第参話 カゴメ洞窟
※注意
1、当作品には一部過激な表現がございます。 苦手な方はご注意ください。
2、本作品で出場する人物、国、地名、財団名などは全て創作世界での話です。 実際の人物、国、地名、財団名とは全くの関係はございませんので、ご了承ください。
未知の生命体の侵略を受けた世界は、夜が明けた次の日も混乱が巻き起こっていた。
国際対応審議会により、この未知の生命体を「地底人」と名付けた。
南アメリカ連合ブラジル帝国のICTによると地底人は南アメリカ大陸南部にある一つの洞窟から発生したとのことだった。
この情報は各国の軍上層部に伝えられ、大アメリカの働きかけにより洞窟へ侵入し調査する必要があると認められた。
「それにしても 怖いわね 地底人なんてそんな不気味な物が存在するのね 2000年代の人に言ったら、頭おかしいんじゃないかって バカにされるよ」
「そうね〜 お兄ちゃん大丈夫かな」
朝食のバターをたっぷり塗ったトーストを咥え、テレビを眺めていた華美は母の言葉を軽く受けがなした。
華美にとって地底人が物珍しいとかそんな感情よりも、自分の唯一の兄弟を思う感情の方が強かった。
新大和帝国軍では大アメリカからに要請で、カゴメ洞窟(地底人が出現した洞窟)への侵入調査をする要員を選出していた。
軍の上層部の命令により、新大和軍を新大和帝国の警備に配置し、育成過程の者の中から
普通科異常時部隊、第一戦闘部隊、サイバー大隊の3部隊を南アメリカに派遣することになった。
「なー 教育課程が侵入調査とかさ これ絶対捨て駒だよな」
「中に何があるかわからないから 使える兵を使いたくないんだろ」
「そんなん ロボットに行かせろし」
「最近は自我持ったりしてるし、危険なんだろ しかも電波が届く距離の範囲内で調査が終わるかわからないし」
綾井と悠人は電話越しに半ば喧嘩しているように軍上層部への不満を語っていた。
捨て駒というのは正しい。
実際軍からの指令を受け取った学長は猛抗議をしたのだが、
これから何があるかわからないから使える兵は残すべきだ。
と軍上層部は主張を曲げなかったらしい。
「流石に軍もそれなりの装備を持たせてくれるだろ」
綾井は悠人を宥めるように言った。
派遣命令を受けた悠人は南アメリカ帝国へ遠征するため、準備を整えていた。
今回の任務は極めて危険その上極めて重要である未知なる任務だ。
重要なのにも関わらず突入隊員が育成課程生しかいない今回の任務で悠人は教官生として第一戦闘課程、普通科異常時部隊の部隊指揮を任命されている。
ーー全隊員注目!
荷物をまとめ、宿舎前に整列した隊員らの中には、初任務に目を輝かしているもの、逆に絶望的な任務に落ち込んでいるもの、もう何も考えないことにしたもの 様々な隊員が並んでいた。
また、宿舎や宿舎前広場には多くの隊員や隊員の家族、門の前には野次馬と多くの人が侵入調査を期待していた。
「これより 第一戦闘部隊ならびに 普通科異常時部隊、サイバー大隊による 南アメリカ連合ブラジル帝国への遠征を始める」
太陽の傾き、世界がオレンジ色に包まれている宿舎前広場で悠人は高らかに宣言した。
軍の紋章に夕陽があたり、人類の勝利を表すように輝いた。
「これより 南アメリカ連合ブラジル帝国へ前進す! 心して任務に専念すること! 」
ーーANA ボーイング787 着陸体制に入ります。 高度3800フィート オールクリア
ーーただいま 臨時軍用飛行機ANAボーイング787 南アメリカ連合ブラジル帝国 第一国際空港行きは着陸いたしました。 現地時刻は午後5時 気温は摂取28度 超時間のフライトお疲れ様でした。 当機の機長は新大和帝国軍サイバー大隊育成課程 綾井 地塁 が担当しました。
30時間近いフライトに移動するだけで疲れていた悠人はこのアナウンスを聞いて、一気に疲れが竜巻に飲まれたように飛んでいってしまった。
かろうじて飲んでいたハーブティーを吹き出すのを抑え込んだ。
最近の飛行機は、コンピューターに精通していれば誰でも操縦できるのだが、綾井の昇進ぶりに悠人は自分の事は棚に上げて驚いていた。
カゴメ洞窟の近くに到着した新大和帝国軍は拠点を張る作業に移っていた。
「綾井! まさかお前が機長とはな! びっくりしてハーブティー吹き出しそうになったぞ」
「これはこれは お褒めいただき光栄です 教官生榊原上官」
綾井は先に昇進している悠人を嫉妬するように教官生を強調して言った。
悠人はまんざらでもないように おう どういたしまして と答えてから2人で笑い合いつかの間の平和を楽しんだ。
カゴメ洞窟の少し前にあるカゴメ丘に新大和帝国軍は拠点を張っていた。 カゴメ丘からは後方には広大な大西洋、前方にはカゴメ洞窟の入り口が堂々たたずんでいた。 まるで人類を見下しているようにそこに存在していた。
今は日も暮れあたりは暗くなっていたため、洞窟の中は闇に呑まれていたが、陽が登れば入り口から10mほどは見えそうなほど洞窟の入り口部分はまっすぐと続いていた。 悠人はその闇に呑まれそうになり、草むらにあった石につまずいてしまった。
「ただいまより 侵入調査を行いたいと思う。 第一戦闘部隊から6名 普通科異常時部隊から2名選出し、突入を開始する!」
カゴメ丘に整列していた8名の第一陣隊員たちは、これから死ぬかもしれない運命に神妙な顔持ちで洞窟を睨んでいた。
ーー第一陣隊員 前進!
高らかに宣言した悠人の声は、洞窟の闇へと飲み込まれた。
カゴメ洞窟に侵入した隊員たちはおそらく皆同じことを考えただろう。 8月の暑さは消え去り、洞窟内はひんやりし、少し湿っていた。
洞窟内は側面や上面は凹凸がよくみられたが、地面は岩がほぼなく少しぬかるんでいた。
まるで何かで溶かされた後のようだった。
6mほど直進すると拠点からの光もほぼ届かず、ライトをつけてから10mほど直進すると3つの分かれ道が現れ、第一陣は3グループに分かれ悠人は真ん中の道へと歩みを進めた。
軍拠点から侵入隊員たちの光は完全に消え、サイバー大隊からの報告以外に現状を知る術は無くなった。
悠人のグループは分岐点から2分ほど奥へ進むと、脇道がありその先には暗闇の中で人玉のようにゆらゆらと赤色に光っている球体がただ一つ大きな空洞に鎮座していた。
一方他の2グループもほぼ同じような場所にオレンジ色に光る球体もう一つは、黄色に光る球体があった。
分岐点は最初の場所以外なく、それぞれの道は長くとこまでも続いているように感じた。
悠人以外の2グループは謎の球体から10分ほど進むと大きな空洞につき、それぞれの空洞はほぼ同じ構造をしていて、奥にはエメラルド色のキングベッドほどの水たまりがあり、奥に進むともう一つ小さな空間があった。
隊員たちはそこに入ると地蔵になったのかと思うほどに全員がその場で固まってしまった。
それもそのはず片方のグループの空間には、3メートルほどの高さまで積まれた人骨があり、それらはきれいに肉を落とされた。
もう片方のグループの小さな空洞には温泉ほどの広さの凹みの中に、人肉と人の血と思われる液体で満たされていた。 置かれてからかなり時間が経っているようで、そこは酷く死臭がし、ハエが群がっていた。
この二つのグループは、体調を崩してしまった隊員がいたため、大きな空洞で少し休息を取ってから迅速にに引き返すようにと悠人は指示を出した。
悠人は自分の道は特に怪しいものはなく、そのせいで余計他の二つの道よりもっと深刻な物があるのではないかと、演習の時と同じぐらいの汗をかいていた。もちろん冷や汗だ。
分岐点から20分ほど進むと、悠人たちのグループが進んでいた道にも大きな空洞が現れた。
しかしそこには、小さな部屋も池もなかった。
ただ一つ違い事は他の2つの道の空洞より格段にに大きかった。
その空洞には脇道にあった球体にが3つ堂々と鎮座していたが、その3つの球体は光ってはなかった。
他の2つのグループは、早々に退散し分岐点まで戻ってきていた。 死を覚悟していた隊員だったが、死にはしなかった安心を感じながら先程見た光景にショックを受けていてた。
悠人たちが少し休息を取っていると、手回し発電機で電球を光らせる時のように3つの球体のうち2つの球体が緑色と水色に光った。
「きれい……」
隊員の1人がつぶやくと、俯いていた悠人は顔を上げ球体を見た。 その目つきは好きなアニメを少年が見ているようだった。
「綾井… こんなきれいな物見たことあるか?」
「あるだろ だってこれしょうか……」
悠人が綾井に問いかけると綾井は威勢よく何かを言い出すと口を滑らせたと言わんばかりに口篭った。
隊員たちが球体に見惚れていると最後の一つが、他の2つの球体よりもゆっくりと紫色の光を発し始めた。
現地にいる隊員はもちろん拠点にいる隊員もが感嘆の声を漏らすほどにそれは幻想的であった。
最後の球体が数十秒ほどで完全に点灯すると、3つが同時に目を開けられないほど強い光を発し始めた。
数秒して光が弱まると、悠人は目を開けた。
そこには一昨日写真で見た物が目の前に現れていた。
悠人は逃げるのは不可能なことを悟り、せめてもの防衛方法として地面に伏せた。 後方からは土が焦げるような音がズルズルと移動し、その音は部屋を周回しているようだった。
そして、その音はやがて隣へとやってきて何かを溶かし始め、少しすると肉が焦げたような匂いと共に悲鳴が空洞に響き渡った。
悠人はこの信じ難い状況に顔を伏せるほかなかった。
最後まで読んで頂きありがとうございます!!
作者の安馬内棋位です!
幻想的な光を発しながら現れてきたのはなんと地底人!!
悠人 危機的展開!! どうなっちゃうの!?
さて今作はどうだったでしょうか? 感想 アドバイス なんでもお書きください!!
では次作 第肆話でお会いしましょう!!
作者の安馬内棋位でした!