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Phase.76 『佐竹さん達の装備について』



 焼いた肉の他に、もとの世界から持ってきたお菓子とか、おつまみ的なものも振舞った。酒も。それ位、佐竹さん達の協力には感謝していた。


 皆、思い思いに宴の時を満喫している。


 佐竹さんは右手に煙草、左手に酒の入ったマグカップを持って近づいてきた。


「よお、リーダー」

「リーダー?」

「椎名さんの事だよ。この拠点のリーダーなんだろ?」


 ああ、そういう事かと思った。


「所で椎名さんは、この『異世界(アストリア)』に来てまだ日は浅いんだろ? 何か危険な魔物とか遭遇したか? 異世界人とか?」


 俺も異世界にやってきた時は、エルフとかドワーフとか獣人とか会えるものだとワクワクしていた。だが未だに、異世界人には一向に遭遇していない。危険な魔物は、沢山いるのにな。


 サーベルタイガーにゴブリンにウルフ。そしてスライム。


 サーベルタイガーはどう考えても大物だが、他の魔物はファンタジー系ゲームでは定番の雑魚敵。だけど実際に遭遇してみると、俺にとっては十分に危険な魔物だった。それらと遭遇した話を、佐竹さんにして聞かせる。


「確かにそうだよなー。テレビゲームとかじゃ、ゴブリンやウルフなんかも最初に戦う雑魚敵だったりするんだけどよ。リアルだと、おっかねえよな。今日も皆で森に伐採作業をしに行っていた時に、ウルフの群れに襲われて小貫がヤバかったしな」


 小貫さんはあの時、ウルフに足を噛まれた。でも直ぐにこの拠点へ連れ帰り、ちゃんと処置して薬草を塗って包帯を巻いておいたので、少しぎこちないけど普通に歩ける位にまでは回復している。


 今晩ぐっすり休めば、明日また佐竹さん達と冒険の旅に出るのに特別支障はないだろう。


「佐竹さんは、この『異世界(アストリア)』で冒険の旅を続けているんだよな。俺がヤバいと思ったのはゴブリンだったけど、佐竹さん達は何かヤバいなって思った魔物に遭遇した?」

「ああ、あったな。ちょっと前に言ったと思うけど、猪の魔物と遭遇してな。4人でなんとか死に物狂いで仕留めたけど、あれは正直ヤバかった」

「猪の魔物……」

「ブルボアっていう名前の魔物だ。よく肥えた奴で、とんでもない突進をしてきたよ。大きな金属製の盾で俺と須田で受け止めようとしたら、吹っ飛ばされてその盾もひしゃげたよ」

「と、とんでもない猪だな、そんななの」

「戸村が隙をついてブルボアの脇腹に剣を滑り込ませたのを見て、全員で一気にかかって四方から襲い掛かって、なんとかしとめる事ができたんだ。1人とか2人で挑んでいたら、殺されていたかもしれないな」


 たまにもとの世界でも、ニュースで猪や熊が山から下りてきたとかで、人の住んでいる所に出没して騒動になる。


 猪は熊同様に危険な動物だと言っていたけれど、この『異世界(アストリア)』にいる佐竹さんが倒したその猪は魔物なのだ。俺達のいた世界の猪よりももっと攻撃的で、危険なはず。


 佐竹さんは続けた。


「でもな、ブルボアなんだけどな。殺した後に、このままにしておくのも、なんだかもったえないと思って……大変だけどその場で、4人で頑張って解体したんだよ。それでまずは、腹も減っていたから調理とかそういうのは簡単でいいよって、シンプルに焼いて塩胡椒で食べてみたんだけどよ。それが物凄く美味しかったよ」

「ええ! そうなんだ。ブルボア、美味しかったんだ」


 猪の魔物というからには、味も猪に近いのだろうか?


「でも獣臭くはなかった?」

「少し、ほんの少し癖があったかな。でもめちゃくちゃ美味しかった」


 そうなんだ。そんなに美味しかったのなら、俺もブルボアを食べてみたいと思った。長野さんや佐竹さんのように俺も狩りをして肉を手に入れてみたい。


 だけど皆俺とは違って、狩りには慣れている。長野さんは経験に加えて銃もあるし、佐竹さんは仲間とチームワーク、それに剣や槍に盾なんかも……あれ、そう言えば佐竹さんに剣を二本もらったんだった。立派な剣。その事で、是非聞いておきたかった事があったんだった。


「そう言えば……」

「ああ、なんだ?」

「佐竹さんから頂いた立派な剣二本。それに今、佐竹さん達が装備している金属製の装備。それってこの『異世界(アストリア)』の物だよな」

「ああ、そうだよ」

「それって……佐竹さん達は、いったい何処で手に入れたんだ? 異世界人には会ってないというから、異世界人から買ったり貰ったりして手に入れた訳じゃない。すると、一番考えられるのは街とか村とか城とか……そういう所で見つけた?」

「ピンポンピンポン、正解。明日、俺達はまた冒険の旅に出るが、また何かでここへ来るかもしれない。だから椎名さん達と、今後の友好関係を築いておきたいので、特別に教えてやろう。ここから南西の方へずーーっと行くとな、古戦場跡(こせんじょうあと)がある。そこには、異世界人のものと思われる屍が山のようにあってな、ついでに武器や防具も沢山落ちていたんだ」

「つまり佐竹さん達はその場所を見つけて、そこで武器や防具を手に入れたという訳か」

「そう言う事だ。でも椎名さん達がそこへ行くつもりなら、しっかり準備してからの方がいいかもしれない。そこは何と言うか……なんか気持ちの悪い空気が漂っていてな。夜は、確実に出ると思う」

「で、出る!? 何が?」

「解るだろ? ここは、ファンタジー世界なんだぜ。火の玉のようなものを俺も見たし、戸村が動いているガイコツを見たって言っていた。用心してすぐその場を離れたがな」

「ガ、ガイコツってもしかしてスケルトン……」

「だろうな。それと、ここからその古戦場跡までは距離もある。だから行くなら、十分に準備を整えてからにした方がいいだろう。途中、危険な魔物に遭遇する事だってあるだろうしな」


 これは驚いた――古戦場跡。そんな場所がこの拠点から遥か南西の地にあるだなんて。


 そこに行けば、きっと今よりももっと、この『異世界(アストリア)』の事について、何か解るかもしれない。


 今は確かにまだ準備が足りなさすぎるが、佐竹さんから有益かつ面白い情報をもらえた。

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