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Phase.465 『ナナキ その4』



 ジジイの知り合いのナナキって女は、どう見ても20代位の年齢で、先に知り合ったねねって女と同じく関西弁丸出しだった。


「あんた、誰や?」


 答えようとした所で、ジジイが割り込んできた。そしてナナキが肩を貸してここまで連れてきた男を見て、手を貸す。


「彼は鈴森君と言って、儂の仲間じゃ」

「仲間? 長野さんに仲間やて?」

「話しは後じゃ。それより、負傷している彼を小屋へ運ぼう」


 ジジイもナナキも、こういう事に手慣れているのか恐ろしく手際が良かった。俺やねねが手を貸す暇もなく、怪我をしている男はあっという間にナナキの小屋に運び込まれて、ベッドに寝かせて手当てをした。


「彼の名は?」

「知らへん。自分で聞いてみー。ワテは、森の中でこの人を見つけて拾うただけや。怪我していたさかいな。話もろくにしとらへん」


 ナナキにそう言われたジジイは、手当てを終えると、ベッドで安静にしている男に話しかけた。男は両足共に怪我をしていた。そして肩と腕、脇腹も刺し傷や切り傷、裂傷なども見られた。幸い、このナナキという奴の小屋には、そういった類の救急キットや薬などが完備されている。それに加えて、思わず目を奪われてしまう程の銃など武器の数。そういうに興味がある俺は、すっかり目を奪われてしまっていた。


 ジジイはこいつの事を商人だと言っていた。だからこれらは、売り物だろう。だから触れたい気持ちに鍵をかけて、とりあえず質問やらは我慢した。ジジイが男に話しかける。


「君、話せるか?」


 ベッドに横になっている男は、ゆっくりと頷いた。そしてジジイではなくナナキを見た。


「助けてくれて、ありがとう」

「はっは。ナナキには、感謝せんといかんな。命の恩人じゃもんな。それで、君の名は?」

「……永谷だ」

「永谷君か。それで君は、身体中が怪我だらけだが何かあったのか? 魔物に襲われたのか?」


 また頷く永谷。


「ゴブリンにやられたんだ。森の中を歩いていたら、いきなり襲われて……」

「ゴブリンじゃと? 一匹じゃったのか?」

「集団だった。集団で襲ってきたんだ。はっきりとした数は解らないが、何十匹っていて……奴ら、待ち構えていた上に一斉に……それで仲間……」


 そこまで言って永谷は、驚いた顔をした。みるみると顔が青くなる。


「もしかして、仲間の事か?」

「いきなり襲われて、まず先頭を歩いていた奴が倒れた。次に隣、あっとう間の出来事で、俺も槍や剣で突き刺されて恐怖して、殺されると思ってその場から逃げてしまって!!」


 なるほど、用は仲間を見捨てたって訳か。


「ふむ、必死だったんじゃな。それで君の仲間は生きていると思うか?」

「解らない。でも戻らないと……仲間が無事かどうか……俺は、助けに戻らないといけない」

「解った。とりあえず、一旦休みなさい。それで身体が動くようになったら探しに行こう」

「な、なに⁉ もしかして、あんた一緒に行ってくれるのか⁉ きょ、狂暴なゴブリンがいるんだぞ!! 俺はそこから死に物狂いで逃げて来た!! 生きているのが不思議な位だ!! なのに」

「大丈夫、儂にはこれがあるからの」


 ジジイはそう言って散弾銃を、永谷に見せびらかした。そしてニヤリと笑って余裕を見せる。それに安心したのか、永谷はそのまま気を失った。


 俺はジジイに突っ込んだ。


「おい! どういうこった!! こいつの仲間を助けに行くだと? 冗談じゃねえ!!」

「なんだ? 鈴森君だって、恩田君達を助けようとしたじゃないか。儂のいう事も聞かずに勝手にのう」

「うるせー、それでどうなった!! ああ? 結果はどうなったよ!! また同じ事になるぞ!!」

「じゃあ、ほうっておくかの」

「そうは、言ってねーよ!!」

「あー、ワテは行かへんで」


 ナナキだった。


「あてにされてへんかったら、アレやけどな。ワテは行かへんからな。ゴブリンっちゅうたら、RPGとかで雑魚キャラや。せやけどな、この『異世界(アストリア)』のゴブリンは、ごっつう危険なんや。長野はんに、今更言うこっちゃないけどな。でも先にゆーとこ思ってな」

「別にお前なんて、あてにしてねーよ」

「なんや、あんた」

「ナナキだったな。俺は、鈴森だ。俺も先に言っておくが、自分が嫌な野郎で嫌われ者だって事は既に自覚してるからよ」

「ああああーー!! スズモン、ナナキには簡単に名前教えてもーてるやん!! うちの時は、もったえぶってたのに」

「うるせーよ」


 ナナキと言い合っていると、間にねねが割り込んで来た。こいつ……

 

 ナナキは、溜息をひとつ吐くとジジイと向き合った。


「それでこの永谷はんのお仲間さんの事は、ワテには関係ないし、助けてここまで運んできて手当てまでしてな、十分や思うからそれはもうええねんけどな。長野はんは、いったいなんの用でここへ来たん。もしかして、何か買うてくれよーとして来たんかいな。それならな、ええのん入ってとるで」

「いや、まあそれもあるんじゃがな、実は折り入って話をしたいと思って来たんじゃ」


 ジジイはそう言って、来るべき日の事、もしその期間中にナナキが『異世界(アストリア)』に残るのなら、俺達の拠点に来て力になって欲しいという事などを話した。


 ナナキは、ジジイが話す間、完全に聞きに徹していた。そして話の内容よりも、今のジジイが仲間と共にいる事に驚いている様子だった。


 話を聞く限りでは、ジジイはこれまでずっと1人だった。ナナキはその事を知っていたのだ。なるほどな、そう感じるなら付き合いはそれなりに長いようだ。

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