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Phase.97 『やること色々』



 北上さんと大井さんが作ってくれた極上のカレー。それを食べ終えると、また皆思い思いにゆっくりと自分の時間を楽しんだ。


 だけど、皆焚火の周りに集まっている。それを見て、このチームはいいチームだと思った。皆、キャラクターはバラバラだけど根の部分では信頼しているし、纏まっている。


 丁度、皆も一カ所に集まってくれているし、今がいいかもしれないと思って立ち上がった。


「ん? どうしたユキー?」

「何処かに行くの、椎名君?」


 トイレに立ち上がっただけかもしれないのに、皆が俺に注目していた。皆も俺がそろそろ何かを言い出すのではないかと、雰囲気で感じていたのかもしれない。


「えっと――ちょっといいかな。皆に聞いてもらいたい事があるんだ」


 そう言うと、未玖は立ち上がり両手を胸元に当ててこちらに注目した。北上さんと大井さんも、俺の方へ向き直り、翔太も姿勢を正してくれた。鈴森は――うん、ちゃんといる。手作りウッドチェアに座って、行儀よくこちらに注目してくれている。


「とりあえず、俺達のクラン『勇者連合(ブレイブアライアンス)』の今後の活動を簡単に話しておこうと思う。いいかな?」


 全員が頷いてくれた。翔太は、なんかノリを良くしようと考えたのか口笛を鳴らそうとした。だけど、鳴らなかったようだ。やめてくれ、さっきからこっ恥ずかしい。


「今回俺は、もとの世界から追加の有刺鉄線を持ってきた。これと、更に森で木を伐ってこの拠点の防御を高めようと思う。折角、憧れの異世界に転移してきたし、この『異世界(アストリア)』がどんな世界なのか、冒険したりして色々な物を見て回りたい。だけどそれは、とても危険な事だと思う。現に俺は何度か魔物に襲われて死にかけた」


 俺の言葉を聞いて、未玖は頷いてくれている。北上さんや大井さんも同様。だけど翔太と鈴森は、いまいち――と言った感じ。二人はまだこの世界の魔物の恐ろしさを話しでしか聞いていない。


 スライムには翔太もやられていたけれど、あの恐ろしいゴブリンをまだ心の中では雑魚敵だとでも思っているのに違いない。正直、ゴブリン如きって俺も最初は思っていた。ゲームじゃ、定番の雑魚敵だから。


「でも俺はこの『異世界(アストリア)』に正直惹かれている。時間の許す限りこの世界にいたいし、冒険ももっとしてみたい。だから尚更、この世界で何かあっても逃げ込んだり体勢を整えられる場所が必須だと思っている。だからまずは、この俺達の拠点の防衛力を底上げして、もっと畑とか訓練場とか……今すぐにはあまり思いつかないけれど、施設的なものも充実させたい。そこから始めていきたい」

「うん、いいね。いいと思う」

「私も椎名さんのその考えに賛成かな」

「ありがとう、北上さん。大井さん」


 すると少し離れた所で話を聞いていた鈴森が立ち上がってこっちへ近づいてきて言った。


「それなら俺も……ちょっとだけ明日はもとの世界へ戻ってもいいか?」

「それはもちろんいいけど」

「ああ、解ってる。未玖がいるからな。直ぐに戻ってくる。今の椎名の話を聞いてな、トタンとか買って持ってこようと思ってな。トタンがあれば柵にちょっとした壁として配置すれば、外から中の様子が見えなくなるしな」


 なるほど。確かに外から拠点内がどうなっているのか見えなくなるだけでも、守りは強くなる。


 トタンか……倉庫の屋根とかそういうのに使われているイメージだけど――それを鈴森が用意できるならいいなと思った。試してみるのも面白い。


 翔太が言った。


「でもよ、それを柵に取り付けて覆ったら拠点内にいる俺達も外の様子が解らなくならねーか? 例えば森から何か敵が忍び寄ってきてもよう、気づかないっつーかよ」


 翔太の意見を聞いた鈴森は、ニヤリと笑う。


「そんなものどうとでもなる。外から中の様子が見えないという恩恵の方がでかいしな」

「どうとでもなるって、具体的には?」

「そんなの簡単だ。内側を晒しても外の様子が見たい場所については、はなからトタンなど張り付けなければいい。ただそれだと俺は柵にフェンスを使用したいがな」


 フェ、フェンス。フェンスって工事現場とかで見るあれか。確かにあれだったら、高さもあるし衝撃だって吸収できる。


 フェンスの網を切断する道具はあるけれど、魔物があれを破壊するには結構難しいかもしれない。フェンス……ちゃんと考えてみてもいいな。


「あとあれだ。トタンを壁にしている場所には、足場を組んで見張り台を作ればいい。そうすれば外から内は見えないが内側から外は見えるという訳だ。因みに見張り台には、そこの女子二人か俺が立てばいい。強力な飛び道具を持っているからな。うってつけだ」


 本当だ。鈴森の言う通りだった。俺は鈴森の考えに感服し、期待を込めて言った。


「じゃあ鈴森はそれができるのか? 誰かの助けがあればできるのか?」

「できる。明日からやるよ。でも材料はもとの世界から調達しなきゃなんねーからな。時間はそれなりにかかるけど、いいだろ」

「ああ、じゃあそれは鈴森に任せた。もし人手が必要なら遠慮なく言ってくれ」


 野良仕事を未玖に頼み、拠点を守る柵の更なる強化を鈴森に頼んだ。


 俺は続けて皆に、時間の空いている時でいいから未玖が頑張って作っている畑の手伝いをしてほしいと頼んだ。まずは、貯蔵庫と作業場と農具置き場。


 皆快く承知してくれた。だけど、北上さんが「はいはいはいー」と言って挙手して言った。


「それと……ドラム缶風呂っていうのは、まあしょうがないんだろうけど、お風呂場をもうちょっと考えて欲しいかなー」


 大井さんも続いて言った。


「お手洗いもできれば、男女別にしてほしいかな……」

「わ、解った解った! それも明日から考えるよ! 解ったな、翔太!」

「え? 俺?」


 風呂場とトイレ、それは俺と翔太でなんとか良くなるように考えようと思った。うん、俺達ならやれるはず。

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