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Phase.65 『ネトゲ友達 その1』



 昼休み、またあのオムライス専門店に行こうと思った。翔太と二人、会社を出ようとすると北上さんと大井さんが話しかけてきた。


「椎名さん、良かったら私達とランチしません?」

「え? 俺達と? まいったなー、どうするユキー? って、あいたっ!」


 北上さんと大井さんを見てデレデレの翔太。その足に膝でゴツンとやってやった。


なぜ北上さん達が俺達なんかとランチしたいのかは解らないけど、迂闊にご一緒したら『異世界(アストリア)』の話なんてできない。俺は翔太を睨みつけた後、申し訳ない感じで北上さんに言った。


「ごめん、ちょっと翔太と大事な話をするつもりだったから」

「えーー。昨日も断られちゃったから、今日はいいかなって思ったんですけど」

「ごめんなさい、プライベートな話だから」

「それじゃあ――月曜日に私達と一緒にランチしませんか?」

 

 突っついてくる翔太。こいつは女とみればこれなんだから。まあそりゃ俺も、本音は北上さんや大井さんのような可愛い女子が誘ってくれて嬉しいけど……


 それでも俺達にはもっと重要な事があるだろ? 北上さん達の前でゴブリン対策とかそんな話できるのかよ。未玖の事だってあるし、聴かれたらきっと中二病とか変な奴だと思われる。


「おい、ユキー! これはもうアレなんじゃないのか! いたしかたない的なやーつなんじゃないのか!」


 ほんと、どんだけ北上さん達とランチ行きたいんだよ、こいつは!


「……駄目ですか?」

「いや、解った! 解ったよ。それじゃあ月曜日、4人でランチしよう」

「やったーー! ありがとうございます! それじゃ、約束忘れないでくださいよ」


 そう言って北上さんは大井さんとにこやかに目を合わせていた。ど、どういう事だ? まさかこの俺が、北上さんか大井さんに好意を寄せられているとかそういう……いや、騙されるな。過去に騙されて、何度心を引き裂かれたか。それを思い出すんだ!!


 いや、俺じゃなくて北上さん達は翔太の事を……


 翔太の方を振り返ると、なめまわすような目で北上さん達を見送っていた。うん、やっぱそれはないか。


「よし、じゃあ俺達もオムライス食いに行こうぜ」

「おおー、行こう!」


 オムライス専門店に到着すると、早速俺と翔太は自分達の食べたいものを注文した。それとアイスコーヒー。すると、翔太が珍しくいいことを言った。


「しかしここのオムライス、うめーよな」

「そうだな。オムライス専門店だからな。そりゃ美味いよ、最高のオムライスだよ、うん」

「あのさー、ここのオムライスさあ。未玖ちゃんにも食べさせてやりたいよなー」

「…………確かに!」


 早速持ち帰りができないか店主に聞いてみると、オッケーだった。だから3人分持ち帰りでオムライスを注文し、会社が終わったら取りに来ると伝えた。


 翔太め。なかなかいい気配りができる男になった。何様目線で翔太を見つめていると、翔太が言った。


「俺の転移アプリだけどさ、もうあの草原地帯の女神像にインプットされてるんだよな」

「ああ、大丈夫なはずだ」

「じゃあ、今日は各々自分の家に帰ってそこから、『異世界(アストリア)』へジャンプすればいいのか」

「そうだな。それで問題ないはずだ。ただあの草原地帯と、拠点を囲んでいる森もそれなりに危険な場所だからな。転移したらちゃんと警戒して、危険を少しでも感じたら一旦自分の家へ転移して戻れ。安全そうなら、寄り道は絶対にせずに一気に拠点へ急いで行け」

「そんなの解ってるってー! 俺は子供じゃねーんだからよ」


 口を尖がらせる翔太。ほ、本当に解っているんだろうな、こいつ。


 本当にいつもおちゃらけているなと思っていると、急に真面目な表情をした。


「ユキー。あのさー、ちょっと俺考えたんだけどよ」

「うん? なんだよ」

「ユキーが俺に『異世界(アストリア)』の事を教えてくれて、連れて行ってくれただろ?」

「ああ、連れて行った。かなり危険な所でもあるってちゃんと伝えたつもりだけどな」

「解ってるって! 自己責任だろ? ちゃんと理解している。それでな、考えたんだけど俺も一人『異世界(アストリア)』に連れて行きたい奴がいるんだよ」


 え? またいきなり驚くべき発言をするなと思った。でも別にその翔太が誘いたいって人物が信用できる者で、死ぬかもしれないってちゃんと理解しているなら問題はないとも思った。


「別にいいけど、そのお前の友人っていうのはどうせネットで知り合った友達なんだろ? 信用できるのか?」

「ああ。確かにネットで知り合った奴だけど、かれこれ5年位の付き合いになるし、たまーにあったりもする。ちょい変な奴だけど、信用はできる奴だぜ」

「おい、変な奴って……俺達の拠点には未玖もいるんだぞ? 大丈夫なのか?」

「それだよ。だからだよ」

「どういう事だ?」


 翔太の考えている事が解らない。だけどこういう所で、結構理にかなった事を思いつくのも翔太だった。


「ユキー。お前、拠点に残してきている未玖ちゃんが心配じゃねーのか? お前の仲間には俺も加わったけどよ、それでも平日は俺もユキーも揃って仕事だろ? その間に未玖ちゃんに何かあったらどうする?」

「それは考えているよ。なんとかしなきゃって考えている。未玖がスマホを持っていたら、俺達が仕事が終わるまで俺のオンボロアパートでゲームしたりテレビでも見て待っててくれればいいが、そうはできないから……」

「だよな。つまりそう言う事だよ」


 あっ! 翔太の考えが解った。


 翔太は、俺達が出勤している間でも『異世界(アストリア)』に居れて、尚且つ信頼できて未玖の事を任せられる心強い友達がいると言っているのだ。

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