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Phase.431 『秋葉原店 その1』


 ――――東京都、秋葉原。


 いつも秋葉原に来たら、最初に入るファミレス――バニーズ。そこに翔太とモンタの3人組でやってきていた。十河や小田達も一緒に来たいって言っていたけど、流石に全員ではこれない。


 ドヤドヤと多人数で行動するのは苦手だし、何より『異世界(アストリア)』にある俺達の拠点が手薄になってしまう。誰かは残って、守ってもらわないと。


「バニーズへようこそ、お客様は何名様でしょうか?」

「3人です」

「かしこまりました。奥のお席にどうぞ」


 楽々と4人で座れるソファー席へ案内されると、俺と向き合って翔太とモンタが並んで座った。誰かが気を遣ってとかではない。無意識に座って、たまたまこうなっただけ。翔太が早速、メニューを手に取る。


「さーーて、何を食おうかなーー」

「ええーー!! 翔太さん、何行くんすかー。俺っスか? 俺はそうッスねー。バニーズ来んの、すっげ久しぶりだから何にすっか、迷うッスねー! 昔はよくダチと集まって朝までくっちゃべってたりしたッスけど」

「昔ってお前、歳いくつなんだよー。せいぜい、数カ月とか1年前の話だろ、それー」

「はっ! 言われてみれば、そうかもしれないッス。流石、翔太さんッスね」

「だろー。俺位になれば、モンタの事なんてなーーんだってお見通しなんだよ」

「すげーーッスよ」

『わははははは』


 波長が似ているというか、すっかり仲良しの翔太とモンタ。まったく、こいつらは。


「あのな、先に言っておくが、直ぐにここを出るぞ」

『え!?』


 間の抜けた声を出して、驚いた顔を同時に見せる2人。


「当たり前だろ。今日、ここへは何をしに来たんだ? モンタ、言ってみろ」

「えっと……メイドカフェのメイドさんに会いにきたんスよね。俺、楽しみっス」

「うーーん、間違いじゃないけど、そうじゃないともとれる言い方だな。もっとちゃんと言えば、来るべ日、もう明々後日の話だけど、その時にいったい何が起こるのか。本当に転移サービスの休止だけなのか? 3週間から1カ月の期間って運営は言っているけれど、信憑性はどれくらいあるのか? そういう事を聞きに来たんだろ」

「そうでやした! はは」

「まったくもー、モンタって奴はー」

「そういう翔太さんは、ちゃんと解ってたんスか?」

「解ってたに決まってるだろー! 馬鹿にすんなよなー」

「痛い、痛い!! 翔太さん、それ痛いッス」


 戯れる2人をよそに、店員さんを呼んで3人分、モーニングセットを頼んだ。


「ああーー、ユキー!! お前、勝手に……俺はハンバーグ行こうとして……」

「ぎりぎりモーニングがあった。直ぐここを出るんだし、これでいいだろ。ほら、飲み物はどうするんだ?」

「むむむーー。まあ、別にモーニングがあったんなら、結局それを注文しているだろうからいいけどよー」

「俺、ハンバーグとか食べたかったッス」


 注文したものが運ばれてくると、俺達は食事を始めた。ハンバーグが食べたいと呟いたモンタだったが、モーニングのトーストを齧ると、とても幸せそうに「うんめー」と言った。単純な奴だ。


 ベジファースト。そういうのが気になるお年頃になってきたという事で、俺はまずサラダに手を伸ばす。翔太が言った。


「ユキー。そう言えばさー」

「モグモグモグ……うん」

「孫いっちゃんと長野さん、どうしているかな?」

「…………」

「無事かな?」

「もっぐもっぐ……ごくんっ」


 水を飲む。


「そんなの無事に決まっているだろ。俺達よりも、ずっと経験のあるベテラン転移者の長野さんと、あの鈴森だぞ。言ってみれば、うちのクランの精鋭中の精鋭だ。必ず無事に戻ってくる」

「だよな」


 食事が終わると、バニーズを出て例の雑居ビル、マドカさんのいるメイドカフェ『アストリア』の秋葉原店へと向かった。


「お帰りなさいませ、ご主人様ー」


 店内に入ると、モンタがメイドたちを見て跳び上がる。どの子も凄く可愛い……けれど、以前よりもメイドも客も増えた気がする。店内は結構混んでいた。


「お帰りなさいませ、椎名様。秋山様。門田様」


 マドカさんだった。門田が驚いた声をあげる。


「うっひゃーーー!! 誰っすか、このメイドさんは!! メッチャ綺麗な人じゃないッスか!! もしかして、この人がマドカさんッスか!!」

「そうだ」

「うひゃーーー!! めっちゃ好みッスよーー!! ミケさんも可愛くて最高なんスけど、マドカさんはとても綺麗でその中に、何かミステリアスな感じがしてまたいいッスね!」

「誉め言葉として、受け取らせて頂きます、門田様」


 マドカさんがそう言ってモンタに微笑みかける。モンタはもう完全にデレデレで骨抜きにされてしまっていた。確かにマドカさんは、異常な位に美人だった。


 俺達はマドカさんに、空いている客席に案内されるとそこへ座った。そして俺はマドカさんに早速気になった事を聞いた。


「それでは、何かご注文されますか?」

「その前に一つ聞きたい事があるんですが」

「ええ、どうぞ」

「さっき、マドカさんが俺達を出迎えてくれました。その時に、思ったんですけど、なぜマドカさんは、モンタの名前を知っていたんですか?」

『え!?』


 俺の言葉を聞いて、翔太とモンタがマドカさんの顔を見る。


「こいつは、この秋葉原支店に来たことがないはずなんですけど……あなたと面識もない。だからって、別にどうだっていい事なのかもしれない。でも気になったたので、教えて頂きたい」


 どうしても引っ掛かってしまった。来たるべき日を目の前にして、運営の考えている事や意図が解らない。マドカさんには、そこまで責任がないはずだけど、運営に対しても不信感や不満点もいくつかある今、気になった事は遠慮せずに聞いておきたい。


 自分達の責任であり、既に了承は得ているといえど、未玖みたいな【喪失者(ロストパーソン)】をそのままあっちの世界へ放り出して放置しているのが運営の現状だ。それに対しても、疑問を感じている。


 だからマドカさんが、モンタの名前を知っていた事に、普通ではない何かを感じてしまった。俺にはこのままこの事を、聞き流す事なんて余裕はなかった。

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