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Phase.456 『小屋とやっかい事 その4』



 何かによって、小屋の中へ投げ飛ばされたように窓を突き破り、突っ込んきた六足ハイエナ。血だらけになりながらも、よろよろと起き上がった。そして俺達の顔を見るなり、まるで俺達が六足ハイエナに酷い事をした当事者であるかのように睨みつけて唸りだす。


 グルウウウウウ!!


「きゃああああああ!!」


 恵美という女が、先に悲鳴をあげた。マズいぞ!! 六足ハイエナは、恵美の方を振り返るとそのまま飛び掛かった。


 多勢を相手にする場合、敵の数を減らさなければ勝ち目はない。なら弱い所から攻める。魔物にしても利にかなっている。鉄則だった。しかも恵美という女は、わざわざデカい悲鳴をあげて、この中で一番殺しやすいのは私ですよって猛アピールしやがった。


 六足ハイエナは、恵美にのしかかるとそのままその白い首に噛みつこうとした。一番近くにいた恩田は、いきなりの事に驚いて尻もちをつく。ソファーにいた長木って奴もそうだった。後ろに、派手に転がった。だから六足ハイエナに対して、身構える事ができたのは俺とジジイだけ。


 恩田と長木が何もできないと解ると、次に恵美に一番近かったジジイが、六足ハイエナの身体を横から咄嗟に蹴とばした。ジジイはジジイだが、タッパは俺よかあるし身体も鍛えられていてデカかった。だから蹴りも強烈で、それをまともに喰らった六足ハイエナは、部屋の壁まで吹っ飛んで叩きつけられた。


 鉈を手に持っていた俺は、ジジイが動くと直ぐに後を追って蹴とばされた六足ハイエナにとどめを刺しに向かう。追い打つ。やらなければ、こっちがやられる。頭の中のスイッチを切り替えて、鉈を振り下ろす。何度も。鮮血が飛び散り、足が6本もあるハイエナの魔物は、完全に動かなくなった。


 この光景――恩田、長木は固まってしまっている。恵美は、俺の顔や身体に飛び散ったハイエナの血を目にして、恐れおののき助けたはずの俺から後ずさった。でも俺は、一向に構わない。


「ハイエナは、数匹いたぞ。獲物が小屋にいると解って、自分から突っ込んできたのか?」


 鉈から銃に持ち帰ると、窓に近づく。振り向かずに窓の外を見回しながら、ジジイにそう言った。


「いや、違うな。六足ハイエナは、狡猾な魔物じゃ。こんな自分が大ダメージを受けるような行動はとらんじゃろ」

「するとやっぱりか……」

「そうじゃ。六足ハイエナを吹っ飛ばせる力があって、そいつが近くを徘徊しているというのなら間違いないじゃろう。他でもない、アウルベアーじゃ」

「アウルベアー……そいつは、狙ってやったのか? ハイエナをこの小屋へ投げ入れるなんてことを」


 もしそうだとすれば、とんでもなくヤバい相手だ。偶然なら、狂暴なデカい魔物を相手にしていると思えばいいが……この小屋の中に餌になる人間がいて、しかも武装しているからまずは狂暴なハイエナの魔物を投げ入れてきた……そんな真似のできる奴なら、本当にヤバい。


「解らん。たまたまそうなったのか、それとも狙ってやったのか」

「そうか。あんたがそう思うって事は、そういう真似ができる魔物もこの異世界にはいるって事か」

「はっはっはっは」

「はあ? なんだ、いきなり。何が可笑しい」

「いや、やっぱり鈴森君。君も椎名君と同じく、この世界で凄く頼りになる男だと思ってな」

「は? 今はそんな事、どうだっていいだろ?」

「確かにそうじゃな。悪い悪い」

「……所でよ、そのアウルベアーってのは、例えば俺達の世界にいるヒグマとかそういうのと比べて、どっちがつええんだ? ヒグマって言ったら、相当ヤバいと思うが、俺はそれを相手にするつもりでいればいいのか?」

「そうじゃな。ヒグマは動物じゃが、アウルベアーは魔物じゃからな。魔物っていうのは、その身に魔を宿しておる生き物じゃ。儂らの常識は、通じん奴も存在しよるからな。魔物は魔物……得体の知れない極めて凶悪な猛獣と思っておいた方がいいな」

「そうか……」


 ドンドンドン!!!!


「きゃああああああ!!」


 扉を何かが叩く、大きな音がした。いや、叩くというよりはぶつかっている音。衝撃音。


 恵美がそれを聞いて、またデカい悲鳴をあげた。なんだ、こいつ!! そんなに怖いなら、なぜこの世界へ足を踏み入れやがったんだ!! イラつきから、そんな気持ちが溢れる。


「うるせえええ、女!! 黙ってろ、殺されたいのか!!」


 いきなりの俺の発言に、恵美は驚いて黙った。口が悪くてびっくりしたか? もっと優しい声をかけて欲しかったか? 冗談も休み休みにしろ。こっちは、もしかしたらこれからヤバい魔物に襲われて殺されるかも知れねーって時に、会ったばかりの女にそんな気を遣っていられるかよってんだ。もしそんな奴がいたら、間違いなく馬鹿だな。


「おい、いくらなんでももっと……」

「はあ? うるせー、お前も黙ってろ!! 死にたくなければ部屋の隅で大人しく震えていろよ。そうしていれば、死なずに済むかもしねーからよ」

「はあ? なんだと、お前!!」


 長木って野郎が絡んできた。まったく、こんな時になんだこいつ。怪我の治療までさせやがった挙句、恩を仇で返しがるつもりか。信じられねー奴だ。一言言って解らしてやるか。


 ドン!! ドドンドドン!!!!


 またしても大きな衝撃音。扉に何かがぶつかった音。


「な、なんだ!! 何が起こっているんだ!!」

「ごちゃごちゃうるせー!! 死にたくなければ、こっちに来い!! そして武器を手に取って、自分の身を守れ!!」


 扉側は安全。そっちに窓は無いし、扉の内側には棚や椅子などが積み上げられている。恩田達3人に武器を手に取らせるとそっちへ移動させて、俺とジジイは銃を手にさっきハイエナに突き破られた窓の方へ近づいた。


 さあ、来るならこいよ!! そっちがその気なら、こっちだってぶっ殺す気で相手をしてやるからな!!

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