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Phase.433 『ここは、何処だっけ?』



 『アストリア』秋葉原支店を後にした。


 店を出ると、俺達は駅の方へと歩き始めた。翔太が肩を落とす。


「やーーっぱ、マドカさん、なーーんも知らなかったな」

「そうか? 知らなかったというよりは、お答えできませんって感じだと俺は思ったけど」

「まあ、確かに言われてみれば、そうとも受け取れる言い方だったもんな」


 秋葉原の街は、平日はやはり休日に比べて空いている。通りゆく人達も、俺達のようなオタク系のような人は少なく、会社員などこの辺で働いていますよって人を多く見かけた。


 そんな街を俺と翔太が並んで歩き、すぐ後ろにモンタがついて来ている。


「ユキーは、さあ。来るべき日ってのが、単なる転移サービスのメンテナンスって、思ってはいないんだよな」

「まあな。異世界へ転移するアプリのシステムだからな。どんなものか、想像もつかない。それにその実態なんて、間違いなく企業秘密だろうし、教えてなんてくれないだろう。だけどな、やっぱり俺は、転移ができなくなる理由は他にもあるような気がしてならないんだ」

「なんだ、そりゃ?」

「なんとなく、そう思っているってだけだ。今はな。だけどそれが判明していれば、マドカさんにあんな感じで迫ったりせずに、もっと楽しい会話が出来ていただろうな」

「そうだなー、でも解るぜ。ユキーのそういう感っての変に当たるもんな」

「どちらにしても、明々後日だ。俺達はもうあっちの世界に、未玖達と共に残るって決断した訳だし、後悔のないようにしよう」

「後悔かーー。でもそれって、どうすれば後悔ないとか言えるんだ?」

「そうだな……」


 俺と翔太の会話に、後ろからモンタが割り込んできた。


「そりゃあれッスよ。現実的な所で答えると、お菓子とか漫画とかゲームとかそういうものを全部、今日、明日、明後日の間に向こうの世界へ持っていっとくんスよー!! でないと、あの美人のメイドさん。マドカさんもはっきりと期間を言っていなかったじゃないッスか! いつこっちの世界へ戻ってこれるか解らないのなら、そうなってもいいようにしておかないとー!!」

「モンターー!!」

「な、なんスか、翔太さん!」

「お前、なかなかいい事いうなー。俺は、アレなんだよ。いつも寝る前は漫画を読む習慣があんだよなー。それで読んでたら知らん間に眠くなって、寝ている。それが俺の安眠の理想の形なんだ」

「そうなのか? お前からそれ聞くの、初めて聞いた」

「ユキーだって、前にゲームしながらよく寝ているって言っていたじゃん」

「そりゃそうだけど、流石に向こうにゲームは持っていけないだろ?」


 翔太もモンタも、キョトンとした顔をする。


「そうか? 別に持っていけるんじゃないか? 昔のブラウン管テレビならいざ知らず、今の液晶テレビなら軽いしな」

「向こうで遊ぶ気満々なら、ゲーム機の画面を出力できる、ポータブルレコーダーとかもあるッスよ」

「そうだぜ。携帯ゲームだって、簡単に持ち込めるじゃん。きっとあっちへそんなの持っていったら、未玖ちゃんとかアイちゃんとか喜ぶんじゃないか」


 確かにそうだ。未玖もゲームをするって言っていたし、アイちゃんも喜びそうな気がする。電気だって、発電機を向こうに持っていけばどうにでもなるんじゃないのか。


 翔太は、鼻息を荒くし始めた。


「よーーし、そうと決まれば急に忙しくなってきやがったぞー!! 早速俺は、今日家に帰ったらお気に入りの漫画とかゲームを纏めて、あっちの世界へ持ち込まないといけねーな。こんな時、俺達の拠点内に転移の移動先である女神像があるから便利だよなー!!」

「翔太さん、お菓子も忘れちゃ駄目っスよ。俺も小田とか十河とか、皆にこのことを伝えるッスよ。暫くこっちへ戻ってこれないってなったら、色々と持ち込んでおきたいものって皆あるッスからね。ああーー、なんかそう考えると、変に楽しくなってきたッスね」

「うし!! じゃあ、ユキー!! さっさと家に帰ろうぜ!! そして買い出ししたり、家にあるもん纏めて拠点に運び込もうぜ」


 翔太とモンタで、どんどん話が進んでいく。でも俺も言われてみれば、持ち込んでおきたいものは多いと思った。漫画に小説、ゲーム機。そうだ、モンタが言うようにお菓子もそうだけど、米とかカップ麺とかそういうのも必要なんじゃないか。トモマサだって、酒は必須だろって言いそうだし。


 これは、拠点に戻ったら皆にも再度呼びかけておかなければならないな。


「よし、解った。それじゃ、そろそろ家に帰ろうか。『異世界(アストリア)』で未玖達も、俺達が戻ってくるのを待っているだろうし」


 そう言うとモンタは、溜息まじりに顔を振った。


「はあーー、リーダー、何言ってんスか! ゲームや漫画とか、そういう遊べるものをあっちの世界へ持っていくんでしょ」

「そのつもりになったが」

「なら言わせてもらうッス。ここは何処なんスか?」

「は?」


 翔太と2人でして、首を傾げる。


「だーかーらー、ここは、何処なんス」


 モンタにそこまで言われて、はっとする。そうだ、ここは秋葉原!!


「ようやく気付いてくれたッスか。ゲームとか漫画とか欲しいモノがあれば、ここなら容易に揃うッスよ。折角秋葉原くんだりまできた訳だし、もう少し色々とブラついて帰りたいッスよ」

「そうだな、それがいい! いいよな、ユキー!!」


 さっきのポータブルレコーダーの話。DVDとかBDなど再生できるそういうのがあれば、映画とかアニメとかそういう円盤も持ち込めるんじゃないか。


 そうすれば……


 俺自身も夜な夜な、映画を見たりアニメを見たりあっちの世界でも楽しめるし、未玖やアイちゃん達の喜ぶ姿も思い浮かぶ。娯楽が充実する。


「よーし、俺も欲しいものがいくつか思いついた。ちょっと先に銀行に行こう。それで金を降ろしたら、即ショッピングだ!!」

「すげーッス、リーダー!!」

「ユキー、えらい乗り気になったなー!!」


 意気投合。3人仲良く、それぞれの口座がある銀行に向かった。金を引き出したら、買い出しだ。忙しくなってきたぞ。

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