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Phase.69 『4人組 その1』



 翔太はドラム缶風呂作成の作業に取り掛かった。未玖も薬草畑の世話と、コケトリスの卵がないか探して回ると言ったので、俺は俺で前回来た時に作った木人で小一時間程剣の練習をして汗を流した。


 うーーん。やはり、汗を掻くと風呂には入りたくなるな。翔太の風呂作りに期待しよう。


 それからお茶を飲んで一息つくと、未玖と一緒に拠点の周囲を囲っている柵に異常がないか見て回った。翔太も仲間に入った事だし、またもう少し敷地を拡げて柵も強化し例の有刺鉄線を張る作業もしていきたい。


「ゆきひろさん……」

「うん、どうした?」

「わたし、ゆきひろさんと出会って……翔太さんとも出会って凄く今、楽しいです。ゴブリンに襲われたり怖い思いもしましたけど、今この場所にずっとゆきひろさん達といたいと思っています」

「ああ、俺も翔太も同様に思っているよ。でもこんなくらいで満足しちゃだめだ。もっとこの場所を、俺達が住みよい楽園にしていくし、夢にまで見た異世界生活だからな。危険だと解っていても、心躍るような冒険がしたい」

「わ、私はずっとゆきひろさん達といたいから……」

「解っているって。俺もずっと皆といたい。もとの世界じゃ俺なんて、なんでもない男だからな。食べる為とゲームとか趣味の為に金を稼ぐだけの仕事をして、このままでいいのだろうかって不安を抱きながらも何もできずに毎日を過ごしている。だけど、この『異世界(アストリア)』じゃ、なんでもできそうな気がしている。いや、なんでもしたい気かな」


 そう言って未玖にニコッと笑いかけると、未玖もにっこりと微笑んだ。


 そろそろ拠点の周りを一周しようかというところで、森の方から声が聞こえてきた。


「おおーーーーい!!」

「な、なんだ? 誰かいるのか?」


 人がいる⁉


「おおーーーーい!!」

「ゆきひろさん! あそこです!!」


 未玖が指をさした先を見る。すると森の中から4人の男達が現れた。男達は、こちらに歩いてくると柵までやってきた。


「こんにちは」

「こ、こんにちは」


 いきなり挨拶をしてきたので、返す。って挨拶って、素性の解らない者同士でもいきなりするもんなんだっけ。


 未玖は、サッと俺の後ろに隠れた。


「ここは、君達の住処なのか?」

「ああ、そうだ」


 4人の男達は、鎧や兜をかぶっている者もいて、剣や槍、盾なども装備していた。異世界人……ではないようだ。鎧や胸当てなどの防具の下に着込んでいる服は、どうみても俺達のいた世界の服。


 しかし警戒は怠ってはいけないと思った。なぜなら、別に『異世界(アストリア)』でなくても俺達のいたもと世界でも善人もいれば悪人もいる。それにこの『異世界(アストリア)』には、法律も交番も警察官も無いのだ。


 つまり、無法者はこの『異世界(アストリア)』で無法の限りを尽くせるのではないか。それを少し前から考えていた。


 俺は未玖に合図を送って、翔太に武器を持たせてここへ来るように頼んだ。未玖は頷いて、翔太のいる小屋の裏へと駆けて行く。


 俺は右手を腰に吊っている剣にの柄に当てて、柵の前にいる4人の男達と会話を続けた。


「そ、それで、何か用か?」

「いや、用というか……」


 男の一人がどもると、もう一人の男が進み出て言った。


「すまない、先に名乗るべきだな。この『異世界(アストリア)』じゃ、誰が誰でどんな奴かも解らないからな。君の衣服から察するに、日本人だろ? 俺達もそうだ。俺の名前は、佐竹茂(さたけしげる)。このクラン、『竜殺旅団(りゅうさつりょだん)』のリーダーだ」

「クラン?」

「ああ。俺達4人、日本では気の合う職場の仲間でな。この『異世界(アストリア)』にデビューしてから、パーティーを組んで冒険しているんだ。パーティーって解るだろ? RPGゲームとかで、仲間作るやつ」

「ああ、知っている」

「それだ。それで、4人だけじゃななくてもっとこの先、仲間を増やそうと思ってな、『竜殺旅団』って名前をつけてクランを作ったんだよ。かっこいい名前だろ、それっぽくて」

「なるほど、そういう事か……それで、ここへはなぜ?」

「たまたまだ。旅を続けていたら、森の奥に何か人工物……この柵が見えて誰か人がいると思ってやってきたんだ」

「そうだったのか」

「それで、頼みがあるんだが……」


 佐竹という男が話を続けていると、後方から未玖と武器を持った翔太がこちらへ駆けてきた。やっぱり、翔太がいると心強いな。


 翔太は俺の隣に並ぶと、両手に鉈を握って構えた。それを見た男達は慌てて言った。


「待て待て、俺達は敵じゃない!! ちょっと落ち着いてくれ」

「じゃあ、何しに来たんだよ! そんなたいそうな武器をぶら下げてこられても、警戒しない訳にはいかないだろ」

「ちょっと待て、翔太。今、話しているから」


 翔太にそう言うと、鉈をとりあえずおろした。


「俺の名前は、椎名幸廣。それで、佐竹さんの頼みというのは?」

「椎名さんね。話を聞いてくれて感謝する。俺達はこの『異世界(アストリア)』に転移しては新たな女神像を探して旅をしている。目的は、もちろんこの『異世界(アストリア)』を冒険する事なんだがね。そろそろ何処かで、休息できる場所があればと思って探していたんだ。もし可能なら、椎名さんの住処……この場所で休ませてもらえないかと思って」


 佐竹さんという男の言っている事を聞いた俺は、翔太と未玖と目を見合わせた。二人の意見も聞いてみないと、判断できない。

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