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Phase.66 『ネトゲ友達 その2』



 ――――鈴森孫一(すずもりまごいち)。30歳で、俺や翔太の一つ年下。翔太のネトゲ友達で、FPSゲームで知り合ったらしい。


 最初はとんでもなく翔太の事を罵ってきたらしくて、翔太も罵声を浴びせて散々な関係だったらしい。


 でもいつもそのゲームで顔を合わせる事になり、罵りあっているうちに、リアルであって飲みに行こうって所まで発展したというから驚きだ。翔太との付き合いは俺も長いが、たまにこういう所は解らなくなる。


 それで翔太曰く、その鈴森孫一なる男が頼りになるという話だ。


「でも変わり者なんだろ?」

「かなり変わり者だなー。しかも一般的に見れば危ない奴かな」

「え? 危ないって……そんな奴、未玖に会わせて平気なのか?」

「それは大丈夫。孫いっちゃんは、ロリコンじゃないし女より……武器とかそういうのが……」

「おいおいおい、ひょっとしてミリタリーマニアか!? 本当に大丈夫なのかよ、断言できるか?」


 翔太は自信満々に頷いて見せる。うーーん、心配だ。翔太がここまで断言するっていうのなら、大丈夫なんだろうが、それでもその友人の話を聞いていると、不安になってくる。


「おっ! そろそろ会社戻んねーとやばいな。また山根の奴に嫌味攻撃を喰らわされる。とりあず、来週セッティングするからよ。孫いっちゃんにユキー、会ってみてくれよ」

「お前がそこまで言うなら解った、会ってみるよ。日程は都合のいい日でいいけど、場所は何処にする?」

「そんなの決まってるっしょ!」


 ――ずばり、秋葉原だ。


 なるほどな。俺との面談をして仲間入りしたら、そのままマドカさんの店に行って『異世界(アストリア)』に転移できるようにするっていう手筈か。何と手際のよい事だ。


 会社に戻ると、早速デスクに張り付いて仕事に励んだ。今日頑張れば、金夜が待っている。


 



 仕事を終えると、俺と翔太は飛び出すように退社した。翔太とは「また後で」と言って会社の前で別れて、俺はオムライス専門店に向かって注文していた品を受け取ると、真っ直ぐに練馬にある我が家へと帰宅した。


 それからネット通販『jungle』で注文していた物が届いたので、それを受けとりザックへと詰め込んだ。それでも持ちきれない程の荷物、この間と同じく両手にも持った。


 さて、行くか!! 未玖が待っている!!


 いつもの服に着替えると、首にタオルをかけてベルトに三本のサバイバルナイフを装備する。手にはお手製の槍と懐中電灯――そしてスマホ。


 忘れ物は、ないはず!! 俺はアプリを起動させて『異世界(アストリア)』へと転移した。


 



 ――――『アストリア』。いつもの草原地帯。早速、周囲を懐中電灯で照らす。


 誰もいない。狼がまた襲って来る可能性も考慮して警戒しながら、未玖が待つ俺達の拠点へと歩いた。


 森に入る辺りにまでくると、結構な荷物を持ってきているので指が千切れそうだと思ったが、夜にこんな所でノロノロとしているのも危険極まりないので、我慢して急いだ。


 拠点に到着し、柵を越えると丸太小屋の方へと向かう。あれ? 翔太はまだ来ていないのか?


 きょろきょろと異常がないか見回していると、小屋から未玖が出てきた。


「おーー、戻ったぞ!」

「おかえりなさい、ゆきひろさん」


 なんか、もうこの場所が俺の家みたいだ。でもあながち間違ってもいないと思う。俺の心は間違いなく、今一番ここにあるのだから。


「未玖、早速だけど渡したい物がある」

「え?」


 何かを察して驚く未玖。


「まずはこれだ。オムライス。俺と翔太の分もあるんだけど、後で一緒に食べよう」

「オ、オムライス!!」


 未玖の目が潤んでいる。こんな反応を見せるんなんて、思ってもいなかった。もしかしてよっぽどオムライスが好きだったんだろうか。次に俺は、未玖の為に買った服などを手渡した。


「オムライスはとりあえず、小屋の中へ。それで、これは服だ」

「服! わたしのですか?」

「そうだ。下着も入っている。ずっとそのままって訳にもいかないだろうし、何着か買ってきた。サイズは思ってるより一つ大きい物を選んだつもりだから、着れないって事は無いと思う」


 そう伝えた刹那、未玖が俺に抱き付いてきた。これには、驚いた。


「ありがとうございます……こ、こんなに気を遣って頂けるなんて……」

「いいのいいの。俺達は仲間……っていうか、ここじゃ家族みたいなもんだしな。これでもいい歳した大人だから、気にしないでくれ」

「ありがとうございます、とても嬉しいです!」


 未玖はお礼を何度も言うと早速小屋に駆けこんでいき、俺が買ってきた服に着替えてまた現れた。


 どういう服を買っていいのか解らなかったし、完全に俺の趣味になってしまっているけど、新しい服に着替えた未玖は物凄く可愛らしく見えた。


「よーし、それじゃ焚火を熾そうか。まずは珈琲でも飲もう」

「あの……」

「ん? なに?」

「あの……その……秋山さんもいらっしゃるんですか?」

「ああ、来るよ。別々に家に帰ったから。それにきっとあいつは、あいつで何か色々用意してくるんだと思う。だからもう少ししたら、ここにやってくるんじゃないかな」

「そ、そうですか」


 翔太が来るのを未玖も楽しみにしているようだ。ハハハ、皆仲良くやっていけそうで良かった。


 そう言えば、翔太の友人の話……未玖にもちゃんと話しておかないとなと思った。

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