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Phase.75 『よく働いた』



 俺達も、ちょっと遅れ気味の昼食を食べ終えた。


 その後、翔太と話した。佐竹さん達の力を借りれば小屋を更に一つ二つ作れるなという話になり、彼らに手を貸してもらった。


 俺と翔太と未玖、そして佐竹さんに戸村さんに須田さん。この6人で、大して休むことなく更に拠点内に小屋を作る。作業を続ける。


 夕方には、最初に建てたものに加えて2軒の小屋を新たに建てる事ができた。ふう、やれやれ。明日はまたこれは筋肉痛でえらい事になりそうだ。それに身体も汚れたし汗ビショビショで、風呂に入りたい。


 翔太が言った。


「それにしてもこんなに小屋を建ててどうするんだ? 丸太小屋の他に、これで拠点内に三軒も小屋がある事になるぞ」

「1つは、食糧貯蔵庫として使いたいなと思ってな」

「ほう、食糧貯蔵庫ね」

「全部の食糧を丸太小屋にっていうのも、なんだかなあって思ってな。あと翔太が、ここへ連れてきてくれるって言っていたネトゲ友達がいるって言ってたろ?」

「ああ、鈴森孫一、孫いっちゃんな」

「その友達が使ってくれもいいと思う」

「なるほど。しかしそれじゃ残る一軒はなんなんだ?」

「いや、まだ決めてないけど、多くて困る物でもないだろう。俺的には、どちらにしてもこの先小屋とかもっと増やして行く事になるだろうなって思っている」

「ふうー、確かにそうかもしれないな。しかしこれで丸太小屋に加えて俺達のハンドメイドの小屋が3つ、俺のテントと佐竹さん達の4つのテント。こりゃもう、本当にここは拠点というかアジトと言ってもいい位なんじゃねえか」


 俺もそう思った。佐竹さん達4人は、明日ここを出て行く予定だ。そうなるとここには、俺と翔太と未玖の3人だけに戻ってしまう。


 だけど翔太は一人、ここへ連れてきたいと言っている友人がいるみたいだし、そう考えるとこの先もっと俺達の拠点に人が増えてくる事も考えられる訳だ。


 それなら先を見越して柵や馬防柵だけでなく、施設なども色々と充実させておくのもいいかもしれない。勿論、なにより防衛力は優先しなきゃならないけど。


 翔太と未玖を連れて丸太小屋の方まで行き、焚火場所の前に立つと、空が夕焼け色になってきていた。拠点の端の方にある、佐竹さん達の設営しているテントの辺りから、佐竹さん達がこちらに向かって歩いてくる。


 戸村さんと須田さんの間に、小貫さんがいる。二人に肩をかしてもらって皆と一緒に俺達のいる丸太小屋の前にある焚火場所までやってきた。焚火場所の前に小貫さんをゆっくりと座らせると、佐竹さんが言った。


「そろそろ晩飯にしようかなと思って。生憎食糧がそれ程ある訳でもなくてな。希望がなければ、ちょっと戸村と須田を連れて、これから森までなんかしら肉でも獲ってこようと思うんだが……」


 今から森に? それは危険だと言おうとした所で、翔太が言った。


「それなら俺に任せろ。佐竹さん達には、柵作りに柵の補強、そして有刺鉄線を張るお手伝いに木の伐採、小屋作りまで手伝ってもらっちゃったからなあ。たった一泊ここにっていう代金としても、吊り合わないだろう。だから今晩の晩飯は俺に任せなさい!!」

「食糧を分けてもらえるなら、ありがたいが……いいのか?」

「いいって! って言っても、食糧は俺に任せろって言っているだけで、調理は手伝ってくれよな」


 翔太はそう言ってキメポーズをとると、スゴスゴと丸太小屋に入って中から大きなクーラーボックスとバーベキュー用の大きな網を二枚持って出てきた。


 まさか……


「ジャジャーーーン!! 今日は皆しっかり働いてくれたからな。じゃんじゃん食べてくれ!!」


 クーラーボックスを開けると、沢山の肉。しかも牛だけかと思ったら、鶏や豚、ゲソやホタテとか海鮮まで詰め込んでいた。


 こういう所が、まさに翔太らしい。もちろん、誉めている。その証拠に未玖もクーラーボックスを覗き込んではピョンピョンと飛び跳ねて喜んでいるし、佐竹さん達も歓喜の声をあげている。


「翔太、それなら酒も振舞おう。今日は皆、それだけの働きをしたしな」

「りょーかい!! それじゃ、うちのボスの許可が出たので早速飲む酒を井戸の方へ持って行って冷やすとしようぜ」

「マジか、これは楽しくなってきたな。戸村、秋山さんを手伝ってやれ」

「ああ、解った」


 また酒盛りができるぞーっと、あからさまにウキウキしながら、戸村さんと一緒に大量の酒を持って井戸の方へ歩いて行く翔太。


 俺は未玖や佐竹さん達と一緒に、焚火を二カ所作って各々に網を乗せると、翔太の持ってきたクーラーボックスから早速肉やらを取り出して焼き始めた。


 それにしても、翔太の奴……肉や海鮮は嬉しいけど、野菜がまったくない。バーベキューをするなら、玉葱や茄子、南瓜とかキャベツも欲しい。


 ジュジュジューーーッ!!


「こ、これは美味そうだな。見て匂いを嗅いでいるだけで、口の中に唾液が広がってくる。俺も何か手伝いたいんだけど」

「小貫さんは、休んでいてくれた方がいいと思う。それより、足首の傷はどう?」

「ああ、椎名さんと未玖ちゃんが親切に治療してくれたから、もうすっかり大丈夫だよ。薬草も効いているみたいだし、今晩しっかり睡眠をとれば明日は問題なく旅に出る事ができると思う」


 薬草が効いていると聞いて、未玖と目を合わせた。未玖もニッコリと笑っている。


 翔太と戸村さんが酒を冷やしに行って帰ってくると、宴が始まった。俺のクーラーボックスには、冷えているビールが何本か入っているので、井戸に持って行った酒が冷えるまでこれを飲む事にした。未玖以外の皆にビールを配り終えると、佐竹さんが乾杯の音頭を取ってくれた。


 楽しい宴が始まった。

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