表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/472

Phase.82 『魚 その2』



 タニシのような貝。前回、未玖とこの川に来た時に見つけて気になっていた。


 俺はスマホを取り出すとアプリを起動し、【鑑定】で川の中にいる貝を調べた。




名前:マキガイ

種別:貝

説明:綺麗な川に生息している貝。食用にできる。




「……説明はこれだけ……か。まあそうだろうなとは思っていたけど。でも知りたい事が解った。このマキガイという貝は、食用にできる」


 続けて俺は川の中で見つけた海老や蟹にも【鑑定】を使ってみた。カワエビとカワガニ。どちらも食用にできるようだ。


 【鑑定】が使えるようになった今、この川も含め森の中を調べて回れば、もっと色々と食糧やら薬になる植物なんかも手に入れられるだろう。俺達が拠点にしているこの辺りは、非常に恵まれたエリアだ。


 翔太を見ると、槍を川の中に放っては跳びはねて悔しがり、暴れまわっている。楽しんでいるなー。それを横目に俺は、バケツを手に取るとそこへ川の水を入れて置く。そして川の中からマキガイを獲って、バケツに入れた。


 マキガイはタニシのような大きさの貝で、食用といっても焼いて食べるには少し小さい。きっと食べづらいだろう。だからスープに使ってみようと思った。貝っていうのは、とてもいい出汁がとれる。


「うおお!! こ、この魚め!! なかなかやるな!!」


 気が付くと、翔太はパンツ一丁になっていた。川の深い方へ入って行く。


「翔太、気を付けろよ」

「ああ、大丈夫。俺も未玖ちゃんに負けてらんないからな。頑張って、全員分の昼飯を確保するぜ!!」


 随分とバケツにマキガイを集めた。これ位あればいいだろう。次はカワエビだ。見ると海老は、ハサミも身体も細長かった。大きさも15センチ位はあるだろうか。これなら腹の足しにもなる。


 よし、捕まえるぞ!!


 最初は海老を手掴みしようとした。しかし捕まえられない。手を水面に近づけるだけで、ピクリと動く海老。そしていざ掴もうとすると、ビュンっと後ろに跳ねて海老はいなくなってしまった。これはかなり難しいぞ。


 川辺で夢中になって1時間程、海老と格闘していると翔太が叫んだ。


「うっしゃーーー!! やったぞおお!!」


 振り返って見ると、翔太の槍の先に魚が刺さっている。


「見ろ、ユキー!! 魚を突いたぜ!!」

「うおーー、やるな翔太」


 ううう……凄いけど、ちょっと悔しい。翔太にはあえて詳しくは言ってなかったけど、前回魚を獲った時に俺は、1匹も獲れなかったのだ。その時は、未玖が魚を獲った。


 俺はマキガイの入ったバケツを水辺に置くと、裾をまくり上げて、自分のお手製の槍を手にジャバジャバと川に入った。翔太に負けてはいられない。


「おおー、ユキーもついにやる気になったか!!」

「俺はずっとやる気だよ。川に生息している貝がいるんだけど、調べてみたら食用だからそれを獲ってたんだよ。海老も獲ろうとしたけど、まるで無理だな。このままだと昼になってしまうから、今日は海老を諦めて魚を獲るよ」

「そうか。じゃあユキーは向こういってやってくれ。同じところで魚を獲ってたら、全部向こうへ逃げちまうだろ」

「確かにもっともだ。解った、俺は向こうにいって獲るわ」


 ジャバジャバと川を歩いて行く。すると、向こうに鹿がいるのが見えた。こちらを見ている。だが俺は、気にせずに前進した。すると鹿は、ササ――っと森の中へと消えていった。


「さて、魚を獲るか」


 



 ――――腕時計を見ると、時計の針は12時を回っていた。年甲斐もなく、俺も翔太も川遊びというか魚突きに夢中になってしまっていた。しかしその甲斐もあってか、合計6匹! 魚を突くことができた。これだけ獲れれば十分だ。


未玖もそろそろ心配している頃だろうと俺と翔太は、獲った魚とマキガイを持って拠点へと戻った。途中、森の中ウルフの群れを警戒しながら戻ったが、特に襲われるというような事はなかった。


 拠点に戻り柵を抜けて敷地内に入ると、小屋の方から未玖がこちらに駆けてきた。翔太は手を振り、俺は駆け寄って来た未玖に、食糧調達の成果を見せて報告した。未玖は、声をあげて喜んだ。


「やっぱりこの貝、食べられるんですね」

「ああ。マキガイって名前だ。海老もいたけど、とても捕まえられなかった。あれはまた今後の課題かな。とりあえず味噌を持ってきているし、マキガイは味噌汁にしてみようと思う」

「はい。それじゃ早速焚火を熾して、お昼ご飯の支度をしますね」


 準備に向かおうとする未玖を、翔太が呼び止めた。


「未玖ちゃんの方は、どうだった? コケトリスの小屋は完成した?」

「まだですよ。まだ完全じゃないです」


 翔太にアルミラージの角の粉末の効果を見せる為に、朝生やして見せたログアップの木とレッドベリーの木。その下にコケトリスの家ができていた。


 確かにまだ作りかけ、完成まではもう少しというところだが、見るとその家の中にコケトリスが入ってゆっくりしている。


「み、未玖!! 未玖の作ったコケトリスの小屋の中にコケトリスが入っているぞ!!」

「あっ!! 本当!! 本当に入ってますね!!」


 驚きを隠せない未玖。それを見て大笑いする俺と翔太。


 コケトリスはまだ一度も卵を産んではいないけど、これで落ち着ける場所ができた訳だし、卵を産むかもしれない。そう考えると、コケトリス1羽だけじゃ毎日3人で卵を食べるには足りないと思った。


 あのコケトリスは、この拠点の周辺にいた。あれ1羽だけって事はないだろうし、探せばこの辺りにコケトリスの生息している場所があるかもしれない。


 コケトリスを新たに見つけて、家畜として数を増やす。それもいいなと思った。川にいた海老と同じく、今後の課題にしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ