね」
「何がですか?」
「決勝戦ですよ」
そうだ僕はウィーンズ・デッド・ダウンと戦ってたんだ。
「………負けたんですね」
「…はい」
「どうやってですか?」
「一瞬でした、「始め」と言い終わった頃にはあなたの首が転がってました」
「………強いですね」
「ええ、彼女ならもしかしてリッキーとの決闘も勝てるのではないでしょうか」
「そうですか……」
優勝者にはリッキー・グランド・ケーキとの決闘の権利が与えられる、今回は優勝出来なかったが準優勝である。
「次は優勝できますよね?」
「はい、ステイくんなら出来ますよ」
「次回もウィーンズは出場するでしょうか?」
「いやいやステイくん、優勝したらもうジケイ大戦には二度とエントリーできませんよ」
「………え?」
なんだと、つまり僕は優勝したとしてもリッキーと戦えるのは一度だけということだ。
「あぁなるほどステイくんはリッキーと何度でも戦えると思ってたんですね」
「は、はい」
「だったら100年後でも200年後でもいいので万全の状態でまた挑みましょう」
「………そうですね」
これで僕の一回目のジケイ大戦が終わった。が、それ以上に大きな問題ができてしまった。母親のことである。
「師匠、帰ったら大事な話があります」
「………わかりました。では帰りますか」
「ええ」
「おーい、ステイちょっと待ってくれ!」
振り返ってみると、コバヤシ・タツヤがいた。
「師匠、先に行っててください僕は少しコバヤシと話していきます」
「わかりました」
「なんだ、もう帰るのか?」
「あぁそうなんだ、それより顔面大丈夫なのか?」
「あぁさっき王国の治癒師に治して貰ったんだ」
「それでなんか僕に用か?」
「そうだ帰る前に言いたいことがあったんだ、ステイお前さ王国に勤めてないか?」
「断る」
「即答……なんでだよ」
「僕はやることがあるんだ」
「なんだよそれ」
「3年前に起きたガバ街の吸血死した事件を調べるんだよ」
「………その事件だったら俺の知り合いが捜査本部長をやってるぞ」
「まじで!紹介してくれよ」
「お、おう。でもなんでこの事件を調べるんだ?」
「その事件の被害者の中に僕の母さんが居るんだよ」
「…そうなのか、悔しいな」
「あぁ………」
「じ、じゃあ一ヶ月後にガバ街の『バスタ酒場』に来てくれ」
「わかったありがとうなコバヤシ」
「いいって、同じ日本人どうし仲良くやってこうぜ」
「おう」
まさかこんなことになるなんて思っていなかった。コバヤシにはお酒でも奢ってやろう。
ブロー町の道場に帰って来た。
「師匠、僕とクレンは少しの間ガバ街に戻りたいと思っています」
「わかりました」
案外あっさりと了承を貰えた。
「理由は聞かないんですか?」
「ええ、ですがまた戻ってきてくださいね」
「はい、もちろんです」
「ではこれを持って行ってください」
師匠は大金と50人分の血液をくれた。
「師匠なんでこんなに………」
「私の貯金と少し前に血液を大量に買って来たんですよ」
「そうなのですか、でもこれを使い切るほど長く出て行きませんよ」
「まぁまぁ、備えあれば憂いなしですよ」
「…はい」
「いつ頃出ていくんです?」
「明日にはもう行こうかと」
「わかりました、出来れば毎日修行することは忘れないでください」
「ええ、師匠はこれからどうするんです?」
「私はリリスと楽しく暮らしていますよ」
「師匠はリリスさんとどうゆう関係なんですか?」
「弟子ですよ」
「…………そうですか」
ハハッ、弟子思いの良い師匠だな。
「師匠、ちゃんと外にするんですよ」
「あなた達もですよ」
「わかってはいるんですけど……」
「あなた達は愛し合っていますもんね」
「まぁ……僕はまだ早いと思うんですけどクレンの方が離してくれなくて」
「ステイくんあなたはクレンさんの事を愛していないんですか?」
「………いやそんなことは…」
前世が女だったこともあり、女に発情しにくくなっている。もちろんクレンのことは好きだ、たがこの好きはどっちかというとlikeの方である。
「まぁそれはじっくりと考えればいいんですよ」
「そ、そうですね」
確かに時間は沢山あるじっくり考えていけばいいか。それより今は事件のことだ。
次の日の夜。
「では、師匠、リリスさん行ってきます」
「行ってきますわ」
「はい、2人ともいつでも戻ってきてくださいね」
「俺様の護衛は必要か?」
「大丈夫ですよ、僕だけで充分です」
「ハッあの時とは別人だな」
「はい、これも全てお二人のおかげです」
「ちょっと私は?」
「もちろんクレンもだよ」
「では、ステイくん、クレンさんまた」
「ええ、」
一ヶ月後、コバヤシの言われた通りバスタ酒場に来た。
「クレン、顔隠さなくていいのか?」
「いいのよ、さすがに私の顔を覚えてる人なんていないでしょうし、すっかり成長したもの」
「そうか」
クレンと談笑していると、酒場のドアが勢い良く空いた。
「おーい、ステイいるか?」
「こっちだ、コバヤシ」
「おお、いたいた。久しぶりだな」
「ゆうて一ヶ月じゃんか」
「隣にいるのは誰だ?」
「初めまして、クレンといいますわ」
「あぁよろしくなクレン、俺はコバヤシ・タツヤだ」
「知ってますわ、3回戦でステイに負けた人ですよね」
「あ、あぁ」
「それよりタツヤ早速だが捜査本部に連れてってくれないか」
「そうだな、着いてきてくれ」
5分程歩いて着いたのが冒険者ギルドであった。
「ここが捜査本部?冒険者ギルドじゃないか」
「そうだぞ、事件の操作は基本ここの2階にある空き部屋を借りてやっているんだ」
「ふーん」
「まずは2人のことを操作本部長に紹介するよ」
コンコン
「すいませーん、マースメロさんいますか?」
「おう」
「先日話した、事件に協力したいって人連れて来ました」
「わかった、通せ」
中からは、酒焼したガサついた声が聞こえてくる。
「失礼します」
「紹介しますね、こちらはマースメロさん、今回の事件の捜査本部長をしています」
「よろしく頼む、お二人さん」
「よろしくお願いします。僕ステイ・セントと言います」
「私はクレンと申しますわ」
自己紹介をすると本部長の目が大きく開いた。
「おい、男の方今なんてった?」
「…ステイ・セントですけど」
「…………大きくなったな、ステイ」
なんだ?急に泣き出したぞ。
「覚えてないのか………無理もないか」
「えっとどちら様ですか?」
「パパだよ、ステイ・セントの父マースメロ・セントだよ」