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Phase.401 『捜索者 その6』



 俺達の拠点、何処に何があって何が何処にある。それを佐竹兄と岩城さんに説明して回った。2人が特に興味を示したのが、羊の住処エリアだった。だけど佐竹兄は、どうしても弟の仇を討ちたいと思っている。だからあのデカいブルボアが現れるとしたら、一番確率が高いかもと思われる草原エリアを住処にする事にしたらしい。


 草原エリアには、いつも長野さんがいてくれたのを思い出す。だが今は、その長野さんも鈴森を連れてこの世界を旅している。


 だから長野さん不在の草原エリアに、佐竹兄と岩城さんが住処にしてくれるのは、とても心強いと思った。


「椎名君、例のブルボアが出るとしたら、やっぱこっちか?」

「解らないけれど、多分ね。ブルボアだってずっと、じっとはしていないだろう。だけどなんとなく……拠点の北側。つまりこっち側に現れる確率が、一番高いかもしれない」

「よーーし、決めた。それじゃ、岩城。この辺りに俺達の住処を作ろうぜ」

「ああ、いいな。なんだか楽しくなってきた。でもその前に、パブリックエリアに行こうぜ。そこで飯とか食えるんだろ?」

「そうだ。でも佐竹さんのお兄さん……」

「だから佐竹でいいって。もう仲間でいいんだよな」

「そうだった、そうだった。じゃあ、佐竹さん。1つ言っておきたいんだけど、もう少し内側の方がいい」

「内側? それだと外が見えにくいじゃねーか」

「基本的に仲間には、拠点の中は自由にしていいと言っているけど、それでもバリケードに近すぎると危ない」

「危ないとは、もしかして魔物が出るからか?」

「ああ、あの事か」


 翔太がポンと手を叩いた。そして続けて――


「あの巨大ウルフとその群れだよな」


 と言った。ウルフの群れは兎も角、巨大ウルフというワードを聞いて佐竹さんと岩城さんは、大きく反応する。俺は、この草原エリアの北側で来たるべき日の為に、仲間のレベリングをする為に、拠点の近くに出現したウルフの群れと戦った時の話をした。


 ウルフという魔物は狼系の魔物で、基本的には群れで行動して獲物に襲い掛かる。チームワークという奴を武器にしていた。


 だけどあのデカいウルフ。奴が率いてた群れは、何か異様な感じがして妙だった。上手くは言えないが、こちらの動きを読もうとしてきているような気がしたし、その辺の群れなんかよりも統制もとれていた。それから感じたのは、決して油断をしてはいけない相手だということ。


 あと、あのデカいウルフは、こちら側のこんなバリケード、その気になれば飛び越えるかもしれない。破壊だって簡単に、できそうだった。だとすれば、俺達だって躊躇いなく銃やら使うし、死に物狂いで応戦する。だから不用意に跳び込んではこないとしても、もしそうなったらバリケードが砕け散った場所から子分達が怒涛の如く、拠点の中へ侵入してくるだろう。


「だからバリケードの近くは危険だから、少し距離を取って欲しい。いいか?」

「そういう事なら解った。そうしよう。あとそのウルフ……そいつらが現れたら……」

「決して、自分達だけで拠点の外へは出ないでくれ。直ぐに俺に教えてくれ。俺がいなかったら、他の誰かに知らせて、全員であたるんだ」

「そうする」


 佐竹さんも岩城さんも、承知してくれた。それからもう早速、自分達の住処を慌ただしく作り始めた。2人であーだこーだ話し合って、楽しそうだ。


「さてと、それじゃユキー。これから専務達を見に、南エリアへ行ってみようぜ。もしかしたら、家が建ってるかもしれないぜ。立派なやつな」

「ははは、それは流石にありえないだろ。南エリアは、この辺りの植物が異常に増殖して成長した時に、更にジャングルみたいになってしまっただろ。テントを設営する場所を決めるのも、結構大変かもしれないぞ」

「でも専務のお仲間って30人近くいるんだぞ。マンパワーは結構あるんじゃないか」

「確かにそうかもしれないけれど、でもこんな短時間では無理だろ」


 佐竹さんと岩城さんが、とても楽し気に自分達の住処を作りながら会話をしていた。俺と翔太も同じように、あーだこーだと会話を続けながら南エリアへと向かった。


 それにしても、結構暑い。平日はいつも日中は会社にいて、夜に『異世界(アストリア)』へやってくる。だけど専務のお陰で、俺達は平日でも今はこっちの世界へ来れている。だから余計に何か、変な気持がするというかなんというか。


「おい、ユキー。なんか、今日は暑くないかー?」


 見ると翔太の額には、汗が流れていた。俺も同じだと気づく。


「そう言えば、昨日の夜も暑かったな」

「だよな。ここは、日中はまあ熱くなるけど夜は、肌寒い位だもんなー。これがこの世界の普通なのかな」

「解らん。俺達の世界だって、例えば北欧とアフリカで気温が違うし環境も違うだろ? この世界だって場所でずいぶん気候など違うはずだからな。それにここは異世界だ。思いもよらない事が起きる可能性も、ぜんぜんあるだろうからな」

「ふーーん、なるほど。じゃあ急にこの俺達のいるこの拠点の辺りが、燃え盛るような暑さになっちゃうなんて事もあるかもしれんという事か?」

「まあ、ありうるな。可能性は、あると考えておいた方がいい。異世界なんだから、常識に縛られているととえらい目に合うかもしれないし」

「むーー。ってーー事はよ。ちょっと思ったんだけど、もしそんな事態になってよ。それが来たるべき日っていうの? もとの世界へ転移できない時にそうなったら、俺達終わりだよな」

「終わりだとしても、俺は未玖とか転移できない仲間を置いて行く気はないぞ」

「そりゃ、俺もそうだけどよ。ちょっと思ってな」


 翔太の言葉に一瞬ドキリとした。


 この世界の気候や環境。それが急に今までとは変わったりするかもしれない……その可能性を、俺は一切今まで考えた事がなかった。完全に見落としていたと言っていい。


 もしそうなったら、俺達はどういう選択をしてどういう行動をするかっていうのは、今のうちにちゃんと考えていた方がいいのかもしれない。

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