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Phase.61 『共に転移』



 練馬区にある築60年のオンボロ木造アパート。皮肉も入り雑じってるけど、愛しの我が家へ辿り着いた。


 高円寺で仕事を終えて秋葉原へ。それからメイド喫茶? 『アストリア』へ行って翔太と晩飯とか買い出しして、今帰宅したから時間はもう22時近くになっていた。


 まずいな。急がないと、未玖がかなり不安になってしまっているかもしれない。それにゴブリンとか何かが襲撃してきている事だって考えられる。


 狼やスライムなんかじゃ、あの強化した柵を越えて敷地内へ侵入するのは困難だろうが、ゴブリンは柵を動かしたりして入り込んでくる。そんな事を考えていると余計に不安になった。


「お邪魔しまーーーす」

「ああ、入れ。でも直ぐにまた玄関で靴を履いてもらうぞ」

「おう! 未玖ちゃんって子が待っているんだもんな! そりゃ、急がねえと。ッハーー、本当に異世界何て存在するのかよ、オラワクワクしてきたよ!!」

「馬鹿言ってないで直ぐ用意しろ。着替えるなら着替えて」


 翔太はこのままうちから俺と一緒に『異世界(アストリア)』へ転移し、明日の朝にまた一緒にここへ戻ってくる。


 そして一緒にここから会社へ出勤しなくてはならないので、今着ている服など汚れると不味いのだ。だからさっき帰りがけに向こうで動きやすいように、服や靴に下着なんかも買ってきてもらった。


 俺が服を着替え始めると、翔太も部屋にあがって服を着替えだした。


「あっ! ユキー!!」

「な、なんだよ、どうした?」

「い、異世界にこれから行くんだよな! 俺、異世界へ行くんだよな! 夢じゃないよな!」

「しつこいなー。信じるって言っただろ? これからアストリアっていう異世界へ行く」


「そ、そこってファンタジーゲームみたいな世界なんだよな」

「多分な。結構危険な感じで、話した通り拠点を作ったんだ。異世界がどうなっているのかもっと探索はしたいけど、まだその為の準備ができていないから、ずっとその拠点で活動をしているんだよ」

「うおーー、すげえ!! つまり俺もそこの仲間入りってわけか」

「仲間入りって言っても、未玖と合わせて3人だけどな。っていうか、そろそろ行くぞ。未玖が心配だ。話したい事があるなら向こうで話そうぜ」

「ま、待て待て!!」

「なんだよ」

「ま、魔物がいるんだよな」

「ああ、いるぞ」


 翔太は、俺が腰のベルトに吊り下げている3本のサバイバルナイフと、手に握っているお手製の槍を見つめている。


「な、なんだよ」

「なんだよじゃねーよ」

「ああ?」

「お前、それ武器だろ?」

「そうだよ、武器だよ。『異世界(アストリア)』は危険な魔物がいるからな」

「俺、武器ねーんだけど」

「は?」

「俺!! 武器ねーーんだけど!!」


 …………


 そう言えばそうだった。この時間帯なら、女神像のある草原地帯に転移すれば、狼の群れに遭遇する確率もある。他にも危険な魔物は数知れずいるし、手ぶらで行くと言うのも無謀な話だと思った。


「大事な事だから二回言うけど、俺……ユキーが持っているような武器持ってねーーんだけど!! ま、魔物とか出ても、とても素手で戦えないんだけど!!」


 俺は『異世界(アストリア)』にまた持って行こうとしていた、部屋の隅にある荷物の山から金槌を取り出して翔太に渡した。


「ど、鈍器じゃねーか!! こ、これで戦えと!?」

「もーー、うるせーな! はいっこれも使え」


 キッチンに行って包丁を手に取ると、それも翔太に手渡した。


「おーいいねー。俺もユキーみたいに棒を見つけてそれにこれ巻き付けて槍を作ろうっと!」


 ようやく落ち着いたので、いよいよ『異世界(アストリア)』へ向かう事にした。買ってきた晩飯やらお菓子や酒やらを持って、玄関に移動し靴を履く。


「しかしお前……」

「なんだよ、別にいいだろ? ユキーが動きやすい服装っつったからじゃん」


 翔太のスウェット姿に溜息を吐いた。これからジョギングでもしに行くつもりかよ。


 スマホを出すと『アストリア』の転移アプリを起動した。うん、今度はちゃんと起動する。待っていろよ、未玖。すぐに行くからな。





『アストリアへようこそ。あなたをアストリアの世界へご招待します。アストリアは美しく幻想的な異世界ですが、魔物も存在し危険な世界です。それを理解していると共に承諾し、異世界へ転移しますか?』 





「準備はいいな、翔太!」


「おい! ぜってー後悔しねえし、お前に感謝こそすれ恨み何ていだかねえ!」


「いいだろう、じゃあ行くぞ!」


 


 ▶yes   no


 

 ピコンッ





 スマホから強烈な眩いばかりの光が放たれ、それが部屋全体に広がり何も見えなくなった。




 そして、気が付くとあの見慣れた草原地帯。そこにポツンとある女神像の前に俺と翔太は立っていた。


 翔太は暫く放心状態だったが、肩を叩くと「うおおおおお!!」って叫んで大興奮していた。俺は魔物を呼び寄せるかもしれないから叫ぶなと言って注意した。何度も頷く、翔太。興奮しているのが見て取れる。


「すげえすげえすげえ!! 本当にリアルだぜ!! リアルな異世界転移だ!! こんなの……信じるって言ったけど、とても信じられない。まるで夢みたいだぜ!!」

「翔太、ここはもう『異世界(アストリア)』だ。何処で魔物に襲われるか解らないし、俺は当初この場所でスライムや狼に襲われた。急いで拠点に行こう」


 そう言ったが翔太はついてこない。振り返ると、翔太はなんとスライムと対峙していた。


 嘘だろ!? それにあのスライムはまさか――

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