表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
419/470

Phase.419 『廃村再び その2』



 尾形さんが、この世界で暮らしている屋敷。お邪魔すると、彼は早速以前に案内してくれた客間へどうぞと言って入れてくれた。


 置いてあるソファーや椅子、テーブルなどは変わっていない。けれど壁側には、この世界で見つけたものだろう剣や戦斧、槍や戦槌などの武器が飾られていた。


 俺も一応は男だし、ファンタジーゲームやらそういう映画なども大好きだ。だからこういう物を目にすれば、声をあげてしまう。


「おおーー、これは凄いな!! 尾形さん、これって全部がこの世界の武器なんだろ? こんなに集めているなんて!!」

「お? おお、そうだ。集めているぞ。もっとよく見てみろ。俺はそういうものの価値がよく解らねーけど、コレクションっていうか、価値のあるものを集めるのは好きなんだよ」

「手に取ってみても?」

「それで俺を殺そうとしないなら、別に勝手に手に取って好きに見てもらっていい」


 尾形さんの尾形ジョークに、クスリと鼻で笑う。そして目の前の剣に触れ、再び振り返ると、彼はおぼんに自分の分も含めて缶コーヒーを乗せて、こっちへ持ってきてくれていた。


 折角、行儀よく缶コーヒーをおぼんにまで乗せて運んできたのに、俺がその事に気づくと彼は、缶コーヒーを手で掴んでこちらへ投げた。


 俺は缶コーヒーをキャッチすると、「ありがとう、遠慮なく」と言って蓋を開けてゴクリと飲んだ。そして尾形さんが集めた武器の数々を触る。


 斧にしてみても、いわゆる戦斧という奴のようで、うちの拠点の丸太小屋にあった木こりが使うような斧ではなかった。どれも中世時代の漫画とかゲームに登場する武器のようで、かっこいい。


「どうだ、いいだろ?」

「ああ、いいな。何処で手に入れたんだ?」

「そりゃあ……ちょっとな……」


 何処でこの見事な武器の数々を収拾してきたのかと尋ねると、尾形さんは明らかに顔を背けて気まずそうにした。なるほど。それを話せば、俺がそこへ行って尾形さんから横取りしてしまうかもしれない。そんなことを考えているのかも。


 でもこれらの武器を何処で手に入れたのかは、ある程度の予測が俺にはついていた。俺だって、この世界で生きていく為に情報をあちらこちらから仕入れている。


「うちの拠点なんだけど……」

「椎名さんところの拠点の話?」

「そう。そうなんだけど、うちの拠点から南西にすこーし行った場所に、古戦場があるらしい。俺はまだそこへ行った事がないんだけど、そこはその名の通りにかつての戦場だった場所らしくてな。色々とこの世界の武器や防具などが置き去りになっていて、手に入るらしいな」


 俺の話を聞いた尾形さんは、あんぐりと口を開けた後、大きな溜息を吐き出した。


「なんだ、人が悪いな。椎名さん、知っていたのか」

「そこはね。でもそことは別に、他で見つけた武器もあるんだろ?」

「ああ、まあそうだ。ゴブリンやコボルトの巣で見つけたり、洞窟や遺跡みたいなダンジョンで見つけたりな」

「ダンジョン? ダンジョンがあるのか?」


 拠点から、結構東へ進んだ先。小貫さんと一緒に、皆で佐竹さんを弔いに行った時に目にした湖。池のように濁っていて、バケモノのような魚が生息していた湖。その近くに、ダンジョンらしきものがあった。そういうのは、この世界へ来てからそれ一つしか見ていない。


「ダンジョンはあるさ。探さないと見つからない解りにくいものから、目につきにくい小さなのとか色々あるみたいだけどな。いくつか見つけた。この廃村の近くにも小さな奴があったかな。もしかして、椎名さんはダンジョンにまだ入った事がないのか」

「ないな。っというか、ダンジョンに入ったって話も、今まで聞いた事がなかった。ゲームとかみたいに、お宝があったりするものなのか?」

「ああ、お宝とかあったな。だけど危険な魔物だって当然いたりするから、ダンジョンに入るなら十分に準備と注意が必要になる。それに先に入ってやられた奴が残した武器とか防具とか、そういうのも見つけたら頂いたりできるかな。死人には、不必要なもんだしな」

「確かに」


 気になっていたダンジョンに関する話と、ブラックジョークに笑う。


「もしあれなら、近くのその小さなダンジョン。この後、見に行ってみるか?」

「え? いいのか?」

「ああ、もちろんいいとも。俺が一生懸命頑張って集めたその武器とか、数々のコレクションをタダでくれっていうのとかでなければ、ぜんぜんかまわねえぜ」


 また笑ってしまう。


「ただそのダンジョンは、かなり小さい上に、もう中にある目ぼしいものは、取りつくしてある」

「ああ、それでも見てみたい。なんせこの世界に来てから、まだダンジョンなんて入った事がないし」

「よし、それならこれから行こうぜ。この珈琲を飲んだら、出発だ」

「因みにそのダンジョンは、ここから近いんだよな」

「近いな。廃村から外へは出る事になるが、歩いて近くの距離だ」


 ダンジョンか……


 異世界なのだ。そこらに魔物がいるように、ダンジョンと呼ばれる場所は勿論存在すると思っていた。そしていずれは、俺もそのダンジョンに足を踏み入れる事も。


 だから今のうちに経験しておきたい。既に見つけて中を調べた小さなダンジョンなら、危険ではないだろうし……最初に経験するにはうってつけだろう。


 ごくごくごく……


 尾形さんが、珈琲を飲み終わるのを見て、俺は缶に残っている分を一気飲みした。


 …………よし、準備完了。いくら近い場所とはいっても、拠点の外に出るのなら、誰かに一応ちょっと出てくると伝えておいた方がいいかな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ