EP10〜竹槍魂〜
僕は二回戦、第二試合を観ている。この試合は弓部のハイロ・カエロ対両手剣部のコバヤシ・タツヤの試合である。
トーナメント表を見たときからわかっていたことだが、顔立ちを見るにやはり日本人のようだ。しかも結構若い、高校生くらいだろう。
「クレンちょっとトイレに行ってくる、勝敗がついたら結果教えてくれ」
「わかったわ、いってらっしゃい」
先ほどの人通りの無い場所。
「なぁラロイ、コバヤシ・タツヤは僕と同じ日本人だよな?」
「そうだな」
「なんでそのままの姿で異世界に居るんだ?」
「あいつの場合はお前と違って異世界転移ってやつだな」
「死ななくても異世界これるのか」
「あぁ、召喚って形になるな、その召喚にも条件があってな。まず童貞であること、二つ目に人生に絶望していること、最後に体重が70kg以下である必要がある」
「最後の条件はなんで必要なんだ?」
「地球から異世界に召喚する時70kg以上だとオーバーした分、体が欠損しちまうんだ」
「怖いな、召喚って誰がやるんだ?」
「今回の場合、王国の神官ってとこだろ」
「地球人を召喚するってことは何かメリットがあるんだろう?」
「ああ、まず文明の発達の為だ」
「なるほどね」
「あとなお前ら地球人は当たり前だが魔力を持ってない、だからなのか召喚された地球人はこの世界の住人より身体能力が桁違いなんだ」
「………………フィ」
やめておこう
「まぁそんなとこだな」
「ふぅんなるほどね」
試合が終わったら話しかけてみるか。
さて、試合はどうなったかな?
「どんな感じだ、クレン?」
「結構長引いているわ」
両手剣対弓、タツヤの方は上手く距離をとられている、弓の方も決め手が中々決まらないのか。
「師匠、どうなるんでしょうか?」
「このままだと負けるのは両手剣の彼です、長期戦になるほど出血が増え失血してしまいます」
「だからこそ両手剣の彼は速攻で決めたいってとこですかね」
「はい、ですが突っ込めばそのまま矢に捕まってしまいます」
「じゃあどうすれば」
「わかりませんが、彼の表情からは何か余裕を感じます」
奥の手ってやつだろうか?
「おっ突っ込んだ」
ヤケクソにでもなったのだろうか。
「うおおおおおおおおおお」
タツヤが会場全体に響きわたる咆哮をした瞬間。ハイロが弓を放った、タツヤはその矢を正面から真っ二つにした。
「すげぇ」
ハイロはまだ次の矢を準備出来ていない、その隙にタツヤは頭から一直線に体を切りつけた。
「勝負あり、勝者コバヤシ・タツヤ」
審判が試合の終わりを告げた。
「勝ちましたね彼」
「最後、矢を斬られたのが決め手になりましたね」
「はい、ですが何か引っかかりますね」
単純な実力なのだろうか、それともなにか特別な何かがあるのか?
「会って聞いてみるか…」
なので僕は控え室に来た。するとドアが、勢いよく空いた。
「勝ったぞーー!見ていたか俺の勝ちっぷりを!」
第一印象がイメージと違う、召喚条件に童貞と人性に絶望しているとあったので陰気臭い奴かと思っていた。
「おい、お前。お前は見ていたか?俺を」
近づいて来た。
「あ、ああ。みていたよ」
「凄かっただろう俺は、最後矢を切り、相手を一刀両断。相手は中々強かったが結果的に見れば圧勝だ!」
「なぁ、コバヤシ。僕は次の試合でお前と当たるんだぞ」
「そうなのか、お前は中々強そうだな」
「ありがとうな、なぁコバヤシ少し話したいことがあるんだ、ちょっと付いて来てくれないか」
「いいぞ」
「なぁ、お前はいつこの世界に来たんだ?」
「おいテメェなんでそのこと知ってやがるんだ?」
「僕もお前と同じ日本からこの世界に来たんだよ」
「そうなのか、悪かったな変な態度とっちまって」
「別にいいって」
「にしてもお前、日本人に見えないぞ」
「それは俺がこの世界で生まれたからだ」
「へぇ、異世界転生ってやつだな」
「そうだ、お前は異世界転移だろ」
「そうだ、高校に向かう途中で急に教会みてぇな所になっててよ、事情聞いてみたら私達の為に戦ってくれだの地球の知識を教えてくれだのうるさくてよ」
だいたいはラロイが教えてくれた通りだな。
「なぁコバヤシさっきの試合、なんでハイロの矢を切れたんだ?」
「タツヤでいいぜ、それよりお前の名前は?」
「ステイ・セントだ」
「前の名前は?」
「⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎」
「お前もしかして女だったのか?」
「そうだ、生まれ変わったら男になったんだ」
男になってもうすぐ17年、今となってはもう違和感というものは一切ない。
「それより、矢を切れた理由を聞かせろよ」
「ああ、そうだったな。理由は至ってシンプル『未来視』だ」
「未来視か……だから矢が来る場所とタイミングがわかったのか」
「そうだ、この力は転移者特典らしくてな」
「じゃあなんで未来視を最初から使わなかったんだ?」
「未来視はな長時間使うと脳がイカれるんだ」
「なるほどな」
「てかお前、俺の弱点聞いてんじゃねぇよ」
バレたか。
「お前が口軽そうだったからつい」
「もうやめだ、やめ」
「そうだなお互い疲れてるからな、僕は一旦戻るよ」
「あ、そうだお前使う武器は?」
「知らないのか?……素手だよ」
「ステゴロか、男だな」
「男だよ」
観客席は大いに盛り上がっていた。
「どうかしたんですか?」
「サブ・ミントですよ」
師匠が1番強いと言ってた猫獣人の彼女か。
「…………ん?」
「ええ、サブ・ミントは負けました」
「相手は誰ですか?」
「たしか名前は………ウィーンズ・デッド・ダウンですね、魔神族で使っている武器は大剣」
「僕の身長とあんま変わりませんよあの剣」
「ええ、ウィーンズ・デッド・ダウンは終始サブ・ミントを圧倒し、遊んでいるようにすら見えました」
「師匠あの人のことで他に何か知っていることは?」
「ありません、なにしろあんな人物がいるということは聞いたこともありませんから」
「そうですか」
魔神族でリリスさんより強いと言われたサブ・ミントに圧勝するほどの実力者か、反対ブロックとはいえ決勝にいけば必ず彼女と当たるだろう。
それより今は3回戦だ。




