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Phase.90 『新たな三人』



 ――――21時半。『異世界(アストリア)』。いつもの草原地帯にある女神像の前にいる。


 ふう……急いで帰って転移したら、なんとか22時までにこっちへくる事ができた。良かった。


 夜空を見上げると晴れ渡っていて、綺麗な星々と二つの月が見えた。ああ、やっぱりこっちの世界はいいな。明日も休日ならもっといいんだけどな。


 少しすると、北上さんと大井さんが目の前に転移してきた。いきなり目の前に光が放たれ、そこに人のシルエットが現れたかと思うと、転移してきたので驚いた。なるほど、こうやって俺も転移してきているんだな。


「お待たせ、椎名さん」

「今日から、よろしくお願いします」

「北上さんも大井さんもお疲れ様」


 見ると二人共、結構な荷物を背負っている。それに手には、弓⁉ 二人共、滑車のようなものがついている近代的な感じのする弓を手にしている。


「そ、それは?」

「え? なにが?」

「その弓みたいなものなんだけど?」

「ああ、これ。これはコンパウンドボウ。『幻想旅団(げんそうりょだん)』……私達のいたクランで、結構こういうのに詳しい人がいて、その人が国内で購入できる最強クラスの武器だからって……この『異世界(アストリア)』じゃ魔物がでるし、護身用としてもいいかなって思って海と奮発して買っちゃった」

「ふ、奮発……」


 そう言って、二人の持っている弓に目線を落とすと、今度は大井さんが言った。


「10万円以上したから、大きな買い物だったわ」

「じゅ、10万!! それは凄いな!!」


 自分の腰につけているサバイバルナイフ3本と、手に持っているお手製の槍を見た。


 うーーん。でも俺のこの槍だって素材にした棒は、水道橋の武道具店で購入した棒術用の棒なんだ。2万もしたし……でもなんだか少し負けた気がした。北上さんがにこりと笑う。


「それで秋山君も、来るんだよね」

「ああ、もう来ると思うよ。それにしても二人共、物凄い荷物だね」

「え? だって今日はこんな時間からこっちの世界へ転移してきているから。何をするのか聞いていなかったけど、夜に何処か冒険するっていうのも危険だし――親睦を兼ねて何処かでキャンプでもするのかなって思ってテントや寝袋、調理道具に食糧なんかも持ってきたんだけど」


 あれ? そう言えば北上さんにも大井さんにも、俺達に仲間がいる事も話したけど拠点の事を話していなかった。


「いや、実は今日は北上さんと大井さんの他にもう一人、新しく仲間になってくれた人が来るんだ。だから親睦を兼ねてっていうのは、間違っていないんだけど……実はこの近くに俺達の拠点があって……」


 俺は二人に未玖の事も含めて拠点の話をした。すると当然だけど、物凄く驚いた。


「うそーー!! 拠点があるの⁉」

「そんな場所を『異世界(アストリア)』で作っているなんて……椎名さんって凄い人だったんだ」

「いやいやいや、違う! 違うって! 俺と翔太とその未玖って子で作り上げたんだよ。他にもこの『異世界(アストリア)』で出会った人達にも手を貸してもらったし。皆で作ったんだよ」

「でもでも、拠点を作ったなんて凄いよ。早くそこへ行ってみたい!!」

「じゃあ、先に行く? もう翔太も来ると思うけど……」


 そんな事を言った刹那、翔太と鈴森孫一が目の前に転移してきた。グッドタイミング。これで全員揃った。翔太はにこにこしている。


「っしゃあ!! 美幸ちゃんも海ちゃんも来たな! うおーー、これは楽しくなってきたぞーー」

「おいおい、あまりはしゃぐな。ここは、ウルフの群れが出没するエリアだぞ。全員揃ったなら、まずはさっさと拠点に移動しよう。話はそれからでもできるだろ?」

「ああ、確かに。それじゃ行こうか」

「待てーーーい!!」


 折角話も纏まってこれから拠点へって所で、鈴森孫一が皆……っていうか、俺を呼び止めた。


 鈴森も、北上さん達と同じく大量の荷物を持っている。背中に大きなザックに両手にもバック。最初にこの世界へ来た時の自分を思い出した。


「どうした、鈴森? 拠点に急ぎたいんだが」

「先にこれだけ言わせてくれ。疑ってすまなかった! 異世界は確かに存在する」

「ああ、そうだ。存在する。でも魔物もいるし得体の知れない世界だ。とても危険な世界だ」

「解っている。翔太から詳しく聞いたし、十分理解している。それでリーダーの椎名を疑ってしまった事の謝罪と、この『異世界(アストリア)』に連れてきてくれた上に仲間に入れてくれた事に対して感謝したい!」

「ああ、どういたしまして。それに謝罪なんて……」


 翔太がニヒヒといやらしく笑った。


「そういや、お前300万ユキーに支払うんだよな。賭けに負けたもんなー」

「も、もちろんだ! もちろん払う!!」

「いや、もういいって。そんなのノリで言っただけだろ? 翔太もそれは解っているだろーが。鈴森に証明する為に俺達から誘った賭けだったしな」

「うーーん、確かに」

「いや、そんな訳にはいかんだろ!! 俺は椎名を信用しなかった。嘘つきのドグサレ野郎だと思った!!」


 ド、ドグサレって……い、言い方……


「もういいって言っているだろ! 賭けに勝ったのは俺だ。じゃあ俺の言う事に従ってくれよ。それよりここは意外と危険なんだ。兎に角、俺達の拠点にまず来てくれ。それからだ」


 俺達の拠点と聞いて、鈴森も目をキラキラと輝かせて興奮した。


 さて、皆を連れて拠点に戻ろう。3人も新たに仲間が増えて楽しくなってきた。きっと未玖は物凄く驚くだろうな。

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