Phase.84 『クラン その2』
俺達のクラン名。
そんなのいきなり決めると言っても、なんて名付ければいいのやら。
急に翔太が立ち上がり、自分で考えていただろうクラン名を発表する。こんなにスラスラと出てくるなんて、きっと以前からクランを結成しようと考えていたな。
「ええーーーー、じゃあクランを結成する事にあたり、クラン名を名付けるという事で、まずは俺から発表したいと思う」
「どうぞ」
「は、はい。お願いします」
「ジャカジャガジャカジャカ、ジャジャン!! 俺の考えたクラン名! それは――『漆黒の剣』だ!!」
「わあーー、かっこいいです」
「うーーん、如何にも中二っぽいなあ」
「ナハハハハ。発表するとなると、あれだな。ユキー相手ならどうという事でもないけど、未玖ちゃんもいるからなんだか恥ずかしいな」
「でも、カッコいいです! わたしもゲームはする方だったので、素直にかっこいい名前だと思います」
「へへへー、そうだろ! 漆黒のけんにするか、つるぎにするか悩んだんだよねー。つるぎって言えばなんだか重厚な感じがして強そうだけど、悩んだあげくスタイリッシュに、けんにしたんだよ」
「なんとも翔太らしい名前だなー」
「それじゃあ、次は未玖ちゃん」
「え?」
「え? じゃなーーい! 一人、一つあげるの! さあ、未玖ちゃんも発表して!」
「え? え? そんな事をいきなり言われても……」
翔太に迫られて、もじもじする未玖。決めたらどちらにしても暫くその名で通すつもりだろうし、もっと考えた方がいいとは思うけれど……翔太は強引にもうこのタイミングで、クラン名を決めてしまう気だな。
翔太に急かされて、苦しみに苦しんだあげく未玖はようやく自分の考えたクラン名を口に出した。
「そ、それじゃあ……ネ、ネコネコ探検隊……」
「はいーー、次はユキー!! ユキーはもういいクラン名浮かんだ? 何も無いなら、俺の考えたクラン名になっちゃうよ」
「えええ、わ、わたしのネコネコ探検隊は……」
ブルブルと震えながら、翔太の腕を掴む未玖。だけど翔太は、俺にクラン名を決めろと迫っていた。うーーん、何かいい名前はないか。
「うーーん」
「無いなら、もう俺のやーつにしまーす」
その時、はっと頭に浮かんだ。俺や翔太や未玖。それに長野さんや佐竹さん達の顔も――皆、もとの世界では普通の一般人だけど、この『異世界』では、全員が勇者だ。
ファンタジーRPGの定番主人公と言えばなんて言っても勇者だろう。
「えっと……『勇者連合』っていうのは、どうだろう?」
「ブブブブ……ブレイブ……アライアンスだと?」
翔太も未玖も目を丸くして、暫し静まり返る。まいったな、すげー恥ずかしい。
するとピンピンに張った糸を断ち切ったかのように、翔太と未玖が声をあげた。
「いいじゃねーか!! かっこいいじゃねーか!! それ気に入ったぜ!! 『勇者連合』!! それで決定だな」
「いいですね。翔太さんのクラン名もかっこいいと思いますが、ゆきひろさんの考えたクラン名も凄くいいです」
「え? え? そう?」
こういうのって結構恥ずかしい。でも翔太も未玖も気に入ってくれているし、とりあえず俺達のクラン名はこれでいいかと思った。
クラン名を名付けるのも自由、気に入らなければまた新しい名前を考えて変更すればいいんだから。
翔太が叫んだ。
「それじゃ、俺達は今この時からクラン『勇者連合』を結成だ。クランリーダーはもちろんユキーな」
「お、俺かよ。いいのか?」
「当然だろ? この拠点は、我らが『勇者連合』の拠点って事になるんだし、ここはユキーと未玖ちゃんの拠点だろ? じゃあユキーがリーダーだよ」
「違うよ」
「何がだ?」
「ここはもう俺と未玖と翔太の拠点だ。その方が、解りやすくていいだろ」
「ユキーーー!!」
「ゆきひろさん!!」
翔太と未玖が抱き付いてきたけど、翔太だけ手で押して抵抗した。
「ありがとう、ユキー。でもあれだぞ、やっぱリーダーはユキーがいい。適当にそう思った訳でも、ここを最初に見つけたのがユキーだからという事だけじゃない。リーダーをするんだったら、少なくとも俺はユキーが適任だと思っているからな」
「わたしも翔太さんと同意見です。ゆきひろさんがリーダーでいいと思います」
翔太と未玖に、持ち上げられて物凄くこそばゆくなった。だけど、ここまで言われたらもうやるしかない。
「ああ、解った。それじゃこの椎名幸廣、謹んで『勇者連合』のクランリーダーを引き受ける事にするよ。期待に添えるかは不明だけど、善処します」
こうして俺達の拠点に続き、クランが誕生した。まだたった3人だけど、拠点を大きくする事を考えれば、仲間を増やしていく事は必要不可欠だ。そしてその為には、チーム名というかクラン名があった方が都合はいい。
「それじゃユキー!! クラン名も決まった事だし、これから午後はどうする? ここはひとつ、ちょっと近場でもいいから冒険に出るか!! なあ?」
「そうだな。それじゃ、拠点を囲んでいる柵に異常が無いか見て回って、気になっている所を強化しようか」
「ええええーー!! 作業じゃん!! 作業ばっかりじゃん!!」
「わ、わたしはもう少しでコケトリスの家が完成するので、続きをしてもいいですか?」
「もちろん! コケトリスの家は、未玖に頼んだ! さあ、それじゃ食後の運動がてらに柵を見に行くぞ。翔太、行こう」
「ええーー、俺もっと冒険がしたい」
ウキウキとしながらコケトリスの家を作る未玖。作業より冒険に出たいとわがままをいう翔太。
今日は日曜だから、明日からまた一週間が始まる。そしたらまた昼間は未玖一人になってしまう。
今のうちに、少しでもこの拠点の防備を高めておかないと、未玖の事が心配で会社になんて、とても行ってられないと思った。




