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ラビの漁夫の利作戦  作者: あ
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光る勇者

「それで? ゴリラを誘拐しようとしたのね?」

「「うん」」

「うんじゃないですよ! 一体どんな思考回路してたら、仲間とゴリラを交換しようとしたり、動物園で暮らそうと思うんですか!?」

 青筋を浮かべながら落ち着いて聞いてくるユーリへの回答にエレンは怒鳴り散らす。

 留置所から解放された俺とリリアは首根っこを掴まれ、宿へ連行された後、正座をしながら説教を聞かされていた。

「だってリリアよりゴリラの方がマシだろ? 強いし。あと頭もコイツより良いと思うぞ? 森の賢者だぞ?」

 ポンコツ勇者と森の賢者どっちが良いかと言われたら誰も迷わないだろ。

「そ、それは否定しないですけど・・・・・・ゴリラですよ?」

「ゴリラ差別か貴様!」

「なんでそこでキレるのよ! でもまあ、あんたの言ってる事はもっともだと思うわ。確かにリリアはゴリラより弱いしバカだけど、私はリリアの方が良いわ。ゴリラよりも可愛いし」

「ちょっと皆! 私がゴリラよりも頭が悪い前提で話を進めるのやめてよ!」

 半泣きになりながら言うリリア。

「リリアの妄言は置いておいて、ラボ。あんた本当にゴリラを仲間にしたいわけ?」

「いや、全然」

 正直はじめは冗談で言っただけなのだが、リリアが予想以上にアホだったせいで、こんな事になってしまっただけだ。

そもそもゴリラなんか連れて旅してたら、頭おかしいだろ。

 俺の華麗な手のひら返しに、エレンとユーリはため息をつきながら、額に手をつく。

「本当にこんなんで魔王を倒せるのかしら・・・・・・」

 そんなもんはそこで無視されて泣いてる勇者様に聞いてくれ。さっきから相手にして欲しそうにこっちをチラチラ見てるぞ。

 そんな視線に気づいたのか、エレンはリリアをちらっと一瞥して話し始める。

「そうですねえ。こんな泣き虫でかまってちゃんな勇者ですもんね。前から疑問に思ってたんですが、勇者って何なんですか? 私の中では強い人だって認識なんですが、リリアって信じられない位弱いですよね? 一体どういった基準で選ばれてるんですか?」

 と、そんな疑問を投げかけてくるエレン。

 まあ知らなくてもおかしくはない。勇者と言えば人間族の最終兵器。そんなものの情報など簡単には魔族に出回らないだろう。俺だって四苦八苦して集めた様々な本を読んでなければ知らなかった。

 そんなエレンの質問に答えるべく、ユーリはつらつらと話し始める。

「勇者は光の魔法を使える人間の事よ。誰かに選ばれるわけじゃなくて、それが使えれば自動的に勇者認定。ただ、使える奴なんて百年に一人生まれるか位の確率だからね、そうそう世に出てこないのよ。大昔に一度だけ同時期に二人いたこともあるみたいだけどね」

「へー、光の魔法・・・・・・光・・・・・・明るい・・・・・・眩しい・・・・・・・・・・・・ハゲ?」

「ハゲじゃねえよ! そんなこと言うからリリアが本当に泣いちゃっただろ? 光の魔法ってのは、えーと、ようするになんでもありの魔法なんだよ。昔実在した光剣の勇者はその名の通り光の剣を振るったし、慈光の勇者は癒しの光を与え、光速の勇者は壁にぶつかって死んだんだよ。光に関すればなんでもできるとかいうチート魔法だ」

 それ以外の魔法は全て極めたとすら言える俺も、そしてあの魔王すら扱えない、最早神の魔法とも呼べる魔法。

歴代の勇者はそれを駆使して、魔王軍と戦い、光速の勇者以外は皆恐ろしい敵だったと聞く。

 だから、期待していたんだがなあ。

 俺は部屋の隅で膝を抱え、ハゲじゃないもん壁にぶつからないもん、などと小さな声で繰り返す勇者を見る。

 ・・・・・・なんでこいつがそんなとんでもない魔法を使えるんだ。というより、こいつの魔法はどんなのなんだ?

 正直こんなアホの魔法はそこまで期待できるものではないだろうが、それでも光の魔法だ。魔王をぶちのめす為の一助となるだろう。

 じゃないとここまで来た意味ないし。

「リリアの魔法はどんな感じなんですか?」

 エレンも気になったようで、いじけているリリアに声をかける。

「・・・・・・やだ。教えない」

 ぷいっとそっぽを向くリリア。

 なんだこいつ、ぶっ飛ばそうか。

「あ! ラボが睨んだ! 怖いからもう絶対教えませ「光るのよこいつ」ちょっとユーリ! 人がせっかく適当にはぐらかそうとしてたのに何で教えちゃうの!?」

 リリアがユーリに詰め寄り、喧嘩が始まる、が・・・・・・。

 は? 今なんて?

「お、おい、お前ら、ひ、光る? リリアが?」

「「うん」」

 お互い頬を抓り合い、少し涙目になりながら、当然のように返してくる。

 リリアが光る? 

「そ、それは破壊光線を出すとかそういった感じ?」

「そんな恐ろしい技じゃないわよ」

 ユーリは何言ってんだこいつみたいな目を向けてくる。

 お前らこそ何言ってんだ。勇者だぞ? 勇者の魔法だぞ? それがただ光るだけなんてことあって言いわけが・・・・・・そうか!

「回復能力! 慈光の勇者みたいに癒しの光を使えるんだな?」

「ふふふふふ・・・・・・よく気づいたねラボ」

 不適に笑うリリア。どうやら正解のようだ。

 そうか、回復能力か。攻撃手段としては使えないが、慈光の勇者はその魔法でいくら傷ついても死なない軍団を作り上げたという。

 もしこいつに慈光の勇者並みの力があれば、魔王を倒すことも夢では――。

「よく人から目に優しい光だねって言われるよ!」

「マジで使えねえなお前!!!!」

 ――夢のまた夢であった。

「つ、使えないって何!? 光るんだよ!? 目に優しいんだよ!? ダンジョン攻略にはもってこいだよ!? 松明として人生を歩もうとしてた私をここまで連れてきておいてそんな言い草はひどいと思う!!!!」

「松明としての人生って色々おかしいだろうが!」

 なんだよ光るって! なんだよ目に良いって!

 そんなんでどうやって魔王倒せば良いんだよ!!!

「まあまあ、落ち着きましょうよラボ」

 頭を抱えて叫ぶ俺をエレンが宥めてくる。

「落ち着けって、こんな奴がどうやって魔王と戦うんだよ! 弱いし馬鹿だし、特殊能力は光るだけだぞ? ハゲたおっさん連れてった方がマシだわ!!」

「あ! またそんなひどいこと言う! もういい! 頼まれたってラボの前では絶対光ってあげないから!」

「誰が頼むか! 大体お前が光ってようが何してようが、見たいわけが――」

「でも光るの体だけだから透けるのよ? 服の上から中が見えちゃってほぼ全裸」

「――おいリリア。いやリリア様。ちょっと光ってくださいお願いします」

 ユーリの言葉にすかさず土下座で頼む俺を見て、皆ドン引きの表情。

 どうしてだろう。そんな表情をされるのは釈然としない。魔王討伐に向けて一緒に旅する仲間なのだ。どんな能力があるか事前にしっかりと把握しようとするのは当然ではなかろうか。

 決していやらしい気持ちではなく純粋な情報交換だ。決して顔だけは俺のタイプにぴったりと一致するリリアの体を見たいとかそういう気持ちは微塵もない。

 だからエレン。涙目で振り上げたその拳を振り下ろすのはやめ――。


「それで今日はどうするんですか? もう次の街に出発を?」

 翌朝、皆で朝食を取っていると、エレンがパンを頬張りながらそんなことを言い出す。

 昨日のエレンの一撃による怪我は魔法で完治したのだが、朝までずっと気絶していたので、体がだるい。正直今日は休んでいたいのだが。

「今日はお金を稼ぎます」

 そんな俺の願いはユーリには届かず、無情にも今日の予定を告げられる。

 お金を稼ぐ。

 今まで魔王のヒモみたいな生活をしてきた俺とエレンにとっては新鮮な言葉だ。

 ただ、旅をする以上、先立つものは必要なわけで、まあ当然の判断とも言えるのだが、そもそも勇者パーティの資金源って何なんだ?

「ええー。面倒臭いよー」

 と、心底嫌そうな顔をしながら言うリリア。

「・・・・・・リリア。あんた来月のお小遣いなしね」

「よーし、今日もお金稼ぎ頑張るぞー!」

 取り繕ったようにリリアは言った。

 こいつ、どうせ説き伏せられるんだから反論するのやめれば良いのに。

「ねえユーリ。勇者って一応人類の希望って扱いなんですよね? 王様から何かそういった資金面での補助とかはないんですか?」

 確かにエレンのいう通りだ。人間族の最強戦力なんだ。国から莫大な資金が提供されている、とまではいかなくても最低限の手助けはあっても良さそうなものだが。

 そんな俺たちの疑問に対して、ユーリは美味しそうにサラダを食べるリリアを顎でくいっと示す。

「あんたたちが王様だとして、リリアが魔王倒すんでお金くださいって言ったらいくら渡す?」

 自分の話になったのに気づいたのか、リリアはみんなの視線を集めながら、ふっと、自信満々に笑う。

 ・・・・・・・・・・・・。

「五百ゴールドくらいだな」

「同じく」

「低すぎない!? ちょっと二人とも、そんな、子供のお使いじゃないんだから」

「実際に貰ったのは百ゴールドよ」

「百ゴールド!? あのおじさんそんだけしかくれなかったくれなかったの? なんでみんな私にそんなに厳しいの?」

「ちなみに私は支度金として十万ゴールド貰ったわ」

「なんで!?」

 差別だ、依怙贔屓だ、などとリリアは騒いでいるが、いつものことなので、ユーリは無視して、俺たちへと向き直りながら尋ねてくる。

「ねえ、エルンとラボは冒険者登録ってもうしてる?」

 冒険者。

 魔族と戦う人間は主に二種類だ。国に正式に雇われた騎士団と、俗にいう何でも屋である冒険者。冒険者ギルドに登録されたものは冒険者として活動し、依頼をこなした報酬で生計を立てている。

 もちろん俺とエレンがそんなものに登録されているわけがなく、二人揃って首を横に振る。

「ふーん、そう。じゃあ今日はまず二人の冒険者登録からね。歴代の勇者様もそうなんだけど、今後旅の資金は冒険者として稼いで行くから、そのつもりでね」

「なあ、その登録って、何か身分証とかが必要なのか?」

 だとしたらかなり不味い。今から身分証を偽造なんてとてもじゃないが間に合わない。ただ、そんな俺の心配も杞憂だったようで。

「いらないわよ。そもそも冒険者なんて身元不明のやつが多いし。指名手配されてなければ、名前と年齢書いて登録完了よ」

 どうやら問題なさそうだ。

 人間と魔族の文字はなぜか共通だし、俺とエレンは字は問題なく書ける。あとは今日受ける依頼次第だな。

 そうして俺たちは意気揚々と冒険者ギルドへ向かうのだった。

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