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Phase.88 『鈴森孫一 その1』



 やっぱり我が家に女の子を呼びたくない。せめて予め解っていれば、備えていたのに――掃除なり済ませてからにしてほしかった。


 北上さん達は特に気にしないと言ったけれど、こっちが気にするのだ。


 そんな訳でやっぱり恥ずかしいから北上さんと大井さんをうちに呼ぶのは、断ってしまった。代わりに今晩家に戻って『異世界(アストリア)』に行くタイミングでメールして知らせると伝えた。


 勿論、勤務時間が終わった所で、北上さんと大井さんを非常階段の方へ呼んで、一度一緒に『異世界(アストリア)』へ転移した。本当に北上さんと大井さんのスマホには、『アストリア』のアプリが入っていたのを目にする。


 これでいい、準備オッケーだ。


 早速北上さん達と、いつもの草原地帯にある女神像の前に転移すると、また会社に転移して戻ってくる。


 こうしとく事によって、二人の転移先はあの草原地帯の女神像に書き換えられた。


 今晩また連絡するからと言って二人と別れる。二人とも、俺達のクランに招き入れると言って物凄い喜んで感謝してくれていたけど、まだもといたクランに在籍しているのに、本当にいいのだろうかと考えてしまう。なるだけ面倒なトラブルは避けたい。


 北上さん達と別れた後、会社を出ると翔太が待ってましたとばかりに俺が出てくるのを待ち伏せていた。ここから中央線で御茶ノ水まで出て、そこから乗り継いで総武線で秋葉原だ。


 『異世界(アストリア)』の話に花を咲かせながら、翔太と二人で電車に乗って秋葉原に到着した。


 いつもの馴染みのある電気街口を出ると、俺が秋葉原にくればちょいちょいよるファミレス、バニーズへ入った。ここで翔太の友人と待ち合わせをしている。


「いらっしゃいませー、バニーズへようこそー」


 店員さんに案内されてテーブル席に通される。後で、もう一名来ると伝えたので4人席へ通してくれた。


 座ってメニューを広げると、翔太がステーキやハンバーグなどのガッツリしたページを開いた。


「はあーー!! 腹減ったーー。何か俺食おうかなーー。ユキーはどうする?」

「人に会うんだろ? 俺は初対面だし、とりあえずアイスコーヒーだけでいいよ」

「お前、珈琲ばっかだな。よいしょっと!」


 ピンポーーーン


 翔太はテーブルに備え付けられているスイッチを押して店員を呼ぶと、ステーキとライスやらなんやらがセットになったものと、フライドポテトを注文。更にビールまで頼みよった。


 正直、俺がアイスコーヒーだけでいいよって言った理由は、人と会うからという訳ではない。なんとなくそう言っただけで、本当は未玖の事を考えていた。未玖はまだ何も晩飯を食べずに俺達が来るのを待っているかもしれない。だとしたら、今俺だけ先に美味い物を食っているなんてできなかった。


「うっひょーー!! キターーー!! ステーーキ、キターーー!!」

「まったく、お前って奴は……なんとも欲望に忠実な奴だ」

「プッハーーーー!! 美味いっ!! この一口の為に生きているぜ!!」


 ビールを飲んでこのセリフ。まあ朝まで『異世界(アストリア)』にいて、戻ったら一日仕事だもんな。美味い物を掻き込んで酒を飲みたくなる気持ちも解る。だが俺はもう少し……未玖に会うまで我慢しようと思った。


 翔太と向かい合う形で座ったので、アイスコーヒーを飲みながらひたすら夢中になってステーキにがっついている翔太を見ていると、その翔太の隣に誰かが立った。


 見ると眼鏡をかけたロン毛の男――この人がもしかして。


「おおーー!! やっと来たな、孫いっちゃん! ほら、こっち座れ。そして注文しろ」

「ああ、それじゃアイスコーヒーでももらおうか。わざわざ呼び出したんだ、当然おごりな」

「はいはーい。いいよ、好きなん貪れ」


 翔太はテーブルのスイッチを押して店員を呼ぶと、アイスコーヒーを追加で注文した。そして言った。


「そんじゃ紹介するな。こっちは、俺のマブで同じ職場仲間でもある心の友、椎名幸廣君ね」

「ど、どうも。椎名幸廣です」

「それで、こっちが俺のマブでネトゲ仲間でもある心の友、鈴森孫一君ね。俺は孫いっちゃんって呼んでるけど」

「……鈴森孫一だ。よろしく」


 鈴森さんが挨拶した刹那、翔太が彼の頭にチョップした。


「なにが鈴森孫一だ!! っだ!! 普通は、ですだろーが!! ユキーは、あれだぞ。俺と同い年だから孫いっちゃんより一つ年上だぞ」


 そうなんだ。って事は鈴森さんは30歳って事か。30と言えば丁度、脂の乗っている年齢だ。俺は万年平社員でうだつがあがらないけれど。


「はははは、いいよいいよタメ口で。その方が俺も話しやすい。それで鈴森さんは何か仕事をしているのか?」

「してない、俺はニートだ」


 ニート。あれ、ニートだった。そう言えばそんな事を翔太が言っていたか。


 ニートならずっと家にいるから……いや、ずっと家にいるからニートなのか。まあそれはいいけど、ニートなら『異世界(アストリア)』に好きな時に行って好きな時間いられるって訳か。


 しかも翔太が言うには、鈴森さんはその性格に難があるって言っていたのを思い出した。なんとなくだけど、人付き合いが得意な方ではなさそうだ。


 でも、同時に信頼もできるとも言っていたな。


「タメ口で今いいって言ったよな。じゃあ俺は椎名って呼び捨てにさせてもらう。その代わり、俺の事も好きに呼んでくれていい」

「ハハ、いきなりだな。でもまあ、その方が俺も助かる。それじゃ俺も鈴森って言うな」

「いいだろう」


 翔太が鈴森を肘でつついた。


「お前、いちいち偉そうなんだよ。ユキーは優しいから許してくれているんだぞ」

「あーーあーー、肘でつつくな。そんな事より、面白い話があるって言っていたよな翔太。今日は大切なイベントがあるからよ。さっさと話し聞いて帰りてーのよ。早速聞かせてくれよ」


 翔太から事前に聞いてないと、なんだこいつは? って思うレベルではあると思った。


 翔太は丁度ステーキを食べ終えた所で、鈴森に順を追って『異世界(アストリア)』の事を話した。

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