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Phase.446 『ニートと老兵 その3』



 ゴブリンの返り血を拭きとると、再び俺達は目的地を目指した。


 具体的に、何処に向かっているのかジジイは、はっきりと言わねー。だから解らん。こんな鬱蒼とした森の中を歩いているのだから、そもそも方向位しか言えないのかもしれない。でもこれから会うつもりでいる誰かに、果たして会えるかどうかは別として、そいつがいるだろう場所へはトラブルがなければ確実に到着できると言った。


 キキキキ……


 森の中をジジイと共にずっと歩いている。生い茂った草に、木の根。魔物が草むらから急に飛び出してくるかもしれず、警戒も怠れない。普通に歩くよりも、体力を消耗した。


 先頭は、ジジイが歩いて道案内をする。俺はその少し後ろについて何かあっても対処できるよう、いつでも戦闘準備できるようにしている。


「ふう、しかし随分歩いたのお。鈴森君も疲れたじゃろ」


 ジジイは、少し口元に笑みを浮かべてそう言った。


「引きこもりのニートって言っただろ。体力なんてある訳ねー。疲れてるに決まっているだろーが」

「そうか、君は自分でトレーニングしていると言っていたからな。まだまだ余力があると思っていたが……そうか、流石に疲れたか」

「なんだよ。あんたは、俺達のクランに入る前は、この世界をあっちへこっちへ歩き回っていたんだろ。慣れてて当然なんだろーがよ」

「それはそうじゃが、ずっと歩きっぱなしじゃったからな。陽も暗くなってきたし、そろそろここらで野宿(ビバーク)しよう」


 森というだけあって、木々が多い。足を止めて自分の真上を見上げると、確かに無数の葉と枝の向こうが暗くなってきているのが解った。


 そうか、行って戻ってくるだけで5日間って計算だったからな。野宿する事なんて当たり前なのに、行き帰り途中で危険な魔物に出会わないか……そればかりに頭がいっていた。


 そうか……野宿か。


 ジジイは、向こうを指さした。相変わらず何処も草が茂っていて同じに見える。


「あそこで今日は野宿をしよう」

「理由は?」

「なんじゃと?」

「あそこで野宿しようと思った理由だよ」

「ああ、そういう事か。見てみろ、大木が生えておる。その横には、大きな苔むした岩。その手前を野宿する場所に選べば、もし魔物に襲わたとしても、大きな岩や大木を背にして戦えるじゃろ。その気になれば、木に登って避難する事も出来る」

「そんな事まで考えておかねーといけねー魔物に襲われたなら、逃げる事とか考えないのか」

「森にはサーベルタイガーなど、ウルフよりも危険な肉食で獰猛な魔物がおる。あれに追われたら、とても儂らの足じゃ逃げきれんわ。ははは、それなら壁を作ってそれを背にして、散弾銃をぶっ放した方が生存確率は高いじゃろ」

「……まあ、確かにそれはそうだな」


 ジジイが指した場所に移動すると、俺はそこに生えていた大木の下に背負っていたザックを降ろした。


 食糧の他に水、銃の弾やら必要なものを入れて持ってきたつもりだが、かなり重い。少し肩のストレッチをする。するとジジイも大きな苔むした岩の横に同じく背負っていた荷物をおいた。そして周囲を見回す。


「どうした?」

「ふむ……魔物の気配がする」

「そんなもんが解るのか?」

「なんとなくじゃがな。異世界のこういう場所ばかり歩き回っていたからの。更に何度か死にかけた事もあったが、お陰でそういう感覚が養われたのかもしれん」


 単に感だけって訳でもなさそうだった。ジジイは辺りを真剣な目で見まわしている。魔物がいる気配だけでなく、こういう場所にはそういう魔物が潜んでいる……そういうのが解るのかもしれねー。経験か。


「まあ、鈴森君が倒してくれたゴブリンも気になるしの」

「あいつは、もう地獄に行っている」

「あいつはの。じゃがゴブリンっていうのは、基本的には複数での行動を好む。弱い獲物を見つけて集団で取り囲み、嬲り殺す事が大好きな魔物じゃ」

「他にもいるかもしれねーって事か」


 ジジイは頷くと、辺りを警戒しながらも歩き始めた。


「そうじゃな。とりあえず、十分に警戒は続けながら焚火の準備をしよう」

「焚火? 火なんて使ったらゴブリンやコボルトに見つかっちまうだろが?」

「まあ、そうかもしれんが火は必要じゃろ。それに火を恐れる魔物からは、逆に身を守ってくれるし、まあ焚火をせずとも襲われる時は襲われる。虫よけにもなるし、さっさと薪を集めて焚火を作ろうか」


 ジジイはそうって薪を拾いに辺りを散策し始めた。俺の顔の前に、蚊がブーーンと飛んだ。咄嗟に叩いて殺すと、また耳元でブーーンという羽音。なるほど、確かに虫よけは必要だ。


 ジジイが薪を探しに行くと、俺はナイフと銃、そして鉈だけ持って同じように野宿すると決めた場所の近くを見て回った。


 川や泉――水場があれば言う事はねーが、そう簡単に都合よくみつかりはしねーか。まあ、水自体はジジイも持ってきているだろうし、俺自身も念の為2リットルのペットボトル2本に加えて、水筒にも井戸の水を汲んできている。これなら、暫くは大丈夫だが……行って帰ってくるだけで5日間。途中で何度か水を補給できる場所を見つけなければならないだろうな。

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