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Phase.68 『鑑定とコケトリス』



 ――――土曜日の朝。


 俺は翔太と一緒に、テントの中で目覚めた。そう、小屋の中ではなく俺も翔太の住まいにお邪魔して、一緒に寝てしまったのだ。


 まあ、遅くまで一緒に酒を飲んで、これからの異世界(アストリア)での活動を語らっていたら自然な流れだった。


 だけど、やっぱり夜は冷える。毛布一枚でテントの中で寝るには、凍えそうだった。俺も寝袋を買わないとまずい。


「お、おはようございます。ゆきひろさん、翔太さん」

「未玖ちゃーん、おはよう!!」

「おはよう、未玖」


 起きるなり、可愛い女の子の顔が目に飛び込んでくる。未玖の照れながらも朝の挨拶をする姿に、翔太はニッコニコしている。だが、確かにこういうのはいい。


 未玖に加えて、翔太もこの俺達の拠点の仲間に加わってほんとに楽しい。翔太が賑やかな性格をしているっていうのもあるけれど、俺達の拠点が更にパアッて明るくなった感じがする。


 テントから這い出ると、翔太が叫び声をあげた。


「な、なんだああ、ありゃああ⁉」

「うるさいよ、なんだよ!」


 翔太の声に未玖がビクっとしたので、注意してやった。すると翔太が敷地内――向こうの方を指をさす。するとそこにはコケトリスが歩いていた。


「ああ、あれか。あれはコケトリスって言うんだ」

「コ、コケトリス⁉ コカトリスじゃなくてか?」

「コカトリスだったら、えらい事になるだろが。俺もお前も皆、石化されちまうかもだろ。お前がここへやってくる前に、俺と未玖で捕まえたんだ。捕まえるの、かなり大変だったんだぞ」

「へえー、すげえなあ! あれ、食べるのか?」

「……解らない。とりあえず、鶏に似ているし卵でも産むかもしれないって思ってな」


 そう言えば、雄か雌か調べていなかった。今の俺は、コケトリスを調べる事は可能――試してみるか。


「未玖」

「は、はい」

「そう言えば、もとの世界へ戻った時に、例の秋葉原の店に行って俺もスマホに【鑑定】のアプリ機能を入れてもらったんだ」

「それじゃあ、あのコケトリスが卵を産むか解りますね」

「うん、そうだね。早速試してみようか」

「はい」

「ウッシャーー!! なんだか面白そうだ、試そう試そう!!」


 翔太も凄い乗り気だった。っていうか、肩を組んで来たのでウザいと振り払ってやる。


 まったくもう、朝からなんてテンションだ。でも俺と未玖、二人でいた時よりも圧倒的に賑やかになった事については、本当にありがたい。心強さもある。ゴブリンがまた襲撃してきたとしても、今度は翔太も一緒に戦ってくれるのだから。


 俺達はコケトリスの近くまでよると、スマホを向けて『アストリア』のアプリを起動した。そして【鑑定】を使用する。カメラが起動したので、それでコケトリスを捉えた。



 

名前:コケトリス  

性別:雌  

種類:魔物

説明:攻撃してくる事もあるが、危険度は少ない。肉は美味しく、卵も美味しくて食用にできる。




 え? これだけ?


 【鑑定】で見られる情報は、とても簡単なものだった。だが名前や食用にできるかどうか、危険度など解るだけでも圧倒的に役に立つと思った。


 いや、俺的にはこんなアプリ機能があるのであれば10万円払ったとしても、絶対に使用できるようにしてもらった方がいい。『異世界(アストリア)』で生きていくのに必須の能力だと思った。


「どうだ、ユキー? 解ったか?」

「ど、どうですか、ゆきひろさん?」

「うん。こいつは雌だ。卵も産むし、肉も美味いらしいぞ。でも卵を産むなら、それを食べてみたいし……こいつを食べるのは、今の所は無しだな」

「そうかー。でも卵産むのか。それなら食べてみたいな、コケトリスの卵焼き!! いや、目玉焼きからがいいかな」


 確かにフライパンも食用油も持ってきている。とれたての卵焼きに目玉焼き……いいなあ。


「よし、それじゃあ朝飯にしよう」

「はい。それじゃわたし、早速焚火を熾してお湯を沸かします」

「おおー、了解! 俺も未玖ちゃんを手伝うぜー」


 ――――3人いると、朝食の準備もあっという間に終わる。それで食事を終えて、時間を見るとまだ朝の7時だった。しかも今日は、まだ土曜日。帰るのは月曜日の朝として、これからまだなんでもできるぞ。


 食後の珈琲を未玖が入れてくれた。それを飲みながら、今日の予定について話す。


「翔太は、今日は何かするって決めてるのか?」

「うーーん。折角の異世界生活だしな。冒険して魔物と戦う……っつっても、かなり危険なんだろ?」


 未玖と一緒に、頷いて見せる。


「ああ、かなり危険だ。俺も何度か死にかけた。でも準備ができたら、この拠点の周辺からでも少し調査はしてみるつもりだ。まだ全然この世界はおろか、拠点周辺の事だってまったく解っていないし」

「ふむ。確かにそうだな。先に準備を万全に整える方が、先決かもしれないな。この拠点だってゴブリンに襲撃されたんだもんな。ふーーむ……よし、それじゃ俺は今日は、あの持ってきたドラム缶で風呂を作る」

「五右衛門風呂かー。いいなあ」

「ご、五右衛門風呂ってなんですか?」

「未玖は知らないか。五右衛門風呂っていうのは……要は、翔太はあのドラム缶を使ってドラム缶風呂を作るって言っているんだよ。俺達も入りたいけど、一番の理由は、未玖の為に作りたいって翔太がな」

「やめろって! 俺も入りたいんだよ!! そんなの未玖ちゃんに言うなよー、恥ずかしいだろーが」


 未玖は、自分の為に翔太が風呂を作ろうとしている事を知って、驚いた表情をした。そして喜んだ。


「あ、ありがとうございます、翔太さん!! わたし、嬉しいです!!」

「いいっていいって。俺も入りたいっつったろ? これからいい感じのを作るからよ、楽しみにしていてくれ」


 翔太はそう言って珈琲をぐぐっと飲み干すと、早速作業を開始した。どうやら小屋の裏手、薬草畑と逆の方に風呂場を作るらしい。

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